はじめに:7回目の受験で掴んだ総監合格の本質
私は令和6年度に総合技術監理部門(以下、総監)に合格しました。受験回数は7回目でした。
このHPの講座資料を購入するまでは、全く準備せずに受験していただけなので、当然、手応えもなく合格するはずがありませんでした。資料を購入したのは5月でした。その年は試験までの期間が短く、十分な準備ができないまま受験することになり、結果は不合格でした。
ただ、講座資料を読んでいたおかげで、それまでとは違った手応えがありました。答案が合格するレベルにあるとは思えませんでしたが、「総監試験という相手」がなんとなく理解できた状態で臨めたことは、それまでとの決定的な違いでした。
そして翌年、講座資料購入後2回目の試験で合格を果たしました。この講座の資料がなければ、いまでも「とりあえず受験しているだけ」の状態が続いていたと思います。
令和8年度の筆記試験合格発表は11月上旬です。口頭試験は12月から令和9年1月にかけて行われ、日程は日本技術士会から個別に通知されます。早い日程に当たった方は、発表から口頭試験まで1ヶ月ほどしかありません。
私は筆記試験の合格発表の日、朝6時にパソコンで日本技術士会のHPを開き、受験番号を確認しました。以前から「筆記試験に合格したら横浜すばる技術士事務所の口頭試験講座を購入しよう」と決めていたため、すぐに購入手続きを行い、資料をダウンロードしてその日の朝の通勤時間に目を通しました。
合格発表で番号があった方、本当におめでとうございます。
私は自分の記述式の内容について「技術的レベルが低すぎて恥ずかしい」と思っていました。それでも通ったということは、総監が求めている本質を理解できていたからだと確信しています。
口頭試験は、専門技術力の確認の場ではありません。総監を理解して、実際に実践できる応用力があるかを確認する場です。今さら分厚い参考書を最初から読み直す必要はありません。限られた時間で何をすべきか、私の実体験をもとにお伝えします。
惜しくも番号がなかった方へ
次の筆記試験は例年どおりなら来年7月です。「まだ先だ」と思われるかもしれませんが、今年の答案を記憶が鮮明なうちに復元しておくことを強くお勧めします。何を書いたか、どの管理をトレードオフの軸にしたか、文字数はどう配分したか。半年も経つと思い出せなくなります。翌年に同じ失敗を繰り返す方の多くは、前年の自分の答案を手元に残していません。択一式も同様に、間違えた問題がどの管理分野だったかを記録しておくだけで、翌年の勉強方針が明確になります。
私自身、合格前年の筆記はB判定でした。講座資料のおかげで手応えを感じられたため、不合格が分かった翌日から翌年に向けたリベンジ対策を始めました。
一般部門も同様ですが、特に総監試験は「総監という枠組みを理解するもの」であり、単に暗記勉強するものではありません。5つの管理という枠組みは、すでに日頃の実務に落とし込まれているはずですから、それを適切に言語化すればよいだけです。
択一式を除く筆記試験と口頭試験の対策は、試験の意味を深く理解したうえで正しい準備を進めることに尽きます。以下では、筆記試験に合格された方に向けた「口頭試験までの1ヶ月の使い方」を具体的に解説します。
口頭試験の全体像と配点基準を押さえる
まずは試験制度の全体像を確認しておきましょう。『技術士第二次試験実施大綱』には、試問事項と試問時間が次のように定められています。
口頭試験の試問事項と試問時間
| 区分 | 試問事項 | 試問時間 |
| Ⅰ(必須科目に対応) | 「総合技術監理部門」の必須科目に関する技術士として必要な専門知識及び応用能力 | 20分 |
| Ⅱ(選択科目に対応) | 1. 技術士としての実務能力 2. 技術士としての取組姿勢 | 20分 |
※選択科目に関する口頭試験は、総合技術監理部門以外の技術部門の口頭試験にて別途行われます。また、選択科目が免除される者は必須科目のみの試問となります。
試問時間は20分ですが、受験者の能力を十分に確認できるよう、10分程度延長される場合があります。すでに他の技術部門の技術士資格をお持ちの方は選択科目が免除されるため、「区分Ⅰ」の20分間のみを受けることになります(総監受験者の大半が該当します)。免除されない方は、区分Ⅰと区分Ⅱの両方を受験します。
試問事項別の配点内訳
| 対象区分 | 試問項目 | 配点 |
| Ⅰ(必須科目に対応) | 1. 経歴及び応用能力 | 60点満点 |
| Ⅰ(必須科目に対応) | 2. 体系的専門知識 | 40点満点 |
| Ⅱ(選択科目に対応) | 1. マネジメント、評価 | 30点満点 |
| Ⅱ(選択科目に対応) | 2. コミュニケーション、リーダーシップ | 30点満点 |
| Ⅱ(選択科目に対応) | 3. 技術者倫理 | 20点満点 |
| Ⅱ(選択科目に対応) | 4. 継続研さん | 20点満点 |
選択科目が免除される方は、必須科目に対応する100点満点での合否判定となります(免除されない方は合計200点満点)。免除されない方の「区分Ⅱ」は一般部門の口頭試験と同内容ですので、別途対策が必要です。本記事では、大半の方が該当する「必須科目の試問対策」に絞って解説します。
試験官が見ている評価の本質
必須科目100点のうち、知識を問う配点は「体系的専門知識」の40点です。私の実感を踏まえると、専門知識の判定は、口頭試験の冒頭で行われる「経歴と業務内容の詳細」の説明の中で行われています。その説明内容が不十分だと判断された場合にのみ、知識を確認するための追加質問が投げかけられます。
大綱にも以下のように明記されています。
「口頭試験は技術士としての適格性を判定することに主眼を置き、記述式問題の答案と業務経歴を踏まえて実施するもので、筆記試験の繰り返しにならないよう留意する」
つまり、すでに一般部門に合格している方であれば、体系的専門知識を一から勉強し直す優先度は高くありません。
総監の口頭試験は、知識量を測り直す場ではありません。「提出された経歴票や答案をもとに、この受験者が総監の俯瞰的な視点を持って実務を遂行しているか」、あるいは「単に用語を散りばめた答案で筆記を抜けてきただけなのか」を確かめる場です。
対策の中心は知識の詰め込みではなく、「自分の実務経験を総監の視点から自分の言葉で論理的に説明できるようにすること」にあります。
最初に実践すべきこと:「総監が必要とされる背景」の言語化
対策を始めるにあたり、最優先で取り組むべきなのがキーワード集冒頭にある「総合技術監理が必要とされる背景」の理解です。多くの受験生はキーワード一覧の暗記に終始し、冒頭の解説文を読み飛ばしてしまいがちです。
筆記試験では背景を概念として理解していれば書けましたが、口頭試験では「自らの業務に引き寄せて、自分の言葉で語れるレベル」にまで昇華させておく必要があります。
キーワード集が示す背景の本質
キーワード集の冒頭には、要約すると以下のような主旨が述べられています。
■現代の科学技術は巨大化・総合化・複雑化し、利便性の一方で重大事故や環境破壊といった負の影響のリスクも飛躍的に高まっている。
■新たな事業や製品開発では、品質、コスト、安全、環境負荷、職場環境、情報管理、知的財産などの課題が同時多発する。
■これらを個別の管理手法で対処していては限界がある。
■だからこそ、業務全般を俯瞰的に見渡し、複数の要求事項をバランスよく統合して判断する能力が求められる。
■単なる現場作業の「管理」ではなく、上位視点から全体を監督・統括する意味を込めて「監理」の文字が使われている。
自身の業務へ落とし込む具体例
重要なのは文章の丸暗記ではなく、自身の日常業務に置き換えて語ることです。地盤調査会社で技術部を統括する私の立場であれば、以下のように言語化できます。
■調査の精度を極限まで上げれば設計の不確実性は減るが、工期と原価(コスト)が膨らんでしまう。
■若手社員に担当させれば育成につながるが、納期が迫っていればベテランが自ら手を動かした方が早い。
■社内でデータを一元共有化すれば将来の案件に役立つが、その仕組み作りは現場担当者の作業時間を圧迫する。
これらは個別最適で見れば正しい判断でも、全体最適としては同時に成立しません。だからこそ、誰かが全体を俯瞰し、明確な基準を持って優先順位を判断する必要があります。
面接官の質問パターンは多岐にわたりますが、終着点は常に「あなたは業務を俯瞰し、相反する要求に対して総合的な判断を下せているか?」という一点に集約されます。「背景」を自分の言葉で語れる状態を作っておけば、どんな角度からの質問にもブレずに対応できます。
合格を掴む1ヶ月の実践スケジュール
限られた準備期間を最大効率で駆け抜けるため、私が実践した4週間のスケジュールをまとめました。
| 時期 | 取り組むべき対策内容 |
| 合格発表当日 | 口頭試験講座の資料を入手し、試験の全体像と評価ポイントをインプットする |
| 第1週 | ・「総監が必要とされる背景」を自社実務に落とし込んで整理する ・「業務経歴」と「業務内容の詳細」のプレゼン原稿を作成する ・管理技術間のトレードオフ事例を洗い出す ・想定問答を作成し、最初の音声録音を行う |
| 第2〜3週 | ・作成した音声を移動時間等に繰り返し聴き込む ・声に出してスムーズに回答できるまで反復練習を行う |
| 第4週 | ・模擬口頭試験を受講し、客観的なフィードバックを得る ・指摘事項をもとに回答を修正し、最終の音声練習で仕上げる |
模擬口頭試験は、ある程度自分の中で原稿を固め、声出し練習を経た段階で受講するのが最も学習対効果を高められます。
口頭試験を突破するための具体的対策法
「業務経歴」と「業務内容の詳細」の口頭説明を磨き上げる
配点の6割(免除者の場合)を占める「経歴及び応用能力」において、業務説明の成否は合否を直結して左右します。
■3分版と5分版の2パターンを用意する試験官から「これまでの経歴を○分程度で紹介してください」と指示された際、聞き漏らした場合は「〇分程度でよろしいでしょうか?」と必ず確認してください。指定時間を超過しないよう腕時計を意識し、時間内に収める配慮姿勢そのものがマネジメント能力の評価につながります。
■専門技術の成果ではなく「総監の視点」で語り直す経歴票に記載した内容を棒読みしてはいけません。「工期内に要求品質を確保した」という説明は、一般部門の技術論であって総監の回答ではありません。「品質確保のために何をトレードオフにしたのか(人員を増やしたのか、別工程を後ろ倒しにしたのか、仕様変更を発注者と協議したのか)」、そして「その際に選ばなかった管理項目へのリスク手当はどう講じたのか」を明確に言語化します。
異なる管理技術間の「トレードオフ事例」を蓄積する
総監試験で最も避けるべきなのは、原価と工期、品質とコストといった「経済性管理の中だけで完結するトレードオフ」に終始してしまうことです。試験官が見たいのは、性質の異なる管理領域が衝突したときの統合判断力です。
| 組み合わせ | 実務で生じるトレードオフの具体例 |
| 安全管理 × 経済性管理 | 安全対策の追加措置が、工程遅延や直接原価の増大を招く |
| 人的資源管理 × 経済性管理 | 若手への業務付与による育成と、納期厳守のための確実な業務遂行が相反する |
| 社会環境管理 × 経済性管理 | 環境負荷低減の要求水準を引き上げることで、初期投資や材料費が高騰する |
| 情報管理 × 人的資源管理 | 情報共有プロセスの厳格化が、担当者の業務負荷増大や作業効率低下を招く |
| 安全管理 × 人的資源管理 | 現場安全を確保するための要員配置が、法令上の労働時間管理と衝突する |
各事例について、「対象業務名」「衝突した要求」「採用した判断基準」「もたらされた結果」「今振り返って別の改善策はあるか」の5要素を整理しておきます。特に「今ならどう対応するか」という振り返りは、技術者としての継続研鑽の姿勢を測る頻出の問いです。
想定問題の作成と「重点としなかった管理」への言及
質問への回答において、自らが最も注力した管理技術を熱弁できるのは当然です。総監として差がつくのは、「あえて重点を置かなかった管理へのフォロー」です。
「この業務では情報管理は対象外でした」で終わらせてはいけません。総監たるもの、全管理領域を視野に入れている前提に立ち、「〇〇の理由からリスクが顕在化する可能性は極めて低いと判断し、重点管理の対象からは外したが、最低限△△の予防措置は講じて全体最適を図った」と答えられるように構成しておきます。
■自作しておくべき頻出想定問題リスト
●なぜ総監という部門が社会的に求められているのか
●当該業務において5つの管理のうち何を最重要視し、その理由は何か
●逆に、重視しなかった管理項目はどれか。なぜその判断で問題なかったのか
●業務遂行中に生じた管理技術間のトレードオフと、その際の判断基準
●当時下した判断について、現在の知見を踏まえて改善できる点はあるか
●自身の組織において、部下や後輩へどのように総監の考え方を指導・展開しているか
●技術者倫理の観点から、自組織に不都合な事象が発生した場合にどう対応するか
音声録音と反復練習による言語化の徹底
原稿が完成したら、必ずスマートフォン等で録音し、移動時間やスキマ時間に聞き流してください。頭の中では論理的だと思っていた説明も、耳で聴き、実際に口に出してみると途中で論理が破綻していることに気づきます。
原稿を見ずにすらすらと数値やキーワードが出てくるまで反復することで、本番の極度の緊張感の中でも淀みなく回答できるようになります。
盲点になりやすい「キーワード集」の口頭試問対策
口頭試験の終盤、時間に余裕があると「キーワード集に掲載されている最新用語の意味や見解」を唐突に問われるケースがあります。
私自身、本番の最終盤に専門外のキーワードを問われ、曖昧な回答をしてしまい「キーワード集にも明記されていますよね」と指摘を受けた経験があります。
すべてを完璧に記憶する必要はありませんが、キーワード集に目を通し、全く知らない用語の意味だけは一通り押さえておく必要があります。特に自分の専門部門(建設、機械、電気など)から離れた管理領域(人的資源管理や情報管理など)は盲点になりがちです。
■押さえておきたい近年の注目キーワード例
●人的資源管理: 人的資本経営、ウェルビーイング、心理的安全性
●情報管理: 生成AIと大規模言語モデル(LLM)、サプライチェーンリスク管理
●安全管理: オールハザードアプローチ、レジリエンスエンジニアリング
●社会環境管理: ネイチャーポジティブ、サーキュラーエコノミー、TNFD
おわりに:総監の思考を実務の言葉で語り尽くす
筆記試験に合格している時点で、総監に必要な技術的素養と論理的思考力はすでに備わっています。
口頭試験の20分間は、難解な技術用語を披露する試験ではありません。「複数の管理要求が衝突したとき、全体を俯瞰してバランスの取れた決断を下せる人物かどうか」を面接官と対話する場です。
準備不足のまま挑めば足元をすくわれますが、総監の思想を自らの実務経験へと落とし込み、徹底して言語化のトレーニングを積めば、確実に合格を引き寄せることができます。
最後まで万全の準備を尽くし、技術士(総合技術監理部門)の栄冠を掴み取ってください。心より応援しております
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