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平成29年度技術士総合技術監理部門必須科目模範解答と解説

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目次

平成29年度技術士総合技術監理部門必須科目

問題

I-2 次の問題について解答せよ。(指示された答案用紙の枚数にまとめること。)
2015年に「国連持続可能な開発サミット」が開催され,持続可能な開発目標(SDGs)を含む「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダが採択された。
これは,開発途上国の開発に関する課題にとどまるものではなく,世界全体の経済,社会及び環境の三側面を,不可分のものとして調和させる統合的取組である。
 我が国でも政府がSDGs推進本部を設置し,実施指針を示している。その中では,「持続可能で強靱そして誰一人取り残さない,経済,社会,環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」ことがビジョンとして掲げられ,8つの優先課題と具体的施策が示されている。表1がその具体的な内容であり,これらは日本としての施策の観点からまとめられているものの,総合技術監理部門の技術士にとっても参考となろう。


 ここでは,総合技術監理に携わる技術士として,事業における持続可能性(Sustainability)に関する課題を考えていきたい。持続可能性は、持続可能な開発(持続可能な発展とも訳されており、この方が先進国の実態には近い。)の前提となる概念ではあるが、経済、社会、環境などが将来にわたって適切に維持・保全され、発展できることを意味している。

 なお、事業の有期のプロジェクト(開始と終了が計画されている。)とは異なり、ある程度の継続性を前提としたまとまりとして捉えるべきものである。例えば,一定の地域における水循環システムを対象とした上下水道事業などが該当する。また,水供給のみに限定し上水事業として捉えることもできるし,水処理事業,浄水場維持管理事業などとして限定的に捉えることも可能である。ただし,例えば個々の浄水場建設や高度水処理システム更新工事などは一過性のプロジェクトであり、ここでの事業の定義とは異なる。その他にも事業としては,河川維持管理事業,道路交通安全事業,電気自動車事業,医薬品事業など様々なものが挙げられよう。


 こであなたがこれまでに経験した、あるいはよく知っている事業を1つ取り上げ、その事業が目指している社会二-ズの充足や目的とする成果物の創出などを考えたとき,事業が対象としている経済,社会,環境などの持続可能性について,その課題と解決の方向性について、総合技術監理の視点から以下の(1)~(4)の問に答えよ。ここでいう総合技術監理の視点とは,「業務全体を俯瞰し,経済性管理,安全管理,人的資源管理,情報管理,社会環境管理に関する総合的な分析,評価に基づいて,最適な企画,計画,実施,対応等を行う」立場からの視点をいう。また,表1の内容は施策を示したものであり,参考として利用することは推奨するものの,この中から項目を選択することを誘導しているものではない。

 なお,書かれた論文を評点する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを特に重視する。


表1  8つの優先課題と具体的施策

①あらゆる人々の活躍の推進
■一億総活躍社会の実現
■女性活躍の推進
■子供の貧困対策
■障害者の自立と社会参加支援
■教育の充実  
②健康・長寿の達成
■薬剤耐性対策
■途上国の感染症対策や保健システム強化, 公衆衛生危機への対応
■アジアの高齢化への対応  
 
③成長市場の創出,地域活性化,科学技術イノベーション
■有望市場の創出
■農山漁村の振興
■生産性向上
■科学技術イノベーション
■持続可能な都市  
④持続可能で強靭な国土と質の高いインフラ の整備
■国土強靭化の推進・防災
■水資源開発・水循環の取組
■質の高いインフラ投資の推進  
   
⑤省・再生可能エネルギー,気候変動対  策,循環型社会
■省・再生可能エネルギーの導入・国際展 開の推進
■気候変動対策
■循環型社会の構築  
⑥生物多様性,森林,海洋等の環境の保全
■環境汚染への対応
■生物多様性の保全
■持続可能な森林・海洋・陸上資源  
   
⑦平和と安全・安心社会の実現
■組織犯罪・人身取引・児童虐待等の対策 推進
■平和構築・復興支援
■法の支配の促進  
⑧SDGs実施推進の体制と手段
■マルチステークホルダーパートナーシップ
■国際協力におけるSDGsの主流化
■途上国のSDGs実施体制支援
 

(1)本論文においてあなたが取り上げる事業の内容を次の①~③に沿って示せ。
  (問い(1)については、問い(2)と併せて答案用紙3枚以内にまとめよ。)
①事業の名称及び概要を記せ。概要については,事業の対象範囲についても明示すること。
②この事業の目的(充足すべき社会ニーズ)を記せ。
③この事業の成果物(創出すべき製品,構造物,サービス,技術など)を記せ。    

(2)あなたが取り上げた事業が対象として経済,社会,環境などの持続可能性の観点からの課題について,総合技術監理の視点から,次の①~③に沿って示せ。 (問い(2)については,問い(1)と併せて答案用紙3枚以内にまとめよ。)
①この事業における「過去の課題」(過去においては課題であったものの,何らかの対応が取られ現在では影響が小さいと考えられている。)を2つ取り上げ,詳述せよ。
②この事業における「現在の課題」(現在において影響が大きい若しくは緊急性が高いと考えられている。)を2つ取り上げ,詳述せよ。
③この事業における「将来の課題」(現在においては影響が小さく緊急性も低いものの,事業環境の変化や技術革新の進展などにより将来課題になると考えられる。)を2つ取り上げ,顕在化の要因となる将来の変化を含めて詳述せよ。

  (3)あなたが取り上げた事業の「現在の課題」について,その課題の背景及び部分的にでも解決又は達成する方策について,次の①~②に沿って示せ。  (問い(3)については 答案用紙を替えて1枚以内にまとめよ。)
 ①(2)②で詳述した「現在の課題」のうち1つを取り上げ,その課題の背景について,事業を行っている組織内部における制約,外部の事業環境の制約を区別して記せ。
 ②この課題に対して,事業を継続する中で部分的にでも解決又は達成する方策と,部分的にでも解決又は達成された際の事業の状況について記せ。解決又は達成には,事業を取り巻く内外の制約を技術発展により乗り越えること,社会的なコンセンサスの下で内外の制約を除外すること,などの方向性が考えられるが,そのような方向性にも留意して記すこと。  

(4)あなたが取り上げた事業の「将来の課題」について,その課題を部分的にでも解決又は達成する方策について,次の①~③に沿って示せ。 (問い(4)については答案用紙を替えて1枚以内にまとめよ。)
①(2)③で詳述した「将来の課題」のうち1つを取り上げ、その課題が顕在化した状況を想像し,その顕在化により引き起こされる影響を記せ。なお,ここでは的確に課題と影響を設定することを要求しており,未来予測の確からしさは採点対象としない。
②将来においてこの課題が顕在化した場合,部分的にでも解決又は達成するための方策を記せ。
③将来においてこの課題が顕在化することを前提とした場合,部分的にでも解決又は達成するために現在から検討若しくは実施すべき方策を記せ。

考察

平成29年度の問題の特徴を次に列記します。

○青本が販売中止になってから初めての記述式試験である。
○自分が経験した、あるいはよく知っている事業
○設問が4段階構成である
○答えるべき項目が多い
○事業の有期のプロジェクト(開始と終了が計画されている。)とは異なり、ある程度の継続性を前提としたまとまりとして捉えるべきものを対象としている
○課題に対する解決策を要求されていない
○総合技術監理部門についての説明が書いてある
○序文に採点基準が書かれている

 この問題は問いが(1)~(4)まであり、その各々の問いに対して①~③の順序での解答を求められています。去年の問題とほぼ同じです。基本的にこの流れに沿って答えていけば合格します。

 取り上げる事業はある程度、持続継続性があるものに言及され、短期的もしくは有機的な期間をもうけたプロジェクトを対象としていない。

 事業継続について考えさせる問題であり、従来の青本の考え方というよりも、ISO31000リスクマネジメントについて考えさせる問題です。青本の販売が中止になったのもここに理由があり、総監が青本の考えよりもISO31000の考え方に文部科学省がシフトしているからです。

 去年は技術の進展が事業に及ぼす影響を考えて行けば良かったのですが、今年は事業継続の観点から考えなければなりません。単発的な事業を繰り返している民間事業よりも、例えば水道維持事業、水道維持事業、道路管理事業などのようにどちらかといえば公務員向きの試験になります。

 経済,社会,環境などの持続可能性の観点からリスクを抽出しないといけないので、ストーリーの作り方が一番の焦点になります。

 まず継続を前提とした事業を選定し、継続を脅かすリスクを抽出し、5つの管理に落とし込むような答案を書く必要があります。

模範論文①

(1)本論文において私が取り上げる事業の内容について
①事業の名称及び概要
事業の名称:砂防施設の維持管理事業。
概要:砂防施設(地すべり施設、急傾斜地、砂防堰堤))の維持管理を行う。また、新規の砂防施設の建設も行う。事業の地域は山口県とする。
②この事業の目的
 事業費が年々削減されている中で、経済性に優れ、かつ効果的な対策を行うことにより、砂防施設の構造物のライフサイクルコストを低減させる。
 砂防施設の機能を保持させることにより、施設付近の住宅及び住人の命を守ることが目的。また、できる限り被災者を出さないような対策を考える。
③この事業の成果物
 成果物は以下のとおりである。
・砂防施設構造物の位置、規模、変状状況が把握できるデ-タベ-ス。
・砂防施設の維持管理計画策定書、補修技術のデ-タ
・避難のポイントが記載されているハザ-ドマップ
 ハザ-ドマップを利用した避難技術の構築
(2)私が取り上げた事象が対象としている持続可能性の観点からの課題について
①この事業における「過去の課題」
1)既存の明確な危険個所での対策の実施。
明確な危険個所では対策工が終了しており、安全が確保されている。地すべり地帯での対策はおおむね終了している。突発的な豪雨がない場合は安全である。
2)被災箇所の抽出
 砂防基礎調査で危険個所が概ね把握されている。
 危険個所に基づきハザ-ドマップの作成が行われている。
 ハザ-ドマップを見ることにより、危険な個所を把握できる。
②この事業における「現在の課題」
1)突発的な豪雨に対して対策ができない
突発的な豪雨が発生した場合、深層崩壊が発生するが、これらの大規模崩壊について対策ができていない。
2)ハザ-ドマップの情報の利用ができていない
避難方法の観点からのハザ-ドマップの利用ができていない。
 避難情報が伝わらず被災する場合がある。
 高齢者及び幼児は逃げ遅れが生じ、負傷する場合が多い。
③この事業における「将来の課題」
1)構造物の老朽化
 将来において、既存構造物の老朽が考慮される。
少子高齢化時代に突入し、補修工事を行う施工業者が減少することから、施工を行う人員が確保できない。
2)維持管理点検者の不足
 点検技術の伝承が行われていない。点検者及び補修設計者が育っていない。
 したがって、維持管理点検ができなくなる。
(3)取り上げた現在の課題について
①現在の課題の背景について
取り上げる現在の課題は、「ハザ-ドマップの情報の利用ができていない」
1)組織内部における制約
 突発的な豪雨に対する構造物の対策ができない。現行の設計基準では、突発的な豪雨に対して、被災を防ぐことができる施設の構築が困難である。
2)外部の事業環境の制約
 不景気であることから、税収が減少し、事業費が不足する。
 したがって、全ての箇所の砂防施設の補修工事、対策工事を行うことができない。

1)部分的な解決及び達成する方策
 ハザ-ドマップの説明会・ワークショップを行い、どこが被災するのか、避難経路の情報について地元民同士が共有する。また、避難訓練を行い、避難の役割分担を決定しておく。
 豪雨情報、災害警戒情報の発令についての情報について、把握できるように周知徹底する。2)解決又は達成された際の事業の状況
 避難すべき情報を把握していることから、地元住民が自助公助の精神で避難を行うことができることから、被災者が減少する。
 砂防施設の機能的が不十分でも、被災する人間は減少する(人的被害は最小限にすることができる)。
(4)将来の課題について
1)取り上げた将来の課題
・構造物の老朽化
①顕在化により引き起こされる影響
 構造物の老朽化が進行すると、所定の機能を満足することができなくなる。
したがって、大規模な災害が発生した場合、砂防施設の構造物が崩壊し、死者が増大する恐れがある。
 構造物の老朽化する施設が増大して、補修費用が不足する恐れがある。
②将来において課題が顕在化した場合の解決又は達成するための方策
 被災する場所の近くに人家がある、公共施設がある箇所で、大規模な災害が発生する場所等については、優先的に対策を行うようにする。
優先順位をつけて、補修対策工を行っていく。
③将来において、課題が顕在化することを前提とした場合、部分的にでも解決又は達成するために現在から検討もしくは実施すべき方策
1)補修技術を習得した人材の育成
補修技術を習得するための講習会の参加を行い、診断技術、補修技術の知識を深める。
2)また、少子高齢化により、人材不足が発生することが起こることから、診断業の効率化等を図るため、最新の診断技術の習得を行う。 
3)構造物点検個所をデ-タベ-ス化しておき、補修対策を行うべき優先順位決定根拠資料とする。以上

模範解答②

(1)取り上げる事業の内容
①事業の名称及び概要
a.事業の名称=A市水道事業
b.事業の内容=本業務はA市水道事業(計画・建設・運用)を行なう。水道施設の多くは老朽化が進んでおり、漏水事故が発生している。また、人口減少から料金収入が減少している。職員の高齢化が進んでおり、技術の継承も進んでいない。
c.事業の対象範囲=A市の水道事業の計画・建設・運用である。
②事業の目的
・水道事業の目的は、安全な水道水を安定的に需用者に供給することである。そのため、事業の持続性が強く求められている。
③成果物
・水道事業の成果物は、市民へ安全な水道水を安定的に供給することである。また、水道水としての水質、水量、水圧等を確保する必要がある。そのため、水道水の品質(経済性管理)、コスト(経済性管理)、市民への水質等の情報開示(情報管理)及び漏水事故防止による環境負荷の低減(社会環境管理)を確保する必要がある。
(2)取り上げた事業の持続可能性の観点からの課題
①過去の課題
a.水道水の品質の確保
・以前の浄水処理は、塩素のみであったため、水道水の品質が課題であった。その後、高度処理を導入したことで、水道水の品質を確保することができた。
b.水道の普及率の確保
・以前は水道の普及率が50%であり、市民の半分にしか水道水を供給することができなかった。その後、人材育成、他の事業体の情報収集を行い、マニュアルの作成・費用の確保を行なうことで、水道の整備が進み、現在では普及率が97%となった。
②現在の課題
a.施設の老朽化に伴う事故の発生
・A市の水道事業は施設の老朽化が進んでいるが、事後保全での対応を行なっているため、漏水事故が発生し、断水等が発生している。そのため、料金収入の減少(経済性管理)、断水時の早期対応(経済性管理)、技術継承(情報管理)が進んでいないため、人材育成が困難(人的資源管理)であり、更新の情報を意思決定者に伝える仕組み作りが構築されていない。(情報管理)また、断水のよる事故の発生(安全管理)、漏水のよる環境負荷(社会環境管理)が課題である。
b.地震発生時の危機管理不足
・A市水道事業の耐震化率は30%と低いため、大規模地震が発生すると事業の持続性が困難となる。また、施設の老朽化も進んでおり、大規模な被害が発生する恐れがある。しかし、A市水道事業ではBCPが策定されておらず、資機材や薬品等の購入先が1社であるため、サプライチェーンの寸断により事業の持続性が困難となる。
③将来の課題
a.人口減少、人口構造の変化による担い手不足
・今後、日本の総人口は約8000万人まで減少すると予測されている。また、人口構造が変化し、老人人口が増加し、生産人口が減少するため、水道事業の担い手が不足する恐れがある。水道事業は、人口が減少しても施設は必要となるため、担い手不足により、事業の持続性が困難となる恐れがある。
b.気候変動による水源水量の減少、大規模渇水の発生
・地球温暖化による気候変動により、水源水量が減少し、大規模渇水が発生する恐れがある。A市の水道事業はBダムを主要な水源としているため、気候変動により大規模渇水が発生すると事業の持続性が困難となる可能性がある。また、今後10年間で熟練技術者が大量退職するが、渇水を経験した熟練者のナレッジを活用する仕組みが構築されていない。
(3)現在の課題の背景及び課題解決又は達成する方策
①取り上げる現在の課題と背景
a.現在の課題=地震発生時の危機管理不足
b.組織内部の制約=職員10名、高齢化が進んでいる。給水車2台
c.外部の事業環境の制約=施設は老朽化している。施設資機材や薬品の調達先は1社である。
②課題に対して解決又は達成する方策とその際の状況
a.課題を解決又は達成する方策
1)BCPの策定(安全管理)
・BCPを策定し、平常時に訓練することで、危機管理対応を行なう。
2)資機材・薬品等の購入先を複数確保(経済性管理)
・購入先を複数確保し、サプライチェーンの寸断を防止する。
3)危機管理時の情報の一元化(情報管理)
・危機管理時の情報を一元化し、意思決定者に伝える仕組みを構築する。
4)環境アカウンタビリティー(社会環境管理)
・日頃から需用者に環境アカウンタビリティーを行なう。
b.課題が解決・達成された際の事業の状況
・上記の対策を行なうことで、危機発生時においても給水が確保でき、事業の持続性が確保できる。
(4)将来の課題を解決又は達成する方策
①将来の課題と課題の顕在化により引き起こされる影響
a.将来の課題=人口減少、人口構造の変化による担い手不足
b.課題の顕在化により引き起こされる影響
・将来の人口減少・人口構造の変化により、老人人口が増加し、生産人口は減少するため、水道事業の担い手が不足する。また、担い手が減少するため、残業や過重労働が発生すれ恐れがある。
②課題を解決又は達成するための方策
1)AIによる省人化・省力化
・浄水場の運転等をAIが行なうことで、省力化や省人化が可能となる。
2)高齢者や女性の活用(経済性管理)
・AIを活用することで、高齢者や女性を活用し、担い手不足を解消する。
3)テレワーク等の柔軟な働き方の導入(安全管理)
・テレワークを導入することで、多様な働き方が可能となり、水道事業への働き手を増やす。③課題を解決・達成するために現在から検討若しくは実施すべき方策
1)ナレッジマネジメントの構築(情報管理)
2)省力化・省人化可能な施設への更新(経済性管理)
3)人材育成システムの構築(人的資源管理)   以上

模範論文③

(1)本論文で取り上げる事業
事業の名称、概要
 名称は「道路インフラにおける防災事業」である。事業概要は、橋梁、トンネル、盛土や切土法面などの道路構造物の新設、または構造物が老朽化していた場合の維持管理などを行う。事業の目的
 良質な道路インフラを安全かつ経済的に整備し、道路インフラを国民に提供することで、我が国の持続可能な発展に資することを目的としている。特に地方部において、道路インフラは非常に重要で、必要不可欠な事業であると考える。
事業の成果物
 この事業により、利便性かつ安全性が高い道路インフラが成果物として、国民に提供される。
(2)事業における持続可能性からの課題
①この事業における「過去の課題」
①-ⅰ)労働災害の多発
 建設業において、昔から労働災害が多く発生し、安全管理の面からも大きな問題であった。しかし現在では、リスクアセスメントの考え方を取り入れた危険予知活動を実施している。また、法整備が進み、安全対策の実施が厳格化された。これらの対策により、労働災害の発生件数は減少傾向にある。
①-ⅱ)建設副産物による環境汚染
高度成長期においては、道路インフラの建設工事に伴い発生する産業廃棄物が、全て適正に処理されていたとは言い難い。不法投棄や焼却処分など、環境面で大きなマイナス効果が生じていた。しかし現在では、建設リサイクル法の施行により、産業廃棄物の適正処理が厳格化された。そのため、現在では影響が少ない課題であると考える。
②この事業における「現在の課題」
②-ⅰ)建設業従事者数の減少
3K(きつい、汚い、危険)と言われるマイナスイメージに加え、近年急速に進行している少子高齢化の影響により、建設業への入職者が減少傾向にある。このため、業界の人員不足、及び事業における後継者不足が大きな課題である。
②-ⅱ)環境に配慮した工法の開発
 従来は安全性・経済性・機能性を考慮して、施工方法、工種が決定されていた。しかし現在では、それに加えて環境に配慮した工法が強く求められている。(例:コンクリートを使用しない法面工)
 従来工法よりも、景観などの環境性に優れ、かつその他の性能も従来工法と比べ遜色ない新工法が強く求められており、大きな課題である。
③この事業における「将来の課題」
③-ⅰ)維持更新費用の増大
 高度成長期に建設された道路インフラが、一般的な構造物の寿命とされる建設後50年を迎える。以降に建設された構造物も順次老朽化が進むことで、将来的にインフラの維持更新費用が莫大な金額になっていくと予想される。限られた予算の制約の中で、道路インフラの維持更新を適切に進めていくことが、将来の大きな課題である。
③-ⅱ)加速する自動化施工への対応
 前述の通り、建設業界の労働者不足が予想されている。それに対応して、建設機械のIoT技術の進歩により、建設機械の自動化技術が進み、施工の省力化が求められていく、と予想する。しかし、建設業界では高齢化が進む中で、このような高度技術に対応する人材育成の確保は非常に難しく、将来大きな課題である。

(3)「現在の課題」の背景及び解決のための方策
①課題の背景及び内部・外部の制約
 ここでは、(2)②-ⅰで取り上げた、建設業従事者数の減少について詳述する。
 建設業従事者減少の背景には、外部の事業環境の制約として、少子高齢化、組織内部における制約として3Kと呼ばれるマイナスイメージを払拭するために必要な人件費、広告宣伝費の増加が挙げられる。
 人員が不足していて事業規模の確保が難しい中で、経済性管理と人的資源管理がトレードオフの関係にあり、この解消が課題である。
②課題解決のための方策と、その際の事業の状況
 課題解決のためには、やはり若年労働者確保のための人件費・広告宣伝費の増加は必要であると考える。その際に発生する支出の増加には、定年を迎える労働者の非正規雇用への移行による人件費減で対応する。
 この方策により、人員の絶対数を確保することは難しいが、若者を一定程度雇用することは可能と考える。 その後は、ベテラン労働者から若年労働者への知識・技術の継承を進めながら、適正な人員、事業規模を維持していくことが求められる。
(4)「将来の課題」解決のための方策
 ここでは、(2)③-ⅱで取り上げた、加速する自動化施工への対応について詳述する。
①課題が顕在化することで引き起こされる影響
 前述した少子高齢化の影響のため、建設業界に若年労働者を一定程度入職させることは可能だが、労働者数全体を増加させることは難しい。このような要因と建設機械のIoT化により、自動化施工が強く求められると予想される。その時に若年労働者の確保ができていない業者は、このような高度技術に対応できず、淘汰されていくと予想する。
②課題を解決するための方策
 硬度な自動化施工技術を活用するためには、若年労働者に新技術教育を受けさせることが必要と考える。建設業の知識だけでなく、IoTなどの情報技術が今後必要になるが、教育費用増加とのトレードオフが発生する。このトレードオフの解消には、自動化施工を習得、実用化した際に見込まれる収益増を見込むことで対応する。
③現在から検討・実施すべき方策
 自動化施工に急に対応しようとしても、人件費や教育費の負担が非常に大きくなる。そこで、将来を見越して、現在から新技術の積極的活用、社員教育(Off-JT)を少しずつでも進めることが重要と考える。以上

不合格論文①

(1)私が取り上げる事業の内容
①-1.事業の名称
 無人化施工による砂防堰堤築造工事
①-2.事業の概要および対象範囲
a)概要
 水無川流域の警戒区域において、監視所の監視のもと、無人化施工(無線による重機の遠隔操縦とGPS機器を使用した施工管理)による堰堤築造工事(コンクリート量約15,000m3)である。


コメント
長期的視点に立った事業ではなく、自分が行った短期的な業務について事業を設定しています。このあと5つの管理に言及していますが、この時点で不合格が決まっています。必ず長期的な視点に立った事業について言及してください。この論文のように短期的な事業だと即不合格です。




b)対象範囲
 水無川流域で延長約5km、幅50~60mの範囲である。
②事業の目的
 火山噴火により、水無川流域に数十万m3の不安定な土砂が残置された状態であった。大雨により土石流が発生した場合や、火山状態の急変により発生した火砕流が下方の市街地に甚大な被害が発生してしまう。このため、土石流や火砕流から住民の生命や財産を守るべく無人化施工によりコンクリート堰堤を築造するものである。
③事業の成果物
 無人化施工により構築したコンクリート砂防堰堤
(2)取り上げた事業の課題
①過去の課題
a)高額なシステム(経済性管理の視点)
 遠隔操作システムの開発コストも高額であり、無人化施工においての需要も多くなかったため、導入において高額なシステムが課題であった。
b)精通した技術者の不足(人的資源管理の視点)
 無人化施工の需要も多くなかったため、当システムに精通している技術者が少なかったことが課題である。
②現在の課題
a)MG・MCの導入(情報管理の視点)
 MG(以下、マシンガイダンスシステム)やMC(以下、マシンコントロールシステム)の導入により、従来の無人化施工に比べて、掘削勾配や重機自身の高さ等の情報を得られるようになった。これにより、その情報を得て、いかに施工に反映させることができるかが課題である。
b)MG・MC導入による品質(経済性管理の視点)
 MGおよびMCの導入により、従来はカメラ車の映像に頼り施工していたのが、バックホウのバケット角度やブルドーザーによる敷均し高さ等、システムからの様々な情報により施工精度が向上する。これにより、どのように無人化施工における品質管理基準を設定するかが課題である。
③将来の課題
a)AI技術の普及による安全性の確保(安全管理の視点)
 AI技術の無人化施工への導入により、現在よりも無人化施工の災害復旧等の適用範囲は拡がっていくと考える。ただし、作業員と近接して稼働する場合では、誤作動や不具合が発生した際に重機が暴走することが考えられる。このため緊急停止するような安全確保が課題である。b)オペレーターの技術低下(人的資源管理の視点)
 AIが普及してくると、オペレーターが現場で重機操作する機会が減ってくる。このことはオペレーターの技術の研鑽場所が減ることになり、育成ができなくなる。このため、将来オペレーターの技術低下が課題である。

(3)「現在の課題」の背景と解決又は達成する方策
以下に、MG・MCの導入における課題の背景を記す。
①-1.組織内部における制約
 組織内部において、MGおよびMCに特化した技術に精通している人材は多くいない。このため技術者のスキル向上を図ることが必要である。
①-2.外部の事業環境の制約
 少子高齢化や生産年齢層減少による建設技術者自体が不足している。
②-1.課題解決又は達成する方策
 外部の専門家等による教育訓練(人的資源管理)が重要である。しかし、このことはコスト増となるため、経済性管理と相反する。しかし、可能な限り人的資源管理にリソースを投入することが重要と考える。
②-2.課題解決又は達成された際の事業の状況
 技術者のスキル向上は、当システムを有効に機能させることだけでなく、災害復旧だけでなく建設現場の多岐にわたり有効に活用できると考える。


(4)「将来の課題」の解決又は達成する方策
 以下に、AI技術の普及による安全性の確保の課題について記す。
①課題の顕在化により引き起こされる影響
 AIの自動制御システムに不具合が発生した場合、重機が制御不能となり、事故発生の可能性がある。
②課題解決又は達成するための方策
 方策としては、重機作業範囲に人が入るとアラーム発生するシステムや重機緊急停止システムの信頼性向上等である(情報管理の視点)。これらシステムの向上はコスト増となり経済性管理と相反してしまう。しかし、可能な限り、情報管理にリソースを投入することが重要である。
③課題解決又は達成するための検討、実施すべき方策
 重機だけの作業であれば、人的災害は発生することはないが、細かい箇所においては、作業員を伴った作業が発生する。ただし、現時点で機械に絶対はないので、システムダウンした際にも安全を確保するため、作業員ロボットの検討および導入が必要と考える。
作業員ロボットはコスト増となるため、このことは、安全管理と経済性管理において相反してしまう。しかし、安全確保は優先すべきと考え、検討、導入すべきである。                    -以上-

不合格論文例②

(1).事業の内容について
①.事業の名称及び概要について
①-1.事業の名称
 橋梁長寿命化事業


コメント
橋梁の長寿命化ということで、長期のスパンを考えた事業ではなくどちらかと言えば、今後期待される事業になります。橋梁の長寿命化とかにせずに、「●●市における道路整備事業」などのように簡単に長期的視点がある事業にするべきです。この論文もこの段階で不合格が決まっている論文です。




①-2.概要
 1970年代に集中的に築造された道路橋を適切に維持管理(点検・維持補修・更新)していく事業である。 また、この事業は、経済・社会等において適切に維持管理し、使用し続ける必要がある事業である。
①-3.対象範囲
 市が所有する道路橋
②.この事業の目的
 道路橋を適切維持管理することにより、国民に対して安全・安心に道路サービス(車両・歩行者)を提供するものである。
③.この事業の成果物
 橋梁長寿命化(維持補修工事等)を行うことにより、国民が安全・安心に道路サービスを受ける事が可能となる。 また、橋梁長寿命化(点検・維持・補修)を行うことにより、この事業で使用した技術(工法・材料)を他の構造物の維持補修等へ転用することが可能となる。
(2).持続可能性の観点からの課題について
①.この事業における「過去の課題」について
①-1.経済性管理(QCDのバランス)
 過去の橋梁補修では、床板の陥没やコンクリート片落下等、壊れた部分だけを補修する事後保全的対応であったことが課題であった。(影響小)
しかし、補修を行っていたため、その後の補修費用は掛かり増しになるものの、大規模な損傷とならず、サービス提供は可能であった。
①-2.情報管理(意思決定)
 過去の橋梁補修では、維持補修の際、補修データ(劣化状況・使用材料等)が整理できておらず、時期補修の際に情報を活用し、意思決定ができないことが課題であった。(影響小) しかし、補修は行っているので、補修費用は掛かり増しになるものの、サービス提供は可能であった。
②.この事業における「現在の課題」について
②-1. 経済性管理(QCDのバランス)
 現在の課題として、過去に補修した箇所が他の補修箇所と比べて早期に劣化したことにより、予定外に補修の必要性が生じていることが課題である。(緊急性大)
 過去の補修の際、長期的な視点でアセットマネジメントの考え方によるライフサイクルコストを考慮した施工を行っていなかったことが問題である。
②-2.人的資源管理(人の活用)
 現在の課題として、昨今技術者(設計・施工)が不足していることから、橋梁補修・点検・維持管理の技術者についても不足していることが課題である。(緊急性大)
 現在の補修計画の際、過去の補修方法や技術を把握している技術者が少なく、さらに技術力も不足しており、再補修する際の設計と実際の施工方法が異なることが問題である。
③. この事業における「将来の課題」について
③-1.経済性管理(QCDのバランス)
 現在、橋梁補修では、コンクリート部のヒビ割れ等に注入・充填工法や、シート貼付等が工法としてある。しかし、将来、技術革新により、注入工法の際の空隙やシート裏の空隙・劣化等が判明し、再補修する必要性が生じる事が課題である。
その際、再度シートや注入剤を撤去する必要が生じることが課題である。これにより費用がかかり増しになる事が問題である。
③-2.情報管理(意思決定)
 現在、橋梁補修では、数多くの補修方法が存在しており、補修材料や補修方法等の情報が必要となることが課題である。
将来において補修材・工法等が技術革新することにより、当初必要でなかった情報(材料・施工方法)が必要となり、補修計画・施工の判断が難しくなる場合が生じることが問題である。(3).取り上げた「現在の課題」について
①.課題の背景等について
①-1.課題
 橋梁補修箇所が早期に劣化し、補修する必要性が生じている事が課題である。
①-2.背景(事業内部による制約)
 過去に補修する際、補修補強が必要な橋梁が数多く、工程に余裕(突貫工事)が無かった事による品質の確保が十分でなかったことが問題である。(経済性管理)
①-3.背景(外部の事業環境の制約)
過去に補修する際、補修施工を行う技術者が数多く存せず、技術力不足であったことにより、不慣れな作業となり十分な品質管理となっていなかったことが問題である。(人的資源管理)②解決又は達成できる方策等について
②-1.解決又は達成する方策(人的資源管理)
補修工法の品質管理においては、高度なスキルを持つ者から技術の継承を行うため、OJT・OFF-JTにより、知の共有化をはかりスキルアップすることにより、部分的に解決できると考える。
しかし、技術継承については、研修等の費用がかかり増しとなるのもの、品質の確保された施工を行うためにも、費用は必要であると考える。(経済性管理とのトレードオフ)
 (4).取り上げた「将来の課題」について
①-1.将来の課題について
 補修材料や補修方法等の情報が必要となること
①-1.顕在化により引き起こされる影響
 橋梁補修箇工法・材料等、橋梁台帳等に保存しているものの、将来的にこの情報では新しい補修工法の際意思決定が出来ない可能性が生じる可能性がある。
例えば、シート接着のプライマー等やヒビ割れ注入剤等の混合割合等現在残す必要が無いデータであっても将来必要となる場合が発生すると考えられる。
②.部分的に解決・達成する方策
 橋梁補修情報を将来に残すことにより、将来の補修計画・施工に必要なデータを活用でき、部分的にでも解決できると考える。
③.現在から実施すべき方策
 橋梁補修情報を将来に残すために、情報収取部門を創設する。
これにより、将来の補修技術に必要と思われる情報を広く収集し、必要なデータを厳選し、整理・分析することが可能となり、将来の工法選択等の意思決定に活用できると考える。(情報管理)
 ただし、情報部門の設立には費用が掛かるものの、将来における誤った補修方法を選択することを考えると必要と考える。(経済性管理とのトレードオフ)                             以上 

再考察

 総監の題材を考える場合に、事業や業務及びプロジェクトの時間軸を意識してください。時間軸とは過去、現在、未来の流れになります。

 そして今回の事業はこの時間軸が非常に長くなります。過去とは戦後から10年ぐらい前を想定してください。現在は過去10年から今後10年先ぐらいです。未来とは10年後から永遠の未来までです。

 このように長いスパンだと事業の内容がかなり大雑把になります。○○県の水道整備事業だとか、○○県の道路維持管理事業だとかになります。今回の筆記試験ではこのスパンが短くなったらダメです。不合格論文ではこれが○○川の無人化施工とか橋梁の維持管理とかになっています。自分が経験した業務で比較的工期が長いものを想定しています。そうではなく自分が生まれる前から続いている事業であり、今後も半永久的に続くであろう事業です。

 事業の規模などは細かく考えてはいけません。大雑把でいいのです。自分の専門の業界のこれまでと今後の展望みたいなものを考えてください。

 総監とは過去の失敗を学び、現状から遠くない未来を想定し、良からぬことが発生しないかを検討します。良からぬことが起きるのであれば、現状をどのように対応するかを考えさせる部門です。そのため、現在、過去、未来の時間軸をどのようなスパンで考えるかが重要になってきます。

 時間軸を長くするか短くするか、内容を大雑把にするか細かく想定するかを意識して事業、業務、プロジェクトの概要を設定してください。

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