5.4 危機管理
危機管理とは、危機(crisis)に対する対策のとり方に共通性を見出し、それを体系化することを目的とした比較的新しい学問体系である。 危機とは様々な緊急事態(emergency)から発生し得るものであり、自然災害と人災に大きく分けることができる。自然災害は、外部援助を必要とする大規模な環境破壊のことであり、不可抗力による自然現象である。地震・水害・落雷・地すべりなどが含まれるが、自然災害の被害は必ずしも不可避なものではないという点が重要である。人災とは、放火、爆発、誘拐など個人または集団の故意的活動によって直接引き起こされる緊急事態のことである。このような災害は、それらを引き起こした人間の手に負えなくなるような事態にまで発展することもある。また別の見方をすれば、危機を起こさないために担保すべき安全には、設備の故障やヒューマンエラーの防止などのセーフティと警備活動などが含まれるセキュリティの2つがある。
危機管理の対象となる不測事態(contingency)とは、人の死傷、物的損傷、財産喪失、組織に打撃を与える潜在的な事態のことを指す。不測事態が発生もしくは差し迫っだときに現れる一つの特定状態が危機である。不測事態のカテゴリーを以下に示す。
(1)組織内の経営問題(労働争議、労働災害など)
(2)組織外と関係する経営問題(欠陥商品、スキャンダルなど)
(3)産業災害(爆発、火災、放射能漏れ、危険物質の流出など)
(4)自然災害(地震、水害、台風など)
(5)犯罪(テロ、脅迫、誘拐など)
(6)その他(国際問題、戦争などの組織だけでは対応できない危機や複合危機)
危機管理では組織トップ層の強い意思も重要であるが、効果的に実行するためには、危機管理活動の基本要素を理解し、計画を立案する必要がある。特に、事前作業段階で最も重要なのは、各種のマニュアル作成である。マニュアルに関して重要な点を整理すると次の3つに集約される。
(1)危機毎の時系列を作成する
(2)対策組織を明確に定める
(3)復旧対策をマニュアル化する
5.4.2 危機管理活動の基本要素
危機管理活動には大きく分けて8つの基本要素があり、それぞれを効果的に実施する必要がある。
(1)最悪の事態に備える
(2)危険と好機会の認識
(3)危機対応の定義と管理
(4)環境の利用
(5)ダメージの防止
(6)効果的解決
(7)平常への復帰
(8)再発防止
5.4.3 危機管理マニュアル
危機管理マニュアルは、危機時に要求される緊急時対応を円滑に実施するために策定するものであり、危機時の組織や個人の活動を補完するものである。危機管理マニュアルでは、危機管理計画マニュアルと緊急時活動チェックマニュアルの2種類を整備する必要がある。危機管理計画マニュアルは、危機に関する対応を検討しながら自社の体制の問題点、十分性を検討していくために作成するものである。そのためには、想定されるリスクを明確にし、そのリスクに対して、対応方針及び対応目標を明らかにしておくことが大切である。また、緊急時活動チェックマニュアルは、実際の危機が発生した時に、自分の活動をチェックしながら参考にできる、危機管理マニュアルを簡略化したチェックマニュアルである。
危機管理計画マニュアルを作成する際のガイドラインを示す。
(1)危機管理計画マニュアルを記述する際の前提
(2)マニュアルの体系
危機管理計画マニュアルは合理的な体系で整備されていなければならない。
(3)マニュアルの内容
マニュアルの内容は分かりやすく、手早く十分に理解できるものでなくてはならない。
(4)マニュアルの実効性
(5)マニュアルの更新
(6)教育・訓練
参考:日本技術士会
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