建設部門(コンクリートⅡー2-2)再現論文の添削
技術士二次試験選択科目の論文添削講座の受講生から再現論文の提出がありました。
今回はその論文の紹介と見解・指摘事項を考えていきます。
問題文
鋼又はコンクリート構造物の調査は、突発的な作用に対して行う場合があり、火災や車両の衝突等が挙げられる。このような突発的な作用による変状を受けた構造物について、部材の再利用を想定した調査を行うことになった。この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
(1)対象とする構造物とそこに起こる突発的な作用(設計で考慮している地震等は除く)を挙げ、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順を列挙して、それぞれの項目ごとに留意すべき点、工夫を要する点を述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
参考:日本技術士会
再現論文
(1) 対象とする構造物とそこに起こる突発的な作用
1)3径間連続ポストテンションPC桁道路橋(幅員20m、長さ60m、壁高欄)を調査対象の構造物とする。また突発的な作用としては、危険物運搬車両がコンクリート製の壁高欄に衝突し、炎上した場合を設定する。
2)突発的作用を受けた部材を再利用するため、調査、検討すべき事項とその内容を以下に3点挙げる。
①現地状況調査や室内試験による調査、検討を行う。
具体的には、ひび割れ、変形等の損傷位置、深さを詳細記録し、周辺環境等の制約条件を調査、検討する。
②①で得た記録を基に健全度評価を調査、検討する。具体的には、変状に関するデジタル記録を最新のAI技術を活用し、健全度について調査、検討する。
③①,②で得た結果を基に、補修・補強の要否判定を調査、検討する。具体的には、制約条件を加味した補修・補強計画をDXの利活用により、調査、検討する。
(2)業務の手順及び項目ごとの留意点、工夫点
突発的な作用を受けた構造物について、部材の再利用を想定した調査の業務手順は1)DXを活用した現状把握、2)健全度評価、3)補修・補強工選定の順に行う。
1)現状把握をする際に、外観の変状に捉われず、内部の損有無も確認できるような調査、検討に留意する。次工程の健全度評価を効率的・効果的に推進するよう、レーザスキャナーや360°カメラ等の活用を工夫する。
2)上述1)のデジタル技術の利活用による現状把握、現場制約条件も加味し、利用者の安全・安心を確保すべく、あらゆる角度からの評価判定の実施に留意する。デジタルデータを利活用し、評価判定までの時間削減、評価品質の向上を図るよう最新技術の活用を工夫する。
3) 上述1),2)を踏まえ、部材の再利用に向けた補修・補強工法による社会的影響を最小とするよう留意する。具体的には、道路の通行に極力支障が無い工法の選定などに留意する。補修・補強工を実施する際は、事前取得したデジタルデータを基に、現場作業を極力減らし、生産性向上に資する材料・工法の利活用、品質確認、出来形検測などもPDCAを回すように工夫する。
(3)業務を効率的、効果的に推進する関係者調整の方策
調査業務を効率的、効果的に進めるため、バックワードスケジュールにて工程と出来高管理表を作成し、それに基づく業務計画書を作成する。毎週及びマイルストーンごとに工程会議を実施し、業務の進捗を確認する。遅延及び遅延する可能性の高い作業は、生産の5Sの配分を検討し、業務計画を変更する。変更による関係者の周知不足による手戻りや、業務錯綜による作業中断を防ぐ。このため、最新ICT技術を活用した変更業務計画書を作成後、周知する打合せや議事録を共有し、関係者の意思疎通を図る調整が肝要である。また関係者の日々の作業状況をICT活用の見える化による確認、遅延、手戻りおよび品質不良が発生しないように調整することも有効な方策だと考える。 以上
再現論文の見解・指摘事項
見解
本講座では合格する論文につて以下の指導をしています。
①問題文を読んで、問題文で要求されていることを答案に書くこと
②その内容が間違っていないこと
③内容が読んで理解できること
④文字数を満たしていること
参照:技術士二次試験合否判定基準【思考停止から脱却しろ】
この受験生はよく勉強しているのは分かりますが、論文の書き方については少し疑問が残ります。
まず設問(1)の調査・検討する事項と設問(2)の業務を進める基準が同じ内容だということです。
これは別の事を書かなければなりません。
理由は違うことを聞かれているかです。
指摘事項
設問(1)
対象とする構造物とそこに起こる突発的な作用(設計で考慮している地震等は除く)を挙げ、調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
問題文を読むと、突発的な作用を挙げる必要があります。そして調査、検討すべき事項とその内容を求められています。
部材を再利用する前に、どのような作用があるかを想定しなければなりません。ここでは具体的に「危険物運搬車両がコンクリート製の壁高欄に衝突し、炎上した場合を設定する。」と書かれています。
調査・検討すべき事項とは
そのため調査・検討する事項は、突発的な作用の想定になります。
それは例えば以下のようなものになります。
危険物運搬車両の重量と衝突時の速度
火災の温度と炎上時間
構造物に必要とされるスペック
簡単に言えば、業務に入る前の準備すべき事項です。
段取りの話になります。
何も難しくはありません。
冷静に考えれば誰でも分かることだと思います。
あとはその内容をあたりさわりなく書いて、文章量を満たせば問題ありません。
この論文がどの程度の評価を受けているかは分かりませんが、技術力が高いのに書き方が間違っているので、少し残念な内容です。
問題を解くときは、何を要求されているのかということを常々考えて書くように努めてください。
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