令和3年度技術士二次試験問題(建設部門)鋼構造及びコンクリート
問題
Ⅱー2ー1建設中に耐久性や精度に関わる不具合が接合部又は打継ぎ部(以下,接合部) で見つかり,この原因を検討し繰り返さないための方策を講じることになった。あなたが再発防止の担当責任者として業務を進めるに当たり,下記の内容について記述せよ。
( 1 )対象とする構造物と接合部の具体的不具合を設定し,調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。ただし,測量・寸法ミス,図面の誤記,設計と異なった材料の使用による不具合は含めないものとする。
( 2 )不具合を繰り返さないための業務の手順を列挙して,それぞれの項目ごとに留意すべき工夫を要する点を述べよ。
( 3 )上記業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
参考:日本技術士会
模範解答例
(1) 調査・検討すべき事項
構造物:単純鋼床版箱桁橋
不具合:高力ボルト本締め不適合( 共回り発生 )
1)調査事項
①発生要因:材料・部材(ボルト、母材、添接板の品質)、施工(締付け機械、手順、気象環境、保管状態)
②不適合の影響範囲:発見箇所以外の有無
③類似の不適合事例:既存資料、報告書
2)検討事項
①業務計画:基本方針の設定、リソースの配分、実施および照査・検査・審査体制の確立
②不具合箇所の修繕・補修計画:QCD 、安全性、施工性に留意した計画
③再発防止計画:発生要因を排除した恒久的な対策
(2) 業務遂行の手順
業務は、PDCAサイクルで進める。各段階で前段階の妥当性を確認し、効果的にサイクルを回す。
1)計画( 再発防止計画の立案 )
留意点:施工前の材料・部材検査、施工時の日常管理、締付け完了検査の徹底を取り入れる。
工夫点:高力ボルト保管は、コンテナなど風雨を防ぎ、通気性の良い保管場所を完備することを注記する。
2)実行( 高力ボルト本締め )
留意点:再発防止計画を着実に実行する施工体制の確立に向けて、支援・補助する。
工夫点:実際に施工に立会い、計画や施工手順の妥当性を確認する。
3)評価( 本締め結果の確認 )
留意点:新たな不適合の発生有無を確認する。
工夫点:接合部を調査( ボルト締付や鋼材表面仕上げの品質など )し、再発防止計画の有効性を確認する。
4)改善( 新たな対策・情報発信 )
留意点:改善されない場合、計画に戻り新たな対策を検討する。
工夫点:改善された場合、関係者へ水平展開する。
(3) 関係者との調整方策
(a) 社内審査の実施
設計・施工・品質部門など不具合防止に係わる技術者による社内審査を実施し、対策の妥当性確認やミス防止を図る。
(b) 対策の普及促進
設計・製作・架設担当者に対して検討会や教育訓練を開催し、対策の周知徹底を図る。その際、追加や修正点が生じた場合は、対策をブラッシュアップする。
(c) 的確な情報発信
鋼構造の不具合は、鋼板やボルトなどの購入品、構造部材の設計・製作・架設に起因するものなど多岐にわたる。品質管理を統括する部門と協働・連携し、迅速かつ的確に関係者へ情報発信する。 以上
横浜すばる技術士事務所
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