はじめに:技術士二次試験は「頭の良さ」だけで決まらない
技術士二次試験は、合格率が約10%前後(総合技術監理部門ではさらに低い年もある)という、国内でも屈指の超難関国家資格です。そのため、受験生の中には「自分は頭が良くないから合格できないのではないか」「東大卒のようなエリートでなければ一発合格は無理だ」と思い込んでいる方が少なくありません。
しかし、長年多くの受験生を指導してきた経験から断言します。
技術士二次試験の合否に、いわゆる「頭の良し悪し」はほとんど関係ありません。
もちろん、最低限の専門知識や勉強量を確保することは大前提ですが、それらは正しい戦略と努力次第で誰でもカバーできます。では、何度も不合格を繰り返してしまう人と、スムーズに合格していく人の決定的な違いはどこにあるのでしょうか?
その答えは、能力の差ではなく「性格の良し悪し」にあります。
「自分の人間性を否定された」と感じる方もいるかもしれませんが、これは倫理的な善悪の話ではなく、「試験の本質を素直に受け入れ、相手(試験官)の立場に立てているか」というビジネスコミュニケーションにおける資質の話です。
本記事では、なぜ「性格の悪い人(=ひねくれている人、独りよがりな人)」が技術士試験で落とされるのか、そして合格するために今日からどう性格(マインド)を変えていくべきなのかを、具体的な事例を交えて徹底的に解説します。
参考:日本技術士会
技術士試験における「性格の良さ」とは?
まず、本記事における「性格の良し悪し」の定義を明確にしておきます。辞書を引くと、性格とは「その人特有の感じ方、考え方、行動のしかた」とありますが、技術士試験において合否を分ける性格の本質は「素直さ」と「相手への配慮(客観性)」の2点に集約されます。
- 性格が良い人(合格する人):
- 物事を素直に受け止めることができる。
- 試験官が何を求めているかを常に考えて行動できる。
- 自分の書きたいことではなく、相手が「書くべき」と指定したことを書く。
- 性格が悪い人(不合格を繰り返す人):
- プライドが高く、ひねくれた捉え方をしてしまう。
- 「自分がどう見られるか」「自分の知識をどうアピールするか」ばかりを考える。
- 試験官の質問を無視して、自分の言いたいこと(持論)を押し通す。
何回受験しても A判定に届かない論文を量産してしまう人は、無意識のうちに後者の「ひねくれた性格」が解答用紙に滲み出てしまっているのです。
【具体例】「正確」な人と「不正確」な人の決定的な差
技術士二次試験の記述式試験(論文)や口頭試験の本質を理解するために、一つのシンプルな例を挙げてみましょう。
仮に、試験で「この紙に、あなたの【名前・住所・電話番号・マイナンバー】を書きなさい」という問題が出題されたとします。
不合格になる人(性格がひねくれている人)は、以下のように書いてしまいます。
神奈川県横浜市○○区○○町1丁目○○-1
090-XXXX-XXXX
横浜すばる
1234-5678-9012
一方、一発合格する人(性格が素直で良い人)は、以下のように記述します。
・名前:横浜すばる
・住所:神奈川県横浜市○○区○○町1丁目○○-1
・電話番号:090-XXXX-XXXX
・マイナンバー:1234-5678-9012
なぜ前者は落とされるのか?
前者の書き方でも、書かれている内容自体に間違い(不正確さ)はありません。しかし、読み手(試験官)に対する配慮が完全に欠落しています。
これでは、どれが名前で、どれがマイナンバーなのか、試験官がいちいち推測しながら読まなければなりません。
自分にとっては「見れば分かるだろう」と思っていることでも、他人の目から見れば不親切極まりない文章です。
■性格の悪い人: 聞かれた要素をただ「羅列」して、相手に理解させる労力を押し付ける。
■性格の良い人: 聞かれた要素が、相手に「ストレスなく、一発で伝わるように」構造化して答える。
技術士の論文試験でも、全く同じことが起きています。問題文で要求されている「課題」「解決策」「波及効果・懸念事項」などを、自分の書きたい順番でダラダラと書く人は、どれだけ技術的に素晴らしい内容を書いていても「不合格」になります。なぜなら、試験官に苦痛を与える論文だからです。
合格者と不合格者の特徴比較
技術士二次試験における「合格する人」と「不合格になる人」の思考パターンの違いを、以下の表にまとめました。ご自身の普段の勉強姿勢や、過去の受験時のマインドと照らし合わせてみてください。
合格する人と不合格になる人の思考・行動パターンの比較
| 評価項目 | 合格する人(性格が良い人) | 不合格になる人(性格が悪い人) |
| 論文の執筆スタンス | 試験官が「求めていること(設問の要求)」を正確に書く。 | 自分が「書きたいこと」「得意な専門知識」をアピールする。 |
| 文章の読みやすさ | 採点者がストレスなく瞬時に理解できる構成・レイアウト(表や箇条書きの活用)にする。 | 専門用語や難しい表現を多用し、文脈の繋がりが分かりにくい自己満足の文章になる。 |
| 口頭試験での意識 | 試験官の表情や顔色を見ながら、「伝わった」と確信できるまで丁寧に、かつ簡潔に答える。 | 「何分間で回答すればいいか」という形式的な時間枠や、自分の都合ばかりを気にする。 |
| 指導への向き合い方 | 講師や合格者からの指摘を「あ~そうなんだ」と素直に受け入れ、すぐに修正する。 | 「自分のやってきた業務はこうだから」と言い訳をし、自分のスタイルを崩さない。 |
| 不合格時の捉え方 | 「自分の伝え方が悪かった」「どこが相手に響かなかったのか」と自省する。 | 「試験官は分かっていない」「問題の質が悪い」と他人のせいにする。 |
このように比較すると、合格のために必要なのは「高い偏差値」ではなく、「徹底的な相手目線(カスタマーサクセスの精神)」であることがお分かりいただけるはずです。
口頭試験で露呈する「自分本位」な性格
筆記試験をなんとか通過しても、口頭試験で落とされてしまう人がいます。
その典型的な原因もやはり「性格」にあります。
模擬口頭試験の場で、よく受験生から次のような質問を受けます。
「試験官の質問には、何分(あるいは何秒)くらいで回答するのが正解ですか?」
一見、熱心な質問に見えますが、実はこの質問自体が「自分本位な性格」を露呈しています。「自分がどのくらいの時間で話せばいいか」という自分の都合しか考えておらず、「どうすれば試験官に正確に伝わり、納得してもらえるか」という相手の視点が抜け落ちているからです。
口頭試験の回答時間に一律の正解はありません。
試験官が求めている答えをズバリと返し、相手が「なるほど、理解した」という表情をすれば、たとえ15秒で終わってもそれが正解です。逆に、試験官が怪訝な顔をしているのに、用意してきた想定問答を2分間話し続ければ、それは完全にNGです。
常に試験官の表情や反応(うなずき、目線など)を観察し、コミュニケーションのキャッチボールを行うこと。これができる「素直で柔軟な性格」の持ち主が、口頭試験をサラリと一発でクリアしていきます。
技術士二次試験に合格したければ「日常の性格」を変えろ
ここまで読んで、「試験の時だけ、相手目線のいい子ちゃんを演じればいいや」と思った方がいるかもしれません。しかし、それは不可能です。
技術士二次試験の筆記試験は、膨大な文字数を限られた時間内にすべて「手書き」で論述しなければならない、非常に過酷な試験です。解答用紙1枚(600文字)を埋めるのに、構成を考えながら書くと約30〜40分しか猶予がありません。
人間は、極限のタイムプレッシャーやストレスに晒されると、必ず「普段の自分(素の性格)」が出ます。日常的に自分のことしか考えていない人は、本番の焦りの中で必ず「自分の書きたいことだけを殴り書きした論文」を書いてしまいます。
だからこそ、合格するためには、試験勉強の時だけでなく、常日頃の日常生活や仕事の進め方から、思考の癖(性格)を修正していく必要があるのです。
今日からできる性格改善のアプローチ
1.仕事のメールや報告書を見直す: 相手が一読して理解できる構成になっているか?主語と述語は明確か?を常に自問自答する。
2.他人の指摘を拒絶しない: 業務で上司や同僚、あるいはクライアントから指摘を受けた際、感情的に反論するのではなく、「なぜ相手はそう感じたのか」をまず受け入れる。
3.「正しさ」への執着を捨てる: 「自分の技術力の高さ」を証明しようとするのをやめ、「求められている役割を果たす」ことに集中する。
日常のコミュニケーションが変われば、あなたの書く論文の質は劇的に変わります。試験官にとって「読みやすく、納得感のある、技術士にふさわしい論文」が自然と書けるようになるのです。
まとめ:正しい戦略と素直なマインドで、難関を突破しよう
技術士二次試験の合格率は約10%であり、100人に3人程度しかストレート合格できないような難関試験と言われることもあります。その難易度は「東大合格に匹敵する」と表現されるほどです。
しかし、恐れる必要はありません。この試験は、「正しい戦略」を知り、それを「素直に実行できる性格」さえあれば、必ず合格できる試験だからです。
多くの不合格者は、合格するためのノウハウや論文の書き方を「知らない」か、あるいは知っていても自分のプライドや偏見が邪魔をして「素直に実践していない」だけなのです。
まずは、自分の性格が試験官に対して「素直」であるか、常に自問自答してみてください。そして、独りよがりの勉強で行き詰まっていると感じたら、信頼できる指導者や実績のある教材の教えを、まずは100%そのまま吸収してみることから始めてみましょう。
あなたのマインド(性格)が変われば、解答用紙に向かう視点が変わります。ぜひ「徹底的な相手目線」を身につけ、技術士という最高峰の称号を勝ち取ってください。



