令和4年度建設部門鉄道Ⅲー2 A判定論文

そら
ホーム » 技術士二次試験対策 » 建設部門模範解答 » 令和4年度建設部門鉄道Ⅲー2 A判定論文
目次

問題

Ⅲー2近年,人口減少による鉄道利用者の減少に加え,新型コロナウイルス感染拡大を契機に人々の生活様式が変容し,鉄道の経営はますます厳しくなってきている。今後,鉄道施設の改良工事を持続的に推進していくためには,鉄道工事のコスト縮減がますます求められる。このような状況を踏まえて,以下の問いに答えよ。
( 1 )鉄道工事のコスト縮減を行ううえで,鉄道工事の特異性を踏まえて建設部門の技術者としての立場で多面的な観点から課題を3っ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで, 課題の内容を示せ。
( 2 )前問( 1 )で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1っ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 )前問( 2 )で提示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。
参考:日本技術士会

解答

( 1 ) 鉄 道 工 事 の コ ス ト を 縮 減 す る た め の 課 題
  1 つ 目 は 鉄 道 工 事 の 制 約 条 件 を 緩 和 す る こ と で あ る 。改 良 工 事 で は 、 終 電 か ら 始 発 ま で の 夜 間 、 列 車 間 合 い 、低 空 頭 等 の 鉄 道 特 有 の 厳 し い 条 件 下 で の 施 工 を 求 め ら れる 場 合 が 多 い 。 橋 梁 ・ ト ン ネ ル の 平 均 経 年 は 約65年(2019年 土 木 学 会 会 長 特 別 委 員 会 ) で 耐 用 年 数 を 超 過し て い る た め 、 今 後 改 良 工 事 の 必 要 性 は 高 ま る と 想 定 され る 。 そ の た め 、 施 工 環 境 の 観 点 か ら 対 策 が 必 要 で あ る
 2 つ 目 は 保 守 労 力 を 軽 減 で き る 建 設 技 術 の 開 発 で あ る2020年 の 企 業 向 け ア ン ケ ー ト で 約 7 割 が コ ロ ナ 禍 収 束後 も テ レ ワ ー ク を 拡 大 又 は 維 持 の 予 定 を 回 答 し て お り 、建 設 後 の 維 持 管 理 に 必 要 と な る 営 業 収 入 は 元 に 戻 ら な いと 想 定 さ れ る 。 そ の た め 、LCC削 減 の 観 点 か ら 対 策 が 必要 で あ る 。
 3 つ 目 は 鉄 道 工 事 の 省 人 化 で あ る 。 建 設 業 就 業 者 の55歳 以 上 の 割 合 は2020年 で36% と 高 く 、 今 後 高 齢 者 の大 量 離 職 が 想 定 さ れ る 。 人 口 減 少 で 担 い 手 の 需 要 が 供 給を 超 過 す る 可 能 性 が 高 い こ と や 、 近 年 の 労 務 単 価 の 上 昇を 鑑 み る と 、 コ ス ト を 縮 減 す る に は 人 材 の 観 点 か ら も 対策 が 必 要 で あ る 。

2 ) 制 約 条 件 を 緩 和 す る た め の 解 決 策
鉄 道 の 特 殊 性 に 最 も 関 係 す る 1 つ 目 の 課 題 解 決 が 最 も重 要 と 考 え た 。 ま た 、 制 約 条 件 の 緩 和 は 省 人 化 ・ 低 価 格化 に も つ な が り 、 削 減 で き た 人 材 ・ 費 用 を 2 ~ 3 つ 目 の課 題 解 決 に 充 て ら れ る と 考 え た 。
 1 つ 目 はGNSSに よ る 列 車 位 置 の 把 握 で あ る 。 地 図 上で 把 握 で き る た め 、 列 車 の 視 認 距 離 の 目 測 の ば ら つ き を抑 え ら れ 、 列 車通 過 時 の 作 業 中止 時間 を 必 要 最小 限に でき る 。 ま た 、先 方 見 張員 を 削 減 で き る た め 、 省 人 化 の 効果 も あ る 。
  2 つ 目 は コ ン クリ ー ト構 造 物の プ レ キ ャス ト 化 で あ る部 材 を 工 場 で製 作し 現 場 で の作 業 を組 立の み に で き る ため 、 夜 間 の み作 業 で も 工期 を 短 縮 で き る 。 高強 度の コ ンク リ ー ト を 使う た め 耐久 性 が 向 上 す る一 方で 、接 合 部 は水 分が 浸 透し や す い た め 、防 水 加工 を行 うな ど 品 質 確保に 留 意す る 。
 3 つ 目 は埋 設 型 枠や プ レ ハ ブ鉄 筋 で あ る 。プ レ キ ャスト は 部 材 が 大 き い た め運 搬上 の 制 約 等 で採 用 で き な い 場合 は 、型 枠・ 鉄筋 の み を 工 場 で製 作し 、 少 し で も現 場 作業 を 少 な く で き る よう 工 夫 す る 。   
 4 つ 目 は ス トラ ン ド 場 所 打 ち 杭で あ る 。 鉄筋 を らせ ん状 に ね じ って 縮小 し た状 態で 孔 口 ま で運 搬し 、現 地 で継ぎ 手 無 し で伸 展す るだ け で 建込 で き る た め 、 低 空 頭 で も効 率 的に 施 工 で き る 。5 つ 目 は 多軸 台車 に よ る一 括 架設 で あ る 。 大型 ク レ ーン に よ る一 括 架設 は桁 下 交 通 への 影 響を 最小 限に で き 、送 出し 架 設 等 よ り安 価 に 施 工 で き る が 、桁 の 重 量 や作 業ヤ ー ド の 制 約 で採 用 で き な い 場 合 が 多 い 。 多軸 台車 を 用い れ ば400t超 の桁 で も架 設 で き 、 大型 ク レ ー ン の 設 置も 不 要 な た め 、 効率 的な 一 括 架設 の適 用 範 囲を 広 げる こと が で き る 。
 プ レ キ ャス ト や ス トラ ン ド 等 の 工 場製 品は 直 接工 事 費が 高 い と いう 理 由 で 予備 設 計 の段 階で 除 外さ れ がち で ある 。 工期 の 短 縮 に よ り 削 減 で き る仮 設 費 を 考慮 し て現 場打 ちと の比 較 検 討を 行 う。 ま た 、現 場 作 業 の 減 少 に よ る安 全性 向 上 効果 を 考慮 し たVFMに よ る検 討も 行 う。

( 3 )新 た に生 じ うる リ ス ク と そ れへ の 対 策
 現 場 作 業 の 減 少 で各 現場 に配 置 さ れ る 人 数 が 減 る こ とで 、熟 練者 か ら直 接技 術 を継 承す る機 会 が 減 る こ と が懸念 さ れ る 。 そ れ を補 うた め 、VRに よ る疑 似 体験 を導 入す る 。実 物を 見 な い と 学ぶ の が難 し い 鉄筋 組 立の 作 業 手順 な ど を 現 場 に行 か な く て も 効率 的に 継 承で き る 。 工 場製 品が 普 及 し た と し て も前 例の な い 事象 に 対 す る判 断を求 め ら れ る機 会 は 必 ず あ る 。疑 似 体験 は そん な 時 に 何 とか 解 決 で き る よう に す る た め の 有 効 なツ ー ル と 考 え る 。
 安 全性 が 向 上 す る一 方で 新 技 術 特 有 の 事故 も 懸 念さ れる 。例 え ばプ レ キ ャス ト で は角 部 が増 え る こ と で剥 落のリ ス ク増 加が 懸 念さ れ る た め 、補 強 鋼 板を 必 要 に応 じて設 置 す る 。一 度重 大 事故 が 発生 す る と却 って コ ス ト が増加 す る 可 能 性 が あ る た め 、安 全管 理 の意 見 交 換を 定期 的に 行 い 、新 技 術 に慢 心 せず 安 全性 向 上 の 対 策 を検 討し 続け る 必 要 が あ る 。以上。

技術士試験対策はお任せください。

技術士試験対策は横浜すばる技術士事務所

技術士二次試験対策は要領です。


合格する論文の黄金法則

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

横浜すばる技術士事務所代表
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)
あなたの技術士合格を応援します。

目次