令和2年度技術士建設部門必須科目 A判定の論文(その5)

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問題

Iー2我が国の社会インフラは高度経済成長期に集中的に整備され,建設後50年以上経過する施設の割合が今後加速度的に高くなる見込みであり,急速な老朽化に伴う不具合の顕在化が懸念されている。また,高度経済成長期と比べて,我が国の社会・経済情勢も大きく変化している。
こうした状況下で,社会インフラの整備によってもたらされる恩恵を次世代へも確実に継承するためには,戦略的なメンテナンスが必要不可欠であることを踏まえ,以下の問いに答えよ。
( 1 )社会・経済情勢が変化する中,老朽化する社会インフラの戦略的なメンテナンスを推進するに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し,その内容を観点とともに示せ。
( 2 ) ( 1 )で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1っ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 ) ( 2 )で示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれの対策について述べよ。
( 4 ) ( 1 ) ( 3 )を業務として遂行するに当たり必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。参考:日本技術士会

解答

(1)社会インフラの戦略的メンテンナンスの課題抽出
課題①:メンテナンスに係るコストの縮減
 老朽化インフラのメンテナンス時期一斉到来により、維持管理費等の増加が見込まれる。しかし、現行の事後保全型修繕は損傷後の修繕でコスト高となっている。今後も高コストな事後保全では、老朽化インフラと比例し維持管理費等が膨大となる。従って事後保全型修繕を如何に改善し低コストを図るかが課題である。
課題②:地方自治体の支援
 現在、膨大な数のインフラ施設が存在し橋梁等では、多数を地方自治体が管理している。しかし地方自治体は、施設数と相反して土木職員が不足している。土木職員増員の必要性は認識されているが、職員確保・育成には時間を要し、早急性が必要な修繕に対し即時効果とはならない。従って地方自治体の土木職員不足を補うための支援を如何に行うかが課題である。
課題③:メンテナンスの効率化
 増加する老朽化インフラに対し、5年に一度の定期点検が義務化されている。しかし現行は、点検員不足や、点検結果から評価する早期・緊急措置段階に応じた設計・施工の人手不足による維持管理効率が悪い。人手が主体の維持管理は手間や時間が掛かり、老朽化インフラの補修等に遅れが生じる。従って如何に効率的なメンテナンスを実施するかが課題である。

(2)最重要課題と解決策
課題③を最重要課題とする。理由は、人口減少は避けられない問題であり、それを補う効率化が強く求められると考えるためである。
解決策①:新技術の活用
 メンテナンスの生産性を向上させる目的で、ICT等の活用により業務の効率化・高精度化を図る。具体的には、点検や点検記録は、ドローン、センサー等の新技術を活用する。更には、AIを活用した施設劣化予測や3Dプリンターによる無人化施工等を対策とする。以上の対策にて効率化が図られ作業時間の短縮、人件費削減等の相乗効果が期待できる。但し、新技術は専門的知識が必要なため、操作簡略化や教育等を要する。
解決策②:新基準・新規格・新制度の導入
 新技術の定着を常態化しメンテナンス効率化を図るためには、新基準・新制度の導入が必要である。具体的には、新技術対応のマニュアル策定や、修繕を実施し易いプレキャスト規格の制定、更には点検と補修の同時施工に対応した制度を導入する。解決策①と②を連動させ、新技術へ移行し戦略的効果が期待できる。
解決策③:補修頻度低減に資する新工法・材料の開発
 補修頻度を抑制してライフサイクルコストの縮減を図る。具体的には、現場環境(海岸・常風・日照等)と施工技術のマッチングを図りプレキャスト工法やFRP・炭素繊維等の新技術を活用する。現場環境に合う補修・材料により施設の長寿命化が図られライフサイクルコスト縮減と経済的維持管理が期待できる。

(3)新たなリスクとその対応策
 5GやAI等の新技術導入には多額費用を要し、使いこなせる人材の確保が必要である。地域によっては生産性向上効果に格差が生じメンテンナンス品質にバラツキが発生する。従って格差により地域の孤立や地域活力の低下を招き、地方住民の生命・生活を守れないリスクが生じる。その対策は、以下の点とする。
・異業種連携によるワークショップや講習会等により新技術や新基準に対応できる人材を育成する。
・PPP・PFI等の民間の経営・技術・資金等を活用する。更には、新技術対応メンテナンスに対する助成金制度を創設する。

(4)業務を遂行するに当たり必要となる要件
 (1)から(3)で述べたメンテナンス対策を、我々技術者が国民の立場に立って行うに当たり必要な要件は、第一に「公衆の利益優先」である。技術者個人や企業の利益を優先するために、談合やデーター改ざんを行うとメンテナンスの品質や安全性が低下し、最終的には、国民の生命・財産が脅かされる。第二に「社会の持続可能の確保」である。無計画な地盤改良や樹木の伐採を行うと、現在及び将来に残すべき生態系の低下を招く。以上の行為は国民の技術者、業界に対する不信を招き信用失墜につながる。よって技術者は、常に技術者倫理に則って事業を行わなければならない。以上

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この記事を書いた人

横浜すばる技術士事務所代表
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)
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