設問Ⅱー1ー25
トライポット理論では,ヒューマンエラーの要因11個のグループに分けて考えている。次の(ア)~(オ)は,この要因のグループとその中に分類される要因の例を組み合わせたものであるが,その組合せとして不適切なものの数を①~⑤の中から選び答えよ。
(ア)ハードウェア:設計の意図が伝わらなかった
(イ)手順書:書かれていた内容が不明確であった
(ウ)エラー誘発条件:日常業務で問題を長期間放置していた
(エ)相容れない矛盾する目標:安全よりも納期が優先されていた
(オ)組織:訓練において経験者と初心者を区別しなかった
① 1 ② 2 ③ 3 ① 4 ⑤ 5
【解説】正解③ 青本168ページトライポッド理論からの出題です。
単純に覚えていないと分かりません。
ハードウェア:道具、機器の品質に問題
設計:設計の不備、設計の意図が伝わらない
エラー誘発条件:軽微な手順の変更を黙認する風潮
日常業務:長期間の問題の放置
相容れない矛盾する目標:安全よりも納期優先、利益優先
組織:組織内の責任が不明確、組織の意識低下
訓練:訓練を軽視、訓練不十分、経験者と初心者を区別しない
設問Ⅱー1ー26
次の(ア)~(オ)の文章は,リスク対策について記述したものである。リスク保有,リスク低減,リスク回避,リスク移転の4つのうち,該当する文章が2つあるものを選び答えよ。
(ア)回転する砥石で行う研磨作業について,保護眼鏡の着用を義務付けていたが,もろい加工物は破片が飛び跳ねて危険であることが分かってきたので,この作業は破片等が飛び跳ねる危険を伴わない別の方法で実施することにし,この機械は廃棄した。
(イ)溶接工程で一部残されていた手作業での溶接について,過去に労働災害が発生したことはなく,また,作業手順を詳細に検討したところ死亡に至る可能性はほぼないという結論に達したため,これまで通りの作業手順教育を継続することとした。
(ウ)現在では,生産の主力がタイにある2つの工場に集約されつつあり,仮に操業停止という事態になれば,赤字に陥ることは確実という分析結果が得られたため,災害時の復旧費用について保険で付保することにした。
(エ)事務所の耐震診断を実施したところ,全社で採用している安全基準に達していないことが分かったため,次年度の予算を確保し,耐震補強工事を行うこととした。(オ)営業担当社員に配布しているノートパソコンの紛失が多発しており,個人情報の漏洩が心配されたが,対策には多額の費用がかがるため,断念した。
① リスク保有 ② リスク低減 ③ リスク回避 ④ リスク移転
⑤ 該当なし
【解説】正解① 青本139ページリスク対策からの出題です。
リスク対策を正しく理解していれば簡単な問題です。出題頻度が高いので確実に得点する必要があります。
リスク保有
特定のリスクから結果的に生じる損失負担及び利益を受容することを言う。リスク保有は認知されていないリスクの受容も含んでおり、受容の度合いは様々であり、リスク基準に依存する。全てのリスクに対して万全の対策を講じることは、現実には不可能であり、リスクアセスメントを実施した結果としてリスクを保有することも有り得る。
リスク低減
一般的にリスク対策と呼ばれるものはこの分類に属することになる。設備投資を行い安全性向上のための設備を導入すること、組織改革による多重チェック体制の確立、運用改善やマニュアル作成によるヒューマンエラーの防止、教育訓練による意識向上などの対策が挙げられる。発生確率、負の結果又はその両者を低減する行為である。
リスク回避
特に新たな事業の開始時における判断として採られる対策である。リスクアセスメントによってリスクレベルが高く、その改善策が無いと判断される場合には、新規事業への参入自体を回避するという意思決定を行う場合がある。
リスク移転
被害規模が大きく発生確率が小さいリスクは、その対策費用が高額となる事が多く、その投資負担に耐えられないと判断される場合、保険を掛けることによってリスクの移転を図る。
設問Ⅱー1ー27
危機管理に関する次の記述のうち,最も不適切なものを選び答えよ。
① 危機管理の対象となる不測事態は産業災害や自然災害であって,欠陥商品や企業スキヤンダルなどは,経営問題ではあるが危機管理の対象外である。
② 危機管理の事前作業段階では,資機材の備蓄,教育訓練などを行う。
③ 危機管理計画マニュアルは,突発的な状況でゆっくり見直して自分の行動を検討するには不向きであるが,危機管理活動チェックマニュアルは,限られた時間の中で自分が行うべき活動を素早く理解し行動を起こすことに向いている。
④ 事後復旧段階では,実施した危機管理活動の効果を測定・評価し,次の不測事態に備える。
⑤ 緊急時の広報としては,人的被害低減のために必要な安全のための広報活動や社会的信頼性を守る安心のための広報活動が必要となる。
【解説】正解① 青本159ページ危機管理からの出題です。
危機管理の基本的な考え方が分かっていれば解ける問題です。
危機管理の対象となる不測事態(contingency)とは、人の死傷、物的損傷、財産喪失、組織に打撃を与える潜在的な事態のことを指します。
①欠陥商品や企業スキヤンダルなども危機管理の対象になります。
設問Ⅱー1ー28
「東南海地震(M8.1前後)が今後30年以内に発生する確率は70%程度」といった長期評価結果が政府の地震調査研究推進本部から発表されている(平成24年4月1日現在)。この発表における東南海地震についての発生確率の計算に関する次の記述のうち,最も適切なものを選び答えよ。
① この発生確率の計算では,毎年の発生確率が一定であると仮定しているため,毎年の発生確率をpとして,p×30の式により求めている。
② この発生確率の計算では,毎年の発生確率は一定であると仮定しているため,毎年の発生確率をpとして,1 -(1-p)3Oの式により求めている。
③ この発生確率の計算は,基準となる日付に対して行われるものであるため,その基準日を変えて厳密に計算すると確率値は変化する。
④ この発生確率の計算は,地層や地下水の動学的解析に基づいて行われているものであり,活断層の地質学的な調査データが基礎となっている。
⑤ この発生確率の計算は,過去の地震の発生記録(特に発生間隔)に基づいて行われるものであり,過去1万年程度の正確な統計データが基礎となっている。
【解説】正解③ 青本外から地震の発生確率の出題です。
「東南海地震(M8.1前後)が今後30年以内に発生する確率は70%程度」とありますが、年数が増えれば当然確率は上がり、年数が短くなれば発生確率は当然下がります。常識的な感覚として分かると思います。100年以内に地震が発生する確率と、あした地震が発生する確率は違うはずです。そうすると①②は明らかに間違いだと気が付き、③が正解だと分かります。
④発生確率の計算なので地質学的調査を基礎にするはずがありません。この文章は日本語として間違っています。
また⑤の過去1万年程度の正確な統計データなど存在するはずはありません。
設問Ⅱー1ー29
労働安全衛生法及び同法施行令に関する次の記述のうち,最も不適切なものを選び答えよ。
① 事業者の責務として,この法律で定める労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく,快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならないと規定されている。
② すべての事業場には,総括安全衛生管理者を置き,その者に労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関することなどを統括管理させることが事業者に義務付けられている。
③ 常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに,衛生管理者と産業医を選任することが事業者に義務付けられている。
④ ボイラー,第一種圧力容器,クレーン,エレベーターなどの特に危険な作業を必要とする機械で一定規模以上のものには,製造の許可,製造時などの検査,性能検査などの規制がかかっている。
⑤ 労働者を雇い入れたとき及び作業内容を変更したときにその業務に関する安全又は衛生のための教育を実施することが事業者に義務付けられている。
【解説】正解② 青本144~145ページ労働安全衛生法と安全管理からの出題です。
青本からの出題なので確実に得点をとる必要があります。
②すべての⇒一定規模以上
すべてと断定している時点で不適切だと判断できます。1人しかいない事業場にも総括安全衛生管理者を配置しろという話になります。1人しかいないのに、総括する必要はないことになります。常識的に不適切です。
設問Ⅱー1ー30
労働災害統計に関する次の(ア)~(エ)の記述のうち,不適切なものの数を①~⑤の中から選び答えよ。
(ア)統計指標の作成方法,指標の定義は,日本,米国,EU各国において統一運用されている。
(イ)日本のある事業所は,年間の延実労働時間が500,000時間,労働災害件数が1件,労働災害による死者は0人,負傷者数が2人であった。この事業所の度数率は,2である。
(ウ)強度率とは労働災害リスクを意味し,労働災害の発生頻度とその重さの程度の積で表される。
(エ)日本の全産業における労働災害による死亡者数は,過去10年間(平成13年~平成22年)減少し続け,平成22年に初めて1,000人以下となった。
① 0 ② 1 ③ 2 ④ 3 ⑤ 4
【解説】正解⑤ 青本147ページ労働災害と災害統計からの出題です。
(ア)×労働災害の統計指標など自国の価値観だけで判断すればいいもので、国同士比較するものではありません。当然統一運用などする必要がありません。
(イ)×度数率(労働災害の発生頻度を表す)
100万延実労働時間当たりの労働災害による死傷者数
=(1,000,000)÷(延実労働時間数)×(労働災害による死傷者数)
=1,000,000÷500,000×2=4
(ウ)×強度率(労働災害の重さの程度を表す)
1,000延実労働時間当たりの災害のために失われた延労働損失日数
=(1,000)÷(延実労働時間数)×(延労働損失日数)
(エ)×平成22年度の労働災害による死亡者数は前年に比べ120人増の1,195人、11年ぶりの対前年比増です。知らないと解けない問題です。
設問Ⅱー1ー31
事故や災害の未然防止活動に関する次の(ア)~(エ)の記述のうち,適切なものの数を①~⑤の中から選び答えよ。
(ア)ヒヤリハット活動はハインリッヒの法則の考え方に基づいたものである。
(イ)ヒヤリハット活動では,原因を究明し責任を追及することにより,再び同じことを繰り返さないようにすることが重要である。
(ウ)定期点検活動は,人が実施するため,その実施レベルにムラが生じない活動である。
(エ)小集団活動の導入時に配慮すべきポイントとして,全組織的に活動の本質を徹底的に理解すること,活動の最初の段階から完全性を求めないことなどが挙げられる。
① 0 ② 1 ③ 2 ④ 3 ⑤ 4
【解説】正解③ 青本149~152ページ未然防止活動からの出題です。
ヒヤリハット活動、定期点検活動、小集団活動の基本的な考え方が分かっていれば解ける問題です。
(イ)×ヒヤリハット活動では報告内容によって責任追及を行うことはせず、安全活動のみに使用する。そうでない場合、報告が意図的に抑制される可能性が出てきます。
(ウ)×人間に依存する活動なので、個人の熟練・技量・体調などによって、実施レベルにムラが生じる可能性がある。
設問Ⅱー1ー32
設備やシステムの安全性,信頼性を高める技術に関する次の記述のうち,最も適切なものを選び答えよ。
① フォールトアボイダンスとは故障回避を意味し,システムを構成している一部に不具合が生じても,他の部分がその不具合をカバーしてシステムとして正常に機能するようにすることである。
② 安全制御の考え方では,機械故障の発見と停止や再起動操作は基本的に人間が行うべきこととしている。
③ フォールトトレランスは,人間の過誤などが原因で信頼性や安全性を損なわないようにすることをいい,電子レンジの扉を開けると停止するなどがその例である。
④ インターロックシステムで行う安全確認は,作業場に人がいないこと,機械が完全に停止していることを確認することである。
⑤ 安全確認型インターロックでは,危険の情報をエネルギーとして検知し,積極的なブレーキ動作に結びつけ機械を停止させる。危険状態のみならずセンサーの故障で安全を確認できないときも機械を停止させる点が重要な点である。
【解説】正解④ 青本153~155ページ設備の安全性、信頼性からの出題です。
出題頻度が高い問題なので確実に得点する必要があります。
①フォールトトレランスの記述です。
フォールト:過失、失敗 、トレランス:許容
フォールトトレランスとは直訳すると失敗しても許容するという意味になります。故障しても正常に機能するという意味になります。
②青本153ページ、安全制御の考え方では、機械故障の発見と停止や再起動操作は基本的に人間が行うものではない。
③フールプルーフの記述です。
フール:バカ 、プルーフ:防ぐ
フールプルーフは直訳するとバカを防ぐという意味になります。人間のミスの影響を抑えるという意味になります。
⑤危険検出型の記述です。
安全確認型インターロック:安全を確認したとき機械の運転に許可を与える
危険検出型インターロック:危険の情報をエネルギーとして抽出して積極的なブレーキ動作に結びつける
設問は技術士会ホームページよる参照しています。
合わせて読みたい
実は超簡単だがほとんどの人は知らない【総監択一で7割取る方法】