1.総合技術監理の要求内容と技術体系(その3)

桜坂
目次

1.4 問題解決法

総合技術監理を行う技術者には、前述の5つの管理などの広範囲にわたる技術業務全般に関して、総合的な判断を行うとともに、改善策を提案する能力が要求される。換言すると、個別の技術業務における特定の課題の解決を目的とする場合であっても、俯瞰的視点から論理的思考に基づいた解決方法の提案を通じ、経営全般を勘案した総合的な判断を下すことができる能力が求められるということである。しかし、技術業務の実際を想定したとき、現実には課題が露見している場合ばかりとは言い切れない。むしろ、潜在的な課題が顕在化せずに存在している状況で、現状を分析し、課題の設定を行い、その課題を解決することが重要である。例えば、総合管理技術としてのリスクマネジメントの視点からも、リスクの発見、特定、及び対策の選択というプロセスに代表されるように、総合技術監理を行う上で不可欠の要素である。総合技術監理を行う技術者には、このような一連の論理的課題解決能力まで含んで要求されている。

(1)ブレイン・ストーミング法

少人数のグループでアイデアを自由奔放に出すことにより、課題の要素を抽出する方法である。ブレイン・ストーミング法の要点は以下の4点である。これらの要点が守られない場合は、①グループ力学、同調圧力が働く、②批判されることで対話が制約される、③発言の時間が平等でないため対話が制約される、などの問題点が生じる。
①ひとの意見を批判しない
②自由に意見を述べる
③多くのアイデアを出す
④他人の意見をヒントにしてさらに考えを発展させる

(3)特性要因図

ある特定の結果と、その結果に影響を及ぼすと思われる根元的な要因(原因)にまで遡り、それらの要因相互間と結果の間に成り立つ定性的な因果関係を表現したものが、特性要因図である。樹形図で表され、魚の骨(フィッシュ・ホーン)などと呼ばれる

(4)過程決定計画図(PDPC)

過程決定計画図は、東大紛争の最中に、大学と学生側かどのように交渉していけば悲惨な結果にならないかを考えるために、考案されたものである。これは問題解決のための手順を有向グラフの形に表したもので、危機的状況に陥ったとき、将来起こり得るであろう重要な局面とその結果を可能な範囲で想定し、それらの局面や結果が生じる過程を矢印線で示すことによって、要所要所で的確な判断ができるようにあらかじめ準備するための手法である。

1.5 PDCAサイクルとスパイラルアップ

PDCAサイクルとは、組織における業務や管理活動などを進める際の、基本的な考え方を簡潔に表現したものであり、国内外において広く浸透している。ISO([国際標準化機構]により制定されている、マネジメントに関する国際規格においても、この考え方が取り入れられている。
 PDCAのサイクルは、プラン、ドウ、チェック、アクトの4つの段階で構成されおり、日本語では、計画、実施、確認、処置と言い換えることができる。これらの各段階の頭文字をとってPDCAサイクルと呼ばれている。
 組織における業務や管理活動などを行うとき、最初に計画を立て、その計画に沿って実施し、実施した結果を確認することになる。そして結果を確認した後、計画と実施した結果の間に差異が認められたならば、目標や進め方を改善するなどの処置をとり、次の活動に備えることが基本的な進め方である。次の活動は再び計画段階から始まるため、図1-4のようなサイクルを形成することになり、このような活動を継続的に実施していくことを、「PDCAサイクルを回す」と言う。また、PDCAサイクルを回しながら活動内容をより向上させていくことは、スパイラルアップと呼ばれている。
 スパイラルとは、らせんを意味しており、PDCAを回しながら活動内容を向上させていくイメージが、らせん状の図で模式的に表現されることからスパイラルアップと呼ばれる

1.6プロジェクトマネジメント

プロジェクトとは、「一連の調整され管理された、開始日と終了日のある活動からなり、時間、コスト及び経営資源の制約を含む特定の要求事項に適合する目標を達成するために実施される特有のプロセス」(ISO10006)と定義される。組織における継続的な業務と大きく異なるのは、期間があるということである。この意味でプロジェクトマネジメントは、プロジェクトの明確な目標を有限期間・有限資源で達成する活動ということになる。 プロジェクトマネジメントの特徴は、プロジェクト全体をWBS(Work Breakdown Structure)という思想に基づき、小さな部分的な仕事に分割していくことである。まず、プロジェクト全体をフェーズと呼ばれるいくつかの部分に分割する。これらのフェーズを一つずつ成し遂げていくことによって、全体のプロジェクトを完成させる。小さいプロジェクトであればフェーズは1つでも良いし、大きなプロジェクトであれば、多数のフェーズに分けてもよい。例としては、以下のような分割が考えられる。
 (1)開始フェーズ
 (2)企画フェーズ
 (3)実行フェーズ
 (4)終結フェーズ
 そして、各々のフェーズをさらにプロセス、さらには小さい一つ一つの仕事に分割し、それらの日程やコストをPERTなどによって管理していく。プロジェクトは一つ一つ異なり、完全に同じものはあり得ないが、プロジェクトマネジメントでは、それらプロジェクトの中で共通の考えで処理できる部分をマニュアル化し、さらには専用のコンピュータソフトでその部分の作業を処理できるようにしている場合もある。
参考:日本技術士会

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この記事を書いた人

横浜すばる技術士事務所代表
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)
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