情報管理(その3)

相鉄乗り入れ
目次

4.3 ネットワーク社会における情報管理

 情報ネットワークなどの新しいメディアの出現により、簡単で迅速な情報交換が可能となり、経済活動のみならず市民生活においても、様々な場面でその恩恵を受ける機会が多くなっている。インターネットに代表される高度情報通信技術を利用したネットワーク社会は、自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手し、共有し、又は発信することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会である。
 しかしその反面、紙などの媒体により情報伝達を行っていた従来の社会と比較して、他人の権利を侵害しないといった基本的なルールを破ることも簡単にできるようになっている。ネットワーク社会において経済活動を行っていくためには、ネットワーク社会に存在する情報に関する利便性と危険性の両面を理解することが重要である。

4.3.1 ネットワーク社会の特徴

ネットワーク社会では、インターネットに代表される高度情報通信技術を利用することに一つの特徴があると言える。従来の社会との違いを理解するために、高度情報通信技術を利用したネットワーク社会の特徴を以下に整理する。
(1)コンピュータの高度利用を前提としたシステムである。
(2)組織内の重要情報が物理的に社外とつながっていることがある。
(3)文字、音声、画像、映像などの様々な種類の情報が扱える。
(4)お金や信用に関する情報も交換される。
(5)情報のコピー、移動が容易である。
(6)世界中に情報を発信・公開することが可能である。
(7)世界規模で迅速な情報伝達が可能である。
(8)多数の受け手に対する情報発信が容易に行える。
(9)安価に情報の交換ができる。
 従来の社会において守るべきことは、ネットワーク社会においても守られるべきであり、従来の社会で問題となることは、ネットワーク社会においても問題となる。ただし、高度情報通信技術を利用しているために、守るべきことが何か、問題となることが何かについて、社会に広く浸透していないのが現状である。無意識に他人の権利を侵害している場合もあるため、気を付けるべき行為については、具体的な行為を理解しておくことが重要である。
(1)他人の財産を侵害しない(例:データの盗難)
(2)他人の知的財産権を侵害しない(例:違法コピー)
(3)他人の名誉や信用を侵害しない(例:中傷メール)
(4)プライバシーを侵害しない
(5)他人が不愉快に感じる行為は行わない
(6)言論の自由を尊重する
(7)他人の文化的な背景を理解し尊重する

4.3.2 ネットワーク社会における不正と関連法規

ネットワーク社会における代表的な不正の例を示し、どのような法律がどのように関連するかを整理する。(1)著作権の不正使用
   プログラム(OSなどのソフトウェア)の不正コピーや書籍の不正コピー、文章の不正な転載などが挙げられる。著作権法によれば、著作物は私的利用などの限られた範囲内で、複製・引用・転載を行うことが可能である。しかし、今日特に問題となっているのは、法律で定められた範囲を越えたプログラムの不正使用であり、OSなどを1ライセンス分購入して、部署内の複数のコンピュータにインストールするなどの行為は行ってばならない。また、フリーウェアは一定の条件下で無償利用できるが、容易にダウンロードできるシェアウェアについては有償ソフトウェア同様に対価が必要となることも忘れてはならない。
① 著作権法第30条
  著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、公衆の使用に供することを目的として設置される自動複製機器を用いて複製する場合などを除き、その使用する者が複製することができる。
② 著作権法第32条第1項
  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。
(2)通信内容の保護・規制
   情報ネットワークを利用した情報通信においても、通信内容の秘密やプライバシーは守られる必要があり、また仮想的な世界であるとはいえ、不適当な内容については制限を受けることとなる。
 通信内容の秘密やプライバシーを守るための法律としては、憲法や有線電気通信法があり、第三者が通信内容を不正に閲覧することを禁じている。ただし、組織内のネットワーク利用規則に基づいたメールの内容の監視や、通信傍受法(盗聴法)に基づく情報の傍受は対象とならない。通信内容の規制に関する法律としては刑法があり、インターネット上でわいせつな文書や映像の公開を禁じており、これに違反すれば処罰される。
① 憲法第21条第2項
  通信の秘密は、これを侵してはならない。
② 有線電気通信法第9条
  有線電気通信の秘密は、侵してはならない。
③ 刑法第175条:わいせつ物公然陳列罪
  わいせつな文書、図面その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。
  販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。
(3)名誉や信用の保護
   情報ネットワークを利用した情報通信においても、組織や個人の名誉や信用は守られる必要があり、法律によって保護される。名誉や信用の保護に関する法律としては刑法や民法があり、情報ネットワーク上で名誉や信用が侵された場合でも処罰の対象となる。また、損害賠償を求める場合には、民法に基づき賠償請求を行うこととなる。個人の中傷メール、企業をターゲットとした告発サイトなどは処罰の対象となる可能性がある。
 また、個人情報保護法が制定され、一定数以上の個人清報を保有する企業は「個人情報取扱事業者」とみなされ、情報の取り扱いに相応の注意が必要となる。特に重要な事項として、個人情報を収集する際の「利用目的の明示」、個人情報の「第三者提供の制限」、及び当該個人からの「開示・訂正・利用停止などの要求」について義務が生じる。
① 刑法第230条第1項:名誉毀損罪
  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無に関わらず、3年以下の懲役若しくは禁鋼又は50万円以下の罰金に処する。
② 刑法第231条:侮辱罪
  事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
③ 刑法第233条:信用毀損罪・業務妨害罪
  虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
④ 民法第723条:名誉毀損の損害賠償の特例
  他人の名誉を毀損したる者に対して裁判所は被害者の請求に因り損害賠償に代え又は損害賠償とともに名誉を回復するに適当なる処分を命ずることを得。
⑤ 個人情報保護法第15条:利用目的の特定
  個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。
⑥ 個人情報保護法第23条:第三者提供の制限
  個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合(省略)を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
⑦ 個人情報保護法第26条:訂正等の要求
  個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。
(4)不正アクセス
   コンピュータ内の情報が破壊されたり盗まれたりすると、組織にとって大きな不利益が生じる可能性がある。このような業務妨害やデータ破壊を行うためには、一般的に他人のパスワードを無断使用して情報ネットワークに侵入することなどが行われる。このような行為を取り締まる法律として、不正アクセス禁止法がある。
   不正アクセスに関連した被害形態としては、他人のパスワードを利用してネットワークにアクセスした(なりすまし)上でのデータの破壊、改ざん、漏洩や、電子マネーの偽造(改ざん)、架空の発注による代金の騙し取り(否認)などが挙げられる。
① 不正アクセス禁止法第3条:不正アクセス行為の禁止
  何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
② 不正アクセス禁止法第4条:不正アクセス行為を助長する行為の禁止
  何人も、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、その識別符号がどの特定電子計算機の特定利用に係るものであるかを明らかにして、又はこれを知っている者の求めに応じて、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者及び当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。ただし、当該アクセス管理者がする場合又は当該アクセス管理者若しくは当該利用権者の承諾を得てする場合は、この限りでない。
③ 不正アクセス禁止法第8条:罰則
  次の各号の一に該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
  一 第3条第1項の規定に違反した者
  二 第6条第3項の規定に違反した者
④ 不正アクセス禁止法第9条:罰則
  第4条の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。
(5)迷惑メール(スパムメール)
   インターネットでは、大量のメールを一斉に送信することが可能となり、しかもそのコストは非常に安い。そのため、広告など受け手の意思に関わらず一方的に送りつけられる迷惑メールが増えている。受信者側は希望しない内容のメールが送られてくると、標題だけではその内容がわからずに通信料を払って開封してしまうこともある。そこで2002年、2つの法律からなる、いわゆる迷惑メール防止法が制定された。そこでは、広告用のメールを送る場合、次のような規制がかけられている。
① タイトルに「未承諾広告※」と書く。
② 送信者の氏名、住所、電話番号を表示する他、受信拒否のための電子メールアドレスを本文に書く。
③ そのうえで受信を拒否したい連絡があった場合、そのユーザーには以後広告メールを送信してはならない。④ 無差別に宛先を指定して送信してはいけない。
参考:日本技術士会

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この記事を書いた人

横浜すばる技術士事務所代表
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)
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