令和4年度建設部門(施工計画Ⅲー1) A判定の論文

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問題

我が国は災害が起きやすい国土であり,常に災害リスクに直面してきた。これに加え,近年,豪雨災害が激甚化・頻発化するとともに,南海トラフ地震,首都直下地震や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震といった巨大地震の発生リスクも切迫する。今後,大規模かつ広域的な災害が発生し,河川,道路,鉄道,海岸などの複数のインフラ施設が甚大な被害を受けた場合,まず被災地域の暮らしを確保するため,被災状況を踏まえて応急復旧工事を進めることになる。
上記を踏まえ,施工計画,施工設備及び積算分野の技術者として,以下の問いに答えよ。
( 1 )大規模・広域災害時において,応急復旧工事の実施に当たり配慮すべき課題を多面的な観点から3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
( 2 )前問( 1 )で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ選択し,その課題に対する複数の解決策を,専門技術用語を交えて示せ。
( 3 )前問( 2 )で示した解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
参考:日本技術士会

解答

1 . 応 急 復 旧 工 事 の 実 施 に 当 た り 配 慮 す べ き 課 題
( 1 ) 適 切 な 時 期 の 応 急 復 旧 工 事 の 着 手 自 然 災 害 で は 、 被 災 範 囲 や 継 続 時 間 の 予 想 が 難 し い 。応 急 復 旧 工 事 に 着 手 す る 時 期 が 適 当 で な い と 、 工 事 中に 災 害 に 巻 き 込 ま れ 、 ま た 、 よ り 甚 大 な 被 災 を 招 き かね な い 。 従 っ て 、 二 次 災 害 防 止 の 観 点 か ら 、 適 切 な 時 期 に 工事 に 着 手 す る よ う 配 慮 す る こ と が 課 題 で あ る 。
( 2 ) ス ム ー ズ な 応 急 復 旧 工 事 の 執 行 大 規 模 ・ 広 域 災 害 に お い て は 、 多 く の 住 民 が 避 難 して い る こ と が 想 定 さ れ る 。 避 難 所 や 孤 立 し た 家 で の 生活 は 不 便 で 精 神 的 に も 困 難 で あ る 。 従 っ て 、 住 民 の 早 期 の 生 活 回 復 の 観 点 か ら 、 出 来 るだ け ス ム ー ズ に 応 急 復 旧 工 事 を 執 行 で き る よ う 配 慮 する こ と が 課 題 で あ る 。
( 3 ) 被 災 状 況 の 把 握 応 急 復 旧 工 事 で は 、 設 計 図 書 が 整 っ て い な い た め 、通 常 の 工 事 の よ う に 設 計 図 面 に 従 っ て 工 事 を 実 施 す るこ と が 出 来 な い 。 従 っ て 、 適 切 に 工 事 の 効 果 を 発 揮 さ せ る と い う 観 点か ら 、 被 災 範 囲 ・ 規 模 ・ 倒 壊 し た 施 設 の 被 害 状 況 等 の被 災 状 況 を 適 切 に 把 握 し て 、 工 事 の 実 施 に 反 映 で き るよ う 配 慮 す る こ と が 課 題 で あ る 。

2 . 最 重 要 課 題 と 解 決 策
  上 記 で 挙 げ た 課 題 の う ち 、 ( 2 ) ス ム ー ズ な 応 急 復旧 工 事 の 執 行 が 最 も 重 要 な 課 題 と 考 え て い る 。 そ う する こ と に よ り 、 早 期 に 被 災 地 域 住 民 の 暮 ら し を 確 保 でき る 効 果 が あ る と 考 え る か ら で あ る 。 以 下 に 解 決 策 を示 す 。
( 1 ) 多 様 な 入 札 制 度 の 採 用 通 常 の 公 共 事 業 の 入 札 ・ 契 約 プ ロ セ ス は 調 達 に 時 間が か か り 、 早 期 の 工 事 着 工 は 難 し い 。 そ こ で 、 随 意 契 約 ・ 見 積 徴 収 制 度 を 活 用 し て 短 期 間に 工 事 業 者 の 調 達 を 行 う 。 こ れ に よ り 早 期 に 工 事 着 工が 可 能 と な り 、 被 災 住 民 に 安 心 感 を 与 え る こ と が 期 待で き る 。
( 2 ) 横 断 的 連 携 大 規 模 ・ 広 域 災 害 で は 、 単 独 の 自 治 体 や 業 者 で は 応急 普 及 工 事 に 対 応 で き な い 懸 念 が あ る 。 そ こ で 、 自 治 体 間 や 建 設 業 組 合 の 複 数 の 業 者 に よ る横 断 的 な 連 携 を 行 う 。 こ れ に よ り 、 工 事 に 適 し た 職 種の 労 務 者 と 十 分 な 資 機 材 の 融 通 が 可 能 と な る 。
( 3 ) 地 方 の 建 設 会 社 の 安 定 経 営 近 年 の 社 会 経 済 情 勢 か ら 、 地 方 の 建 設 会 社 の 経 営 は決 し て 健 全 と は 言 え な い 。 地 方 の 建 設 会 社 に 元 気 が ない と 、 地 域 の 安 全 安 心 を 確 保 す る こ と は 難 し い 。 そ こ で 、 公 共 工 事 の 施 工 時 期 の 平 準 化 を 行 い 、 ま た小 規 模 工 事 に も I C T の 活 用 を 推 進 す る こ と で 、 担 い手 の 確 保 ・ 生 産 性 の 向 上 ・ 経 営 の 安 定 と い っ た 好 循 環を 作 り 出 す 。 そ う す る こ と で 地 方 の 建 設 会 社 の 安 定 した 経 営 が 期 待 で き る 。
( 4 ) 維 持 管 理 デ ー タ の 蓄 積 倒 壊 し た 河 川 施 設 等 の デ ー タ が な い と 適 切 な 復 旧 工事 を 行 う こ と は 困 難 に な る 。 そ こ で 、 イ ン フ ラ の 点 検 ・ 診 断 ・ 措 置 ・ 記 録 の メ ンテ ナ ン ス サ イ ク ル を 実 施 す る こ と で 獲 得 し た デ ー タ を活 用 し て 工 事 を 実 施 す る 。 過 去 の 補 修 デ ー タ 等 に 基 づい て 工 事 を 行 う こ と で 、 適 切 な 応 急 復 旧 工 事 を 実 施 でき る 効 果 が あ る 。

3 . 新 た に 生 じ う る リ ス ク と 対 策
( 1 ) 工 事 コ ス ト の 増 加 施 工 者 に と っ て 、 工 事 を 実 施 す る 過 程 で 想 定 外 の コス ト が 発 生 し 、 施 工 者 の 負 担 と な る リ ス ク が あ る 。 対 策 と し て は 、 工 事 着 手 時 に 発 注 者 と 受 注 者 が 、 工事 範 囲 ・ 責 任 範 囲 に つ い て よ く 協 議 を 行 い 、 工 事 中 に必 要 な 設 計 変 更 を 実 施 す る 。 こ れ に よ り 、 改 正 品 確 法の 災 害 対 応 の 趣 旨 に 副 う こ と つ な が る 。
( 2 ) 工 事 の 実 施 状 況 が 住 民 に 伝 わ ら な い 応 急 復 旧 工 事 の 進 捗 状 況 が 住 民 に 詳 細 に 伝 わ ら ず 、住 民 の 不 安 が 解 消 さ れ な い リ ス ク が あ る 、 そ こ で 、 施 工 計 画 を 立 案 す る 際 、 自 宅 や 避 難 所 で 生活 す る 住 民 を 関 係 者 と と ら え 、 工 事 の 進 捗 状 況 、 完 成時 期 等 の 情 報 を 丁 寧 に 説 明 す る 。 こ れ に よ り 、 精 神 的な 不 安 の 解 消 す る こ と が 出 来 る 。 以 上

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この記事を書いた人

横浜すばる技術士事務所代表
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)
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