技術士第二次試験を受験するにあたり、「コンピテンシー」という言葉を耳にして、以下のような疑問や不安を抱えていませんか?
「コンピテンシーの8項目が抽象的で、具体的に何を求められているのか分からない」
「筆記試験の論文にどのようにコンピテンシーを反映させれば合格点が取れるのか?」
「口頭試験で試験官に伝わる業務経験の話し方が知りたい」
技術士試験は単なる暗記試験ではありません。いくら高度な専門用語を羅列しても、「技術士としての資質・能力(コンピテンシー)」が伝わらなければ不合格になってしまいます。
本記事では、日本技術士会の公式指針に基づき、コンピテンシー8項目の本質的な意味から、筆記試験の各設問・口頭試験で高評価を獲得する実践的なテクニックまで、合格実績豊富な視点でわかりやすく解説します。
この記事を最後まで読めば、試験官が何を評価しているのかが明確になり、自信を持って合格答案を書き上げられるようになります。
定義・改訂の背景と試験で重視される理由
技術士コンピテンシーは、技術者に求められる資質・能力を示す評価の基準
技術士における「コンピテンシー(Competency)」とは、技術士としてふさわしい業務を遂行するために必要な「資質・能力」を定義したものです。
単に「知識を知っている」こと(知識保有)ではなく、「現実の複雑な課題に対して、知識や経験を正しく活用し、適切な成果を出せる行動特性」を指します。
日本技術士会および文部科学省は、技術士第二次試験の合否判定において、このコンピテンシーを明確な評価基準として採用しています。知識の多寡を競うのではなく、「技術士として実務をリードできる人物かどうか」を審査するための物差しがコンピテンシーなのです。
文部科学省とIEAが示す技術の能力・専門的学識の考え方
技術士試験の制度改革の背景には、国際的なエンジニア教育・資格の標準化があります。
国際協定であるIEA(International Engineering Alliance:国際エンジニアリング連合)は、プロフェッショナルエンジニアに求められる国際標準の能力指標(Graduate Attributes and Professional Competencies:PC)を策定しています。
文部科学省の科学技術・学術審議会技術士分科会は、グローバル社会で通用するエンジニアを育成・認定するため、このIEA基準に整合させる形で日本の技術士制度を見直しました。これにより、日本国内だけでなく「世界基準で高度なエンジニアリング判断ができる技術者」を評価する仕組みが整備されました。
令和の改訂・最新年度の制度を確認し、受験する部門の問題に備える
平成31年度(2019年度)の試験制度改正により、筆記試験および口頭試験の出題体系と配点基準が大幅に刷新されました。
試験制度の改訂に伴い、試験科目は以下のようにコンピテンシーと直結して評価される構造になっています。
| 試験種別 | 科目区分 | 主に問われるコンピテンシー | 形式・配点 |
| 筆記試験 | 必須科目Ⅰ | 専門的学識、問題解決、評価、技術者倫理、コミュニケーション | 記述式(論文3枚)/ 40点 |
| 筆記試験 | 選択科目Ⅱ(Ⅱ-1) | 専門的学識、コミュニケーション | 記述式(論文1枚)/ 10点 |
| 筆記試験 | 選択科目Ⅱ(Ⅱ-2) | 専門的学識、マネジメント、リーダーシップ、コミュニケーション | 記述式(論文2枚)/ 20点 |
| 筆記試験 | 選択科目Ⅲ | 専門的学識、問題解決、評価、コミュニケーション | 記述式(論文3枚)/ 30点 |
| 口頭試験 | 総合面接 | 8項目すべて(特に技術者倫理、継続研さん、マネジメント、リーダーシップ) | 面接(約20分)/ 100点(60点以上合格) |
受験する部門(建設、機械、電気電子、衛生工学など)を問わず、全21部門で共通の評価枠組みが適用されています。
8項目を理解する前に知っておきたい、試験とコンピテンシーの関係
試験対策を始める前に、必ず理解しておくべき大原則があります。それは、「出題設問はすべて、特定のコンピテンシーを測定するために作られている」ということです。
試験官の手元には詳細な採点基準シートが存在し、「多面的な課題抽出ができているか(問題解決)」「ステークホルダーとの調整プロセスが示されているか(リーダーシップ)」といった項目ごとに採点されています。
設問の裏にある「採点官が見たいコンピテンシー」を逆算して論述を組み立てることが、最短合格の鉄則です。
技術士に求められるコンピテンシー8項目をわかりやすく解説
文部科学省が定める技術士の資質・能力(コンピテンシー)は、以下の8項目で構成されています。それぞれの定義と、試験で問われる本質を深く理解していきましょう。
技術者倫理:公衆の安全を最優先し、法令や社会の利益を守る
■ 公式の定義要約 公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮し、法令遵守、地球環境の保全、持続可能性の確保、守秘義務などの社会的責任を果たすこと。
技術者倫理は、8項目の中で最も根底に位置する資質です。利益追求や工期短縮を優先して安全を軽視する姿勢は、一発で不合格判定となります。
継続研さん:知識・技術を更新し、能力向上に必要な計画を立てる
■ 公式の定義要約 常に最新の専門知識や技術を習得し、自己の能力向上を図るために計画的かつ継続的に学習を行うこと。
技術士は資格を取得して終わりではありません。「登録後も常に技術をアップデートし続ける技術者」であることが求められます。
専門的学識:技術の背景や部門の特性を踏まえ、学識を業務に活用する
■ 公式の定義要約 選択科目および技術士部門全般に関わる自然科学、工学、専門技術の原理・原則を理解し、実務課題の解決に適切に応用できる能力。
教科書の丸暗記ではなく、「原理・原則に基づいた思考ができるか」が審査されます。
問題解決:複合的な問題の本質と課題を捉え、解決策を提案する
■ 公式の定義要約 複合的で不確実性の高い現実の問題に対し、多角的な視点から本質的な要因を特定し、複数の実現可能な解決策を提案・策定できる能力。
必須科目Ⅰや選択科目Ⅲの中心となるコンピテンシーです。
マネジメント:資源・人員・時間配分し、リスクやトレードオフに対応する
■ 公式の定義要約 業務の計画、実行、検証、改善(PDCA)の各段階において、人的・物的・資金的・情報的な資源を最適配分し、リスクへの対応や要求事項の調整を行う能力。
実務において納期・コスト・品質のせめぎ合いをどうコントロールしたかが評価されます。
● 試験での着眼点
1.リスク要因を事前に特定し、予防措置および発生時の対応策を用意しているか
2.トレードオフ(工期短縮とコスト増、安全確保と経済性など)を論理的に解決しているか
3.プロジェクトの制約条件を把握し、資源の最適配分を行っているか
評価:成果や波及効果を多角的な視点で評価し、改善につなげる
■ 公式の定義要約 業務の遂行過程および得られた成果について、目的の達成度、直接的効果、間接的・波及的な影響(正負の影響)を多面的に分析・評価し、次の改善へ反映する能力。
多くの受験生が「やりっぱなし」の論述になりがちな項目です。「新たに生じるリスク」や「副次的影響」を予測し、次の一手を打てるかが見られます。
● 試験での着眼点
1.解決策を実施したことで生じる「新たな懸念事項・リスク」を明記しているか
2.短期的成果だけでなく、中長期的なライフサイクルや環境負荷を評価しているか
3.評価結果に基づき、どのようなフィードバック・再改善を行うかを示しているか
コミュニケーション:関係者との意思疎通を図り、協働・合意を形成する
■ 公式の定義要約 口頭や文書等の多様な手段を用い、明確かつ論理的に意思疎通を図り、多様なステークホルダーと効果的な連携や協働を行う能力。
筆記試験では「論理的で読みやすい文章表現」、口頭試験では「試験官の問いに端的に答える対話力」として現れます。
● 試験での着眼点
1.主語と述語が明確で、結論ファーストの論理構成になっているか
2.専門用語をわかりやすく平易に説明する配慮ができているか
3.地域住民、発注者、異業種専門家などの異なる意見を傾聴し、共通理解を形成できるか
リーダーシップ:利害を調整し、合意形成を図りながら業務をリード
■ 公式の定義要約 多様な利害関係が存在する複合的なプロジェクトにおいて、主導的な役割を果たし、意見の調整や合意形成を行いながら、チームや組織を目標達成へ導く能力。
単なる「役職(課長・部長)」の有無ではなく、「現場でどうリーダーシップを発揮したか」を行動で示します。
● 試験での着眼点
1.対立するステークホルダー間の利害をどのように調整したか
2.チームメンバーの能力を引き出し、協働関係を構築したか
3.困難な状況において主体的に責任を持ち、方針を意思決定したか
筆記試験・口頭試験ではコンピテンシーはどう評価される?
筆記試験の論文・記述問題で問われる能力と答案の採点ポイント
筆記試験の論文採点では、各設問がどのコンピテンシーを測定しているかが厳密に定められています。
■ 必須科目Ⅰおよび選択科目Ⅲの採点対応表
設問(1):多面的な課題抽出 = 「問題解決」「専門的学識」
設問(2):最重要課題と解決策の提示 = 「問題解決」「専門的学識」
設問(3):新たに生じるリスクと対応策 = 「評価」「マネジメント」
設問(4):技術者倫理・持続可能性の視点 = 「技術者倫理」 答案全体の文章構成・見出し付け = 「コミュニケーション」
採点官は、受験生の専門知識そのものよりも、「この論述手順を通じて、技術士にふさわしい思考プロセス(コンピテンシー)が踏まれているか」をチェックしています。
設問の意図を読み、問題の本質・技術的背景・解決策を示す
答案作成で最も致命的な失点は、「設問の問いに真正面から答えていない(題意の把握ミス)」です。
例えば、設問で「技術的課題を多面的に3点挙げよ」と求められているにもかかわらず、制度面や予算面の課題ばかりを挙げたり、解決策を先走って書いてしまうと、その時点で大幅減点となります。
口頭試験で試験官がする質問と、経験に基づく回答の組み立て方
口頭試験は、筆記試験合格者を対象に行われる最終関門です。ここでは特に「技術者倫理」「継続研さん」「マネジメント」「リーダーシップ」が徹底的に試されます。
試験官からの質問に対して、単なる作業内容の報告ではなく、「自分がどのようなコンピテンシーを発揮して課題を克服したか」を主語にして語らなければなりません。
■ 口頭試験での典型質問とアピールすべきコンピテンシー
質問例:「これまでの業務で最も困難だったトレードオフと、その解決方法は?」
アピール要素:マネジメント(品質と工期・コストの調和、リスク管理の手順)
質問例:「関係者間で意見が対立した際、どのように合意形成を図りましたか?」
アピール要素:リーダーシップ・コミュニケーション(傾聴、客観的データ提示、利害調整)
質問例:「技術士法第4章の義務について、実務上どう意識していますか?」
アピール要素:技術者倫理(3者義務・2大責務の正確な理解と現場での実践)
業務経歴や詳細業務を、技術士に必要な能力の具体例として伝える
願書に記入した「業務経歴票(720文字の詳細業務)」は、口頭試験のベースとなる超重要資料です。
ここで「担当した案件の規模」や「会社の自慢話」を書いてはいけません。評価されるのは「あなた個人の行動特性(コンピテンシー)」です。
試験対策にコンピテンシーを活用する方法
出題・設問ごとに重視される評価項目を整理し、解答の視点を決める
過去問を解く際は、いきなり原稿用紙に書き始めるのではなく、「この問題で配分されているコンピテンシーシート」を意識しましょう。
■ 選択科目Ⅱ-2(実務応用問題)の視点整理
設問(1):調査・検討すべき事項 = 専門的学識
設問(2):業務を進める手順と留意点、調整事項 = マネジメント・リーダーシップ
設問(3):業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整 = コミュニケーション
このように設問とコンピテンシーを1対1で対応付けることで、論点のブレや抜け漏れを完全に排除できます。
筆記答案は課題・解決策・リスク・評価の順で論理的に書く
論文の構成テンプレートとして、以下のフレームワークを身につけることが合格への近道です。
各見出しの冒頭には結論(要点)を1行で提示し、続けてその理由と具体策を述べる「PREP法」を徹底してください。
安全・経済性・利害などの複数の条件を考慮し、総合的な対応を示す
高度なエンジニアリング実務には、必ず相反する要素(トレードオフ)が存在します。
「安全性を高めればコストと工期が跳ね上がる」 「環境に配慮すれば施工性が低下する」
このようなトレードオフに対して、「安易な妥協」ではなく「新技術の導入や工程の工夫によって両者を高いレベルで両立させた経験・提案」を記述できるかどうかが、A判定とB判定の分かれ目となります。
独りよがりやNG例を避け、具体的な行動・成果・改善を回答案に反映する
不合格答案によく見られる典型的なNGパターンを把握し、反面教師にしましょう。
| NG答案の特徴(不合格パターン) | 改善後の合格答案パターン | 関連コンピテンシー |
| 「○○の指針に従って作業した」と作業手順だけを書く | 「○○の指針を基に、現場特有のリスクを特定して独自の対策を立案した」と主体的工夫を書く | 問題解決・専門的学識 |
| 「関係者と仲良く話し合った」と感情論で終わる | 「関係者間の対立点に対し、定量的な比較データを示して合理的な合意形成を図った」と客観的手法を書く | リーダーシップ・マネジメント |
| 「課題を解決して万事うまくいった」と成功のみを書く | 「対策実施に伴い○○のリスクが生じるため、モニタリング計画を講じた」と多角的評価を書く | 評価・リスク管理 |
独学・講座・模擬試験を使った合格までの準備
受験生向け独学対策:部門や専門レベルに応じて知識・論文を準備する
独学で挑戦する場合、最初に行うべきは「過去問の分析」と「白書・専門基準の読み込み」です。
国土交通白書、エネルギー白書、ものづくり白書などの公的資料は、必須科目Ⅰや選択科目Ⅲのテーマそのものです。最新の政策課題やキーワードをインプットし、自分の専門科目における解決策と紐付ける訓練を重ねましょう。
ただし、独学の最大の落とし穴は「自分の書いた論文のコンピテンシー不足に自分で気づけないこと」にあります。
添削・指導・模擬試験で答案と口頭試験の回答を本番前に改善する
どれだけ知識を蓄えても、第三者の客観的な目で「コンピテンシーが伝わっているか」を添削されなければ、不合格スパイラルから抜け出せません。
合格水準を知り尽くした技術士指導者による論文添削や、本番さながらの模擬口頭試験を必ず活用してください。
客観的なフィードバックを受けることで、自分では気づかない論理の飛躍や独りよがりの表現を本番前に徹底的に修正できます。
講座の選択:無料案内やお申込み条件を確認し、万全の学習環境を整える
技術士受験講座を選ぶ際は、単に模範解答を配るだけの講座ではなく、「コンピテンシーに基づいた論述指導をしてくれるか」「質問や個別相談に迅速に対応してくれるか」を重視しましょう。
当サイト「Yokosuba技術士受験講座」では、各部門の出題傾向を熟知した専門指導陣が、受講生の答案をコンピテンシー評価基準に照らし合わせて丁寧に指導しています。
まずは無料メルマガや資料案内を確認し、ご自身の学習スタイルに最適な講座プランを比較・検討してみてください。
最新年度の試験制度・出題傾向を確認し、継続研鑽と受験計画に活かす
日本技術士会のホームページ(https://www.engineer.or.jp/)は、少なくとも月に一度はチェックする習慣を身につけましょう。
試験日程の発表、受験の手引きの公開、出題の変更点など、最新の公式アナウンスを漏らさず把握することが、手戻りのない受験計画を立てるための必須条件です。
技術士コンピテンシーを試験につなげるためのまとめ
8項目を丸暗記せず、実務経験と結びつけて理解する
技術士コンピテンシー8項目は、単語として丸暗記するものではありません。
「過去に自分が担当したあの現場で、利害関係者を調整したのはリーダーシップだった」
「あのとき予期せぬ地盤沈下に対応して工期を守ったのはマネジメントだった」
このように、自分自身の血の通った実務経験と8項目を結びつけることで、論文の説得力や口頭試験での回答の深みが劇的に向上します。
筆記・口頭の両方で、技術士としての思考・対応・能力を具体的に示す
技術士第二次試験のすべてのステップは、「技術士コンピテンシーを備えた人材を見つけ出すこと」を目的としています。
出題された問題に対し、技術士の目線で課題を捉え、総合的な判断を下し、明快に伝える。この姿勢を答案用紙の上で、そして面接室の試験官の前で一貫して体現してください。
日々の学習と実務の積み重ねは、必ず確固たる実力となって花開きます。合格を目指して、今日からコンピテンシーを意識した一歩を踏み出していきましょう!




