社会環境管理(その6)

JR
目次

6.6 組織の環境管理活動と環境アカウンタビリティ

 近年では、企業などの組織は社会の中の一員であり、社会と共生している存在であると考えられている。よって、企業活動の内容を公開し、その活動に責任を持つべきであると解釈されることが多い。アカウンタビリティという用語は、財務報告的な意味合いを持つ会計責任や説明責任と訳されることが多いが、企業などの組織の責任対象が自然・社会環境にまで拡充してきている。そのため、企業などの組織においても、従来のように株主や債権者に対する財務的なアカウンタビリティだけではなく、非財務的な自然・環境に関わる事項まで社会に報告する責任を有する環境アカウンタビリティという考え方が一般化してきている。
 環境アカウンタビリティに対する意識向上の表れとして、近年では組織の環境管理活動の内容を組織外に公開するための環境報告書を作成する企業などが増加している。環境報告書の作成は、義務ではなく任意となっているが、多くの企業が環境報告書を作成している。

6.6.1 環境管理システム

環境管理システムとは、企業などの組織が環境管理を体系的に実行していくための仕組みのことである。一般的な環境管理システムの構成としては、大きく4つに分けることができるが、それぞれについての留意点をまとめる。
(1)環境方針
  ① 組織の活動、製品またはサービスの性質、規模及び環境影響に対して適切な内容である。
  ② 継続的改善及び汚染の予防に関する約束を含む。
  ③ 関連する環境の法規制、及び組織が同意するその他の要求事項を遵守する約束を含む。
  ④ 環境目的及び目標を設定し、見直す枠組みが与えられている。
  ⑤ 文書化され、実行され、維持され、かつ全従業員に周知徹底される。
  ⑥ 一般の人が入手可能である。
(2)計画
  ① 環境側面:組織の現状について、法規制の要求事項、著しい環境側面の特定、全ての既存の環境管理の慣行及び手順の検討、既発生事象の調査からのフィードバックなどを検討し、かつレビューすること。
  ② 環境目的及び目標:組織活動が環境方針と整合するための環境目的及び目標を確立すること。
  ③ 環境管理プログラム:目的・目標の達成に必要なスケジュールとそのための人及び資金の投入を計画的に行うこと。
(3)実施及び運用
  ① 体制及び責任:実施組織を作り、管理の推進を図る特定の管理責任者を任命する。
  ② 訓練、自覚及び能力:環境方針、手順、環境管理システムの要求事項に適合することの重要性と作業活動による顕在または潜在の著しい環境影響、各人の作業改善による環境上の利点、環境方針及び手順の適合、緊急事態への準備及び対応の要求事項を含む環境管理システムの要求事項との適合を達成するための役割と責任、そして規定された運用手順から逸脱した際に予想される結果について、各従業員が自覚するよう訓練する。
  ③ コミュニケーションの推進
  ④ 環境管理システムの文書化と文書管理
  ⑤ 運用管理:環境方針、目的・目標を達成するための運用管理を確実に行っていくための、各種の手順類の文書化を行い、決められた手順に従った管理を行うこと。
  ⑥ 緊急事態への準備及び対応
(4)点検及び是正処置
  ① 監視及び測定:環境に著しい影響を及ぼす可能性がある運用・活動のカギとなる特性を、定常的に監視し測定するために文書化した手順を確立し、維持すること。
  ② 不適合並びに是正及び予防処置:不適合などについて、あらかじめ対処方法を検討する、もしくはその原因を取り除くこと。
  ③ 経営層による見直しを実施する。

6.6.2 環境活動評価プログラム

環境省は、中小事業者などの幅広い事業者に対して、環境管理に用いることができる簡易な方法を提供するために、環境活動評価プログラム(エコアクション21)を策定した。 この環境活動評価プログラムは、以下の(1)~(5)のステップを取る。
(1)評価項目の選択
(2)環境への付加と取り組みの自己チェック
(3)環境行動計画の作成
(4)環境行動計画にそった行動
(5)活動結果の評価・改善策の検討

6.6.3 環境会計

環境会計には、外部報告と内部管理の2つの側面がある。
 外部報告の側面においては、環境会計情報が環境報告書などを通じ、環境アカウンタビリティの一環として社会に開示されることにより、情報の利用者は企業などの環境保全への取り組み姿勢や具体的な対応などと併せて、より総合的に企業などの環境情報を理解することが可能となる。その結果、企業などの社会的信頼が高まり、適正な評価を確立していくことにつながる。一方で内部管理の側面においては、企業などが環境保全に取り組んでいくにあたって、合理的な意思決定を行うために利用できる。すなわち、自らの環境保全に関する投資額や費用額を正確に認識・測定して集計・分析を行い、その投資や費用に対する効果を知ることにより、取り組みの一層の効率化を図ることが可能となる。
 環境省は、環境会計ガイドラインを発行しており、ここでは主として企業など(民間企業、公益法人、地方公共団体などの団体も含む)を対象とする環境会計について、その集計方法などや、環境会計公表用フォーマットが示されている。このガイドラインで取り扱う環境会計では、環境保全コスト(貨幣単位)、環境保全効果(物量単位)、及び環境保全対策に伴う経済効果(貨幣単位)を構成要素としている。
 一方、経済産業省が発行している環境管理会計手法ワークブックでは、企業などが環境に配慮した経営の意思決定をする際に使用可能な具体的手法を提案しており、環境配慮型設備投資のマネジメント、環境配慮型原価管理システム、マテリアルフローコスト会計、ライフサイクルコスティングなどの手法や事例が紹介されている。

環境保全コスト
・ 主たる事業活動により事業エリア内で生じる環境負荷を抑制するための環境保全コスト(事業エリア内コスト)
・ 主たる事業活動に伴ってその上流又は下流で生じる環境負荷を抑制するための環境保全コスト(上・下流コスト)
・ 管理活動における環境保全コスト(管理活動コスト)
・ 研究開発活動における環境保全コスト(研究開発コスト)
・ 社会活動における環境保全コスト(社会活動コスト)
・ 環境損傷に対応するコスト(環境損傷対応コスト)
・ その他環境保全に関連するコスト(その他コスト)
環境保全効果
・ 事業活動に投入する資源に関する環境保全効果
・ 事業活動から排出する環境負荷及び廃棄物に関する環境保全効果
・ 事業活動から産出する財・サービスに関する環境保全効果
・ 輸送その他に関する環境保全効果
環境保全対策に伴う経済効果
・ 実質的効果
・ 収益
・ 費用節減
・ 環境から事業活動への資源投入に伴う費用の節減
・ 事業活動から環境への環境負荷及び廃棄物排出に伴う費用の節減
・ 環境損傷対応費用の節減
・ 推定的効果
参考:日本技術士会

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横浜すばる技術士事務所代表
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)
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