安全管理(その3)

垂れ幕
目次

5.3 未然防止活動・技術

未然防止活動とは、事故や災害の発生を未然に防止するための活動であり、多くは現場における日常的な活動の一部として実施させるものである。代表的なものは、定期点検活動、小集団活動、ヒヤリハット活動などであるが、このような活動の中で、事故や災害に結び付く可能性のある事項の抽出、改善策の策定と実施が行われる。現場における活動では、労働災害の防止に重点が置かれることも多いが、運用改善や小規模の設備改良で対応できない場合は、より信頼性・安全性の高いシステムに更新することも必要になる。

5.3.1 定期点検活動

定期点検活動は、事故や災害の未然防止を目的とした活動の1つであり、定常業務の一部として週1回であるとか毎朝などのように定期的に行う点検活動のことである。活動の内容としては、主に以下の2つが考えられる。
 (1)業務が想定通りに行われていることを確認するための活動
 (2)事故・災害・トラブルに発展する可能性のある非定常の行為や事象(異音などの予兆を含む)を発見し改善するための活動

5.3.2 小集団活動

 QCサークル、ZD運動、改善提案活動などが小集団活動として整理される。これらの活動は、安全衛生意識の向上と徹底を目的にしたグループ活動である。一般的には、職場内に編成される小集団に、主体的に生産技術、改善、安全衛生などの特定の目標を設定させ、かつ計画を立てさせ、その達成過程で、小集団に参加している各自の創造性やグループの一体感を醸成させるような活動を意味している。

5.3.3 ヒヤリハット活動

ヒヤリハットとは、ヒヤリとかハッとした出来事のことで、事故には至らないものを指すが、このようなヒヤリハットを無くすための活動がヒヤリハット活動(もしくは運動)である。ハインリッヒの法則では、1件の死亡・重傷災害が発生したとすれば、それと同じ原因で29件の軽傷災害を起こし、同じ性質の無傷害事故を300件伴っているとされるが、この300件がヒヤリハット事例ということになる。言い換えると300件のヒヤリハットは1件の重傷災害、29件の軽傷災害発生の可能性があるということになる。ヒヤリハット活動は、この300件のヒヤリハット事例を無くすことにより、傷害事故を防止しようとするものである。ヒヤリハット活動を実施する場合に重要となる観点は以下のようなものである。
 (1)早期の報告
 (2)報告者の保護
 (3)早期の改善
 (4)情報の早期流通
 ヒヤリハット活動を実施し、その活動を水平展開することにより、次のような効果が期待される。
 (1)将来の重大災害に結びつく可能性のある重要な事象を発見できる可能性があり、未然防止対策の重要な情報源となる。
 (2)ヒヤリハット事例は頻発するため、多数のデータ収集が可能であり、その分析によって普遍的な情報を得ることができる。
 (3)ヒヤリハット事例の報告者自身の安全に対する意識向上に繋がる。

5.3.4 機械設計原則(フェールセーフ)

 災害防止には、大きく3つのアプローチが存在するが、まず故障が直接大きな事故や災害の原因になるようなところは、強固にするという構造安全の立場があり、安全率などの信頼性(確率論)の分野からアプローチされる。また、故障を認めざるを得ない場合には安全制御の考え方を採用する。つまり、圧力センサの故障は安全側(圧力が上昇しない側)になるように設計し、プレス機械は故障時にはスライドの下降が停止し、修理しないと運転が再開しないようになっている。このような、故障が原因で危険になることを防止しようとするもので、機械の運転を停止させて災害防止を図ることをフェールセーフと呼んでいる。
 故障しない機械はあり得ないし、そのための発見と停止操作や故障修理と再起動操作は人間の最も重要な仕事とされてきたが、安全制御の考え方では、基本的に人間が行うべきこととは考えていない。
 フェールセーフシステムというのは、故障で危険側障害とならないように運転を停止 させるシステムであり、安全認識のためのセンサが故障したときは機械を安全側(停止)にするというのが代表例となる。

5.3.5 システムの高信頼化

システムの信頼性を高める方法には、2つのアプローチがある。
 一つは、信頼性の高い部品の使用やバグのないソフトウェアの開発などにより、設計や製造などにおいて、構成要素の故障が発生しないようにする方法である。これは、フォールトアボイダンスと呼ばれ、一般的によく用いられる方法である。この方法は、個々の構成要素の信頼性に依存するものであって、安全を確保するアプローチではない。
 もう一つは、フォールトトレランスと呼ばれるもので、異常が放置され一部が故障に至るような場合でも、システムへの要求機能発揮を可能とすることである。つまり、システムを構成している一部に不具合が生じても、他の部分がその不具合をカバーしてシステムとして正常に機能するようにすることである。方法としては、付加装置や付加機能などの冗長性を組み込むことによって故障の影響を自動的に防ぎ、システムとしての正常な機能を保持させることが行われる。
 その他に関係する概念として、故障が存在しても機能または性能を縮退しながら要求する機能を遂行し続ける設計上の性質、つまり他の故障が発生しても機能の一部を保持して何とか稼動を続けようとする性質を意味するフェールソフトがある。
 また、人間の過失などが原因で信頼性や安全性を損なわないように工夫するフールプルーフがある。これは、故障が生じたとき、あらかじめ定められた1つの安全な状態をとるような設計上の性質、人為的に不適切な行為や過失などが起こっても、システムの信頼性及び安全陛を保持する性質と言える。

フォールトアボイダンス
 故障を少なくする
フォールトトレランス
 故障の影響を抑える
 (全体機能維持)
フェールソフト
 故障の影響を抑える
 (一部機能維持)
フールプルーフ
 人間のミスの影響を抑える

5.3.6 安全確認システム(インターロック)

機械の安全の最も基本的な原理は、隔離/停止の原則である。人や機械が動けばぶつかる可能性が生じるため、隔離するか、機械を停止するのが最も納得性の高い安全である。 また、安全を確認して機械の運転を行うためには、センサなどの工学的手段が必要になる。しかし、隔離安全を単に確認するだけでなく、工学的手段に危険側障害が生じないことを証明しなければならない。安全が論理的に扱われるべき必然性として、安全立証の概念を必要とする。
 人と機械が協調して作業を行うようなシステムにおける安全問題では、インターロックと呼ばれるシステムが重要となる。それは、次のような考え方に基づく。
 (1) 人は機械が作業をしていないときに作業場に接近する。
 (2) 機械は人が作業場にいないときに作業を行う。
従って、インターロックシステムで行う安全確認は、作業場に人がいないこと、機械が完全に停止していることを確認することである。
 インターロックシステムには大きく分けて、安全確認型と危険検出型が存在する。
 安全確認型インターロックでは、安全を確認したとき機械の運転に許可を与えるための信号を出力し、安全が確認されないときに許可出力を停止する。ここで、危険状態のみならず、センサの故障で安全が確認できないときも機械が停止する点も重要な点である。
 危険検出型インターロックでは、危険の情報をエネルギーとして抽出し、積極的なブレーキ動作に結びつける。しかし、センサの故障で危険状態を検出できない場合は安全状態との区別が出来ないことが欠点として挙げられる。
 危険検出型の安全装置の故障が原因となる事故は繰り返されており、安全確認型インタ-ロックによる体系的な検討は重要な観点である。
参考:日本技術士会

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この記事を書いた人

横浜すばる技術士事務所代表
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)
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