問題
我が国では,技術革新や「新たな日常」の実現など社会経済情勢の激しい変化に対応し,業務そのものや組織,プロセス,組織文化・風土を変革し,競争上の優位性を確立するデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進を図ることが焦眉の急を要する問題となっており,これはインフラ分野においても当てはまるものである。
加えて,インフラ分野ではテジタル社会到来以前に形成された既存の制度・運用が存在する中で,デジタル社会の新たなニーズに的確に対応した施策を一層進めていくことが求められている。
このような状況下,インフラへの国民理解を促進しつつ安全・安心で豊かな生活を実現するため,以下の問いに答えよ。
( 1 )社会資本の効率的な整備,維持管理及び利活用に向けてデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
( 2 )前問( 1 )で抽出した課題のうち,最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 )前問( 2 )で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
( 4 )前問( 1 ) ( 3 )を業務として遂行するに当たり,技術者としての倫理,社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。
参考：日本技術士会
解答
１ ． 社 会 資 本 の 整 備 に お け る Ｄ Ｘ 推 進 の た め の 課 題
（ １ ） 建 設 分 野 へ の 信 用 の 獲 得
建 設 業 に は 、 ３ Ｋ や 談 合 と 言 っ た 負 の イ メ ー ジ が 残っ て い る 。 従 っ て 、 国 民 の 安 全 ・ 安 心 や 社 会 経 済 活 動に 重 要 な イ ン フ ラ 整 備 を 担 っ て い る に も か か わ ら ず 、国 民 か ら 信 用 ・ 理 解 さ れ て い な い こ と も 事 実 で あ る 。 今 後 、 Ｄ Ｘ 化 と い っ た 新 た な 取 り 組 み を 推 進 す る ため に は 、 社 会 資 本 整 備 へ の 国 民 の 理 解 と い う 観 点 か ら 、建 設 分 野 へ の 信 用 と 信 頼 を 回 復 す る こ と が 課 題 で あ る 。
（ ２ ） 労 働 集 約 型 か ら の 転 換
建 設 業 で は 、 一 品 受 注 生 産 で あ る た め に 労 働 集 約 型と な っ て お り 、 多 く の 生 産 プ ロ セ ス で 人 手 に 依 存 し てい る 。 こ の た め 、 現 状 の ま ま Ｄ Ｘ 化 を 推 進 す る こ と は困 難 で あ る 。 そ こ で 、 機 械 化 ・ 自 動 化 を 進 め る と い う 観 点 か ら 、調 査 ・ 測 量 ・ 設 計 ・ 施 工 ・ 維 持 管 理 の 全 て の 建 設 プ ロセ ス に お い て 、 Ｉ Ｃ Ｔ を 全 面 的 に 活 用 し た 資 本 集 約 型へ の 転 換 を 図 る こ と が 課 題 で あ る 。
（ ３ ） 制 度 ・ ガ イ ド ラ イ ン の 整 備
建 設 分 野 で は 、 今 ま で 長 く 社 会 資 本 を 整 備 し て き た過 程 で 、 我 が 国 の 法 律 や 社 会 経 済 状 況 に 合 致 す る よ う 、制 度 や 基 準 を 整 備 し て き た 。 し か し 、 こ れ ら を 今 後 のＤ Ｘ 推 進 に う ま く 適 用 で き な い 懸 念 が あ る 。 そ こ で 、 技 術 基 準 の 整 備 の 観 点 か ら 、 イ ン フ ラ の ＤＸ 推 進 に 合 う 制 度 や ガ イ ド ラ イ ン を 整 備 す る こ と が 課題 で あ る 。
２ ． 最 重 要 課 題 と 解 決 策
上 記 で 挙 げ た 課 題 か ら 、 （ ２ ） 労 働 集 約 型 か ら の 転換 が 最 重 要 課 題 と 考 え て い る 。 こ の 課 題 を 達 成 す る こと で 、 社 会 資 本 整 備 に お け る Ｄ Ｘ 化 を 効 率 的 に 推 進 でき る 効 果 が あ る か ら で あ る 。 以 下 に 解 決 策 を 示 す 。
（ １ ） 調 査 ・ 測 量 ・ 設 計 に お け る ３ 次 元 デ ー タ の 活 用 現 状 の 調 査 ・ 測 量 で は 、 複 数 の 作 業 員 で 行 わ れ て いて 時 間 と 人 手 に 依 存 し て い る 。 そ こ で 、 3 次 元 デ ー タ を 短 時 間 で 大 量 に 取 得 で き るド ロ ー ン を 活 用 し て 調 査 ・ 測 量 を 行 う 。 取 得 し た デ ータ と 設 計 3 次 元 Ｃ Ａ Ｄ デ ー タ を 重 ね 合 わ せ る こ と で 、自 動 的 に 土 工 等 の 数 量 計 算 を 行 う こ と が で き る よ う にな り 、 Ｄ Ｘ 化 を 推 進 す る 効 果 が あ る 。
（ ２ ） Ｉ Ｃ Ｔ 建 設 機 械 の 活 用 に よ る 施 工 例 え ば 現 状 の 土 工 事 で は 、 機 械 運 転 手 の 他 に 検 測 等で 補 助 作 業 員 を 必 要 と し 人 手 に よ っ て い る 。 そ こ で 、 3 次 元 デ ー タ を 建 設 機 械 に 設 定 し て 施 工 を行 う こ と で 、 自 律 ・ 遠 隔 運 転 と い っ た Ｄ Ｘ 化 へ つ な がる 効 果 が 期 待 で き る 。
（ ３ ） ロ ボ ッ ト ・ Ａ Ｉ に よ る 点 検 ・ 診 断 イ ン フ ラ の 維 持 管 理 に お い て は 、 現 状 は 人 に よ る 目視 点 検 と 調 書 作 成 が 行 わ れ て い る 。 そ こ で 、 ロ ボ ッ ト に よ る 点 検 を 行 う 。 取 得 し た 写 真デ ー タ か ら Ａ Ｉ が 自 動 に 調 書 を 作 成 す る こ と で 、 技 術者 に よ る 最 終 判 断 を サ ポ ー ト し 、 更 な る Ｄ Ｘ 化 に つ なが る 効 果 が 期 待 で き る 。
３ ． 波 及 効 果 、 懸 案 事 項 と 対 応 策
（ １ ） 波 及 効 果 建 設 会 社 の 海 外 展 開 に 向 け た 競 争 力 強 化 の 波 及 効 果が あ る と 考 え る 。 環 境 に や さ し い イ ン フ ラ 整 備 、 維 持管 理 ま で 見 込 ん だ ラ イ フ ル サ イ ク ル コ ス ト の 安 さ が 我が 国 の 質 の 高 い イ ン フ ラ 輸 出 の 特 徴 で あ る 。 そ れ に 加え 、 Ｄ Ｘ 化 を 推 進 す る こ と が 更 な る 強 み と な る 。
（ ２ ） 懸 案 事 項 と 対 応 策 土 木 技 術 者 の 中 に は 、 デ ジ タ ル に 強 く な い も の が 少な く な い 。 技 術 者 が 不 足 し て Ｄ Ｘ 化 が 普 及 し な い 懸 念が あ る 。 対 応 策 と し て 、 Ｉ Ｔ 分 野 と 協 働 し て Ｄ Ｘ 化 を推 進 す る 。 官 民 一 体 と な っ た 教 育 ・ 研 修 の 充 実 を 図 る 。 ま た 、 国 や 都 道 府 県 の 大 型 事 業 で の み Ｄ Ｘ 化 が 普 及し 、 地 方 に 普 及 し な い 懸 念 が あ る 。 対 応 策 と し て 、国 ・ 都 道 府 県 に よ る 市 町 村 へ の 支 援 を 行 う 。
４ ． 業 務 遂 行 の た め の 要 点 ・ 留 意 点
（ １ ） 倫 理 の 観 点 Ｄ Ｘ 化 の 推 進 に よ り 、 安 心 安 全 な イ ン フ ラ 整 備 を 効率 的 に 実 施 で き る よ う 技 術 力 を 高 め て い く 。
（ ２ ） 社 会 の 持 続 性 の 観 点 ネ ッ ト の セ キ ュ リ テ ィ ー 上 の 脆 弱 性 を 克 服 し な が ら 、Ｄ Ｘ が 持 続 的 に 進 歩 し て い く よ う 技 術 力 向 上 を 継 続 しな け れ ば な ら な い 。 以 上
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