総監の口頭試験で一番重要なことは、聞かれなくても自分からトレードオフの話をすることです。
試験官が「あなたの業務のトレードオフは何ですか」と親切に聞いてくれることは、まずありません。
私が口頭試験を受験した時も、最初に経歴と業務内容の詳細を聞かれたときに「総合技術監理部門の技術者としてふさわしい点を入れながら」と条件が付いただけで、あとは普通の質問か、雑談のような問いかけでした。どの角度から聞かれても、自分から総監の設立意義に話を戻す必要があります。この記事では、そのために私がやったことを書きます。
総監の口頭試験の合格率は、概ね8割から9割台と言われます。筆記さえ通れば口頭試験は、形式的なものだと考える人もいますが、裏を返せば毎年1割から2割は落ちています。
落ちるのは技術力の低い人ではないと思います。一般部門の技術士を持ち、実務でも実績を出している人が落ちています。分かれ目は、「総合技術監理が必要とされる背景」を理解しないまま、自分が勝手に描いた総監像で高度な技術力をアピールしてしまうことだと思います。試験官が確認したいのは創意工夫ではありません。5つの管理を見渡して、その間に生じる矛盾を調整し、プロジェクトを全体最適化する能力です。
普通の質問に普通に答えると落ちる
よくある失敗は、普通の質問に普通に答えてしまうことです。
たとえば「詳細業務の中で、最も苦労した点や工夫した点は何ですか」と聞かれたとします。次のように答える人が、毎年かなりの数いるはずです。内容自体は間違っていないのですが、総監の回答としては正しくない。そこに気づけるかが合否を分けます。私も対策を始めるまでは、そうでした。
軟質な凝灰岩を挟在する流れ盤構造の切土法面であり、切土時に法面が不安定化する懸念がありました。そのため、ボーリング調査により弱層の詳細位置を把握し、地中変位観測孔を設置しました。地中変位をモニタリングしながら、必要箇所ではグラウンドアンカー工を逆巻き施工することにより、安全に切土法面の掘削が行えました。
一般部門の回答としては、大筋問題ないと思います。ですが総監技術士の回答としては、加点要素がありません。語られているのが専門技術的な工夫と成果だけで、総監の視点がどこにもないからです。
ここで、総監の口頭試験が何を見ているのかを確認しておきます。実施大綱では、試問事項は二つだけと定められています。経歴及び応用能力が60点、体系的専門知識が40点。それぞれ60%以上で合格です。一般部門のコミュニケーション、リーダーシップ、評価、マネジメント、技術者倫理、継続研さんが、独立した項目として並んでいるわけではありません。総監では平成25年度に、技術者倫理や技術士制度の項目が試問事項から外れました。
配点の6割を占める「経歴及び応用能力」で問われているのは、あなたの業務における総監技術士としての応用能力です。
繰り返します。重要なのは、一般部門で確認済みの高い技術力ではなく、総監技術士としての応用能力です。
ここで過去の技術的成果やハード技術の話を一生懸命語っても、一般部門としては優秀だが総監技術士としては認定できない、と判断される可能性が高いです。
だから鉄則は、何を聞かれても自分の用意した総監の回答パターンに脳内で変換して引き込むことです。その核になるのが、異なる管理の間で起きるトレードオフの調整です。
総監はなぜ設立されたのか
口頭試験で自信を持って答えるには、なぜ総合技術監理部門が存在するのかを理解しておくことです。それはキーワード集の1ページ目、「総合技術監理が必要とされる背景」に以下のように書かれています。
科学技術による様々な成果は日々の生活の中に浸透し…以下略(全1100字)
長文なので全て掲載しませんが、分かりにくい文章です。自分の言葉に要約し、暗唱できるようにしてください。私の対策ノートには、次のように書いてあります。
科学技術は巨大化・総合化・複雑化が進み、その恩恵も、事故や環境汚染といった社会への負の影響も従来に比して遥かに大きくなった。品質・コスト・安全などを個別に管理するのでは対応に限界があり、業務全般を俯瞰的に把握・分析し、複数の要求事項を総合的に判断して全体を監理することが必要となる。加えて、自らの技術業務が社会全体に与える影響を正しく把握し、高い倫理観に基づいて行動できる技術者が求められる。これが総合技術監理部門の導入された背景である。
まだ難しいですね。もっと易しい言葉にします。
技術が大きく、複雑になるほど、何かが起きたときに社会にあたえる影響も大きくなります。品質、お金、安全を、それぞれの担当者がばらばらに見ていては間に合いません。全体を見わたして、どれを優先するかを決められる人。しかも、その仕事が社会にどう影響するかまで考えられる人。そういう技術者が必要になったのです。
「どれを優先するかを決められる人」が、まさに「業務全般を俯瞰し全体最適化の対応ができる人」です。
私たちは普段、表1の5つの視点でプロジェクトを管理しています。
表1 5つの管理分野
| 管理分野 | 何を扱うか |
|---|---|
| 経済性管理 | 品質・コスト・納期(QCD)のバランスを保ち、生産性を上げる |
| 人的資源管理 | 人材の確保と配置、育成、労働時間の管理 |
| 情報管理 | 意思決定のための情報の収集・処理、セキュリティ、危機時の連絡体制 |
| 安全管理 | 構成員や設備、第三者の安全確保と労働災害の防止 |
| 社会環境管理 | 生産活動が外部環境に与える負荷の抑制 |
問題は、これらを担当者がばらばらに回しているだけでは、プロジェクトを完遂できないことです。たとえば大規模工事で、元請けと下請けの連絡体制が不十分(情報管理)で、有資格者も足りていない(人的資源管理)。それが引き金になって現場でクレーンが転倒し(安全管理)、船舶からの油流出という海洋汚染(社会環境管理)に至る。各管理は密接に相関していて、ひとつの欠陥が他をまとめて崩壊させます。
総合技術監理部門が設立されたのは、5つを個別に管理するのではなく、業務全体を俯瞰して把握・分析し、複数の要求事項を総合的に判断したうえで全体を「監理」する技術者が必要になったからです。
5つの管理は、その目的を突き合わせると互いに相反します。工期を詰めたいが事故のリスクが上がる。高度なシステムを入れたいが採算が合わない。この矛盾に対して重要性と優先順位を判断し、手戻りや破綻を防ぐ改善策を立てる能力が総監力です。試験官が見たいのは、この設立意義を理解して実際にトレードオフを乗り越えてきた人物かどうかだと思います。ここを押さえたうえで想定問答を作るのが、合格への近道です。
語るべきは、管理をまたぐトレードオフ
参考書には「トレードオフをアピールしましょう」とよく書かれています。ただ、ここで多くの人が勘違いをします。経済性管理の内部にあるQCDの相反を持ち出し、それを解消してみせることがアピールになる、と思い込んでしまうのです。
品質を上げればコストが増え、コストを下げれば品質が落ちる。これは確かにトレードオフで、建設業では当たり前の対立構造です。ただ、人・設備・材料・金の4Mを投入してQCDを出す生産活動は、まるごと経済性管理の中に収まっています。一つの管理の内側で閉じた話なので、5つの管理を俯瞰したという証明にはなりません。そして総監技術士に求められているのは、QCDのバランスを保つことです。解消しろとは書かれていません。
ここを取り違えて、「新工法でコストを3割削り、工期を半分にして、品質まで向上させました」と胸を張る人がいます。QCDは物理的なトレードオフですから、全部を完璧に良くすることは本来できません。私が試験官なら、以下のような突っ込みをします。
コストを大幅に削って工期も半分にして、本当に品質は落ちていないのか
その無理な計画のせいで、下請けに不安全行動や過重労働を強いたのではないか
経済性管理については、QCDのバランスを保ち、無難に収めた、と語るのが一番安全だと思います。語るべきなのは、経済性・人的資源・情報・安全・社会環境という異なる管理の間で起きる相反のほうです。監理とは個別の管理活動を監督して全体最適を図ることですから、管理の境界線で生じた対立を、俯瞰的把握・分析・総合的判断・改善策の策定で最適化したプロセスが、最大の評価ポイントになります。
準備しておきたいトレードオフの型
私が対策で最初にやったのは、自分の経歴からトレードオフの事例を洗い出して型に整理することでした。表2の3つです。型ごとに一般的な形を示してから、私が準備した例を示します。
表2 準備しておきたいトレードオフの型
| 番号 | 対立する管理 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ① | 経済性(工期)× 安全 | 建設・現場作業 |
| ② | 経済性(納期)× 人的資源 | コンサル・設計・公務員 |
| ③ | 情報(サービス・システム導入)× 経済性(コスト) | 広域業務・施工管理 |
① 経済性管理(工期)× 安全管理(労働災害防止)
一番オーソドックスで、試験官にも伝わりやすい型です。工期を守るために人員と機材を追加投入すれば、現場が混雑して意思疎通が不足し、重篤な労働災害の確率が上がります。
ここで大事になるのが大義名分です。「工期が厳しかったので安全管理と対立しました」だけでは、「なら発注者に工期を延ばしてもらえばよかったのでは」と言われます。工期が動かせない社会的な理由を先に置いて初めて、対立が避けられないものとして成立します。
私の準備した事例を紹介します。ダム堤体の掘削法面に変状が発生した例です。
掘削中に表層岩盤の抜け落ちや表層崩壊が発生し、応急対策として鉄筋挿入工とモルタル吹付工が施工されていましたが、調査着手時点でモルタル表面に亀裂が入っていました。本来なら、変状が収まったことを動態観測で一定期間確認してから調査を実施すべきですが、1年後に堤体打設が計画されていました。ダムを予定どおり供用開始させるという事業全体の要請があり、現地調査に割ける期間が限られていました。工期は私の都合でも発注者の都合でもなく、動かせないものでした。
こうして、工期を守る経済性管理と、変状が続く法面の上でボーリング作業を行う安全確保との間に、トレードオフが発生しました。改善策は4つの管理を組み合わせています。
経済性管理として、調査班を複数投入し、堤体打設の日程から逆算するバックワードスケジューリングで工程を組みました。
安全管理として、法面の自動定点観測を続け、作業中止と避難の基準値を事前に設定して、測定結果で判断しました。KY活動とTBMも徹底しています。
人的資源管理として、社内の技術者に応援を要請しました。着任してすぐ力を発揮できるよう、現地の状況、地質、作業上の留意点をまとめた資料を事前に配布し、赴任後は実地教育を行いました。品質確保にも効いています。
情報管理として、調査結果の整理は現地班ではなく事務所の別の技術者に担当させました。工程表はクラウド上で日々更新し、本社と共有して追加班の投入時期を決めました。
結果は、無事故無災害で期限内に完了できました。応援に来た技術者が身につけた技術を別のダムでも使ったので、会社全体の底上げにもつながっています。
この型で効くのは、最後の情報管理の部分だと思います。対策を並べるだけなら誰でもできます。それらを組み合わせて機能させる仕組みを作った、というところまで話せると、監理をしている人だと伝わります。
② 経済性管理(納期)× 人的資源管理(過重労働・意欲低下)
コンサルタントや設計、公務員の業務に向いた型です。限られた期間で品質の高い成果品を出さなければならない一方、人員は増やせない。無理に稼働させれば時間外労働が増え、担当者の意欲が下がり、メンタルヘルスの不調も招きます。守ろうとした納期のために、人的資源そのものを毀損するわけです。
私の準備した事例を紹介します。トレードオフの軸は、どちらも社員に生じる負荷をアウトソーシングにより軽減するものです。
一つ目は、未固結地山を対象とした山岳トンネルの調査解析と対策工の検討です。技術委員会が設置されていて、委員会資料の作成に多くの時間がかかりました。納期を守ろうとすると時間外勤務が増え、担当技術者の意欲低下が懸念されます。そこで負荷の大きい地震時の解析をアウトソーシングし、窓口になる技術者を別途配置しました。
二つ目は、豪雨災害で被災した急傾斜地の地質調査と対策工の検討・設計です。災害査定に間に合わせる必要があり、納期が最重要でした。納期を守るため、図面作成や数量計算といった定型業務をアウトソーシングしました。技術的判断を要する核心部分は社員で行い、外注でも品質が落ちにくい部分を外に出した例になります。
どちらも担当技術者の意欲を保ったまま納期を守れています。窓口を別途配置した、定型業務に限定した、という部分が重要です。ただ外注しましたと言うだけだと、品質管理はどうしたのかと聞かれます。
③ 情報管理(サービス導入)× 経済性管理(コスト)
広域に現場が散らばる業務や、外部条件に左右される業務に効く型です。対立するのは、意思決定を速めるために情報を集める仕組みを導入したいという要請と、導入と運用のコストが膨らんで採算を圧迫するという現実です。
私の準備した事例は、海上作業時の海象情報収集における失敗事例です。
海上作業時に、無料の情報サービスで海象情報を集め、前日に作業日を決めました。午前7時から作業開始しましたが、その直前に南方で台風が発生していました。その後の予報で調査地付近を通過することになり、作業船を一時撤去することになり、撤去費用が発生しました。
改善策として、有料の海象予報サービスを導入しました。地点ごとの精密な予測が得られるうえ、台風の発生時や基準値の超過時に警報メールが届くので、当日の朝でも作業中止を判断できます。ここで経済性管理とのトレードオフが出ますが、契約期間を現場の稼働期間に限定して費用を抑え、一時撤去の費用と比べれば効果は高いと判断しました。
実際その後の別の現場で、海上作業直前に警報メールを受け取り、作業日を延期しました。台風の進路は調査地点付近でしたので、あのまま設置していれば、また撤去費用が出ていたはずです。
失敗から改善策まで一続きで語れる型なので、説得力があると思います。「失敗事例はありますか」と聞かれたときにも、そのまま出せます。
型を作るときの共通の手順
まず、対象業務の社会への貢献性を示す。次に、動かせない条件を示す。供用開始の日程、災害査定の期限、台風の進路。動かせないから対立が避けられなかった、という流れを作る。そのうえで、どの管理とどの管理が相反したかを明示し、改善策を複数の管理から組み合わせて、それぞれが機能する方策を立案する。
この4点が揃っていれば、どんな業務でも総監の回答になります。公益確保という大義名分がないまま「工期が厳しくて」と話し始めると、その場で論点をずらされます。
質問を自分の土俵に引き込む
合否を決めるのは、質問に「トレードオフ」という言葉が入っていなくても、トレードオフ前提で回答することです。冒頭のとおりそんな親切な質問は稀ですから、脳内変換の訓練が要ります。
業務の概要説明を求められた場合
Q.経歴票に書いている詳細業務について、概要を2分程度で説明してください。
一般部門の回答だと、こうなります。
A.〇〇地区の地すべり対策事業です。私は管理技術者として、ボーリング調査と孔内傾斜計による地中変位観測からすべり面を特定し、集水井工と抑止杭工を組み合わせた対策工を設計しました。変位の進行が早く、施工時の安全確保が課題になりましたが、ネットワーク型の孔内傾斜計を導入し、リアルタイムで地すべり変位量を把握し、退避基準と照らし合わせることで、施工時の安全を確保しました。その結果、対策工事を融雪期前に無事に完了させることができました。
総監の回答だと、こうなります。
A.本業務は、〇〇地区の地すべり対策事業です。地すべりブロックの直下に集落と唯一の生活道路があり、住民の安全と避難路の確保が求められていました。私は管理技術者として、限られた予算と短い工期の中で成果を収める役割でした。変位が進行しており、融雪期を迎える前に抑止工まで完了させるという大前提があったため、工期を遵守する経済性管理と、不安定な斜面上での調査・施工に伴う労働災害を防止する安全管理との間に、トレードオフが発生しました。私は業務全体を俯瞰して各管理のリソースを適正に配分し、観測データを自動計測化して関係者と共有する体制の整備(情報管理)と、斜面上作業に特化した安全教育訓練の徹底(人的資源管理)を有機的に組み合わせて調整し、全体の最適化を図りました。結果として、無事故無災害で工期内に対策工を完了させています。
個別技術や創意工夫を聞かれた場合
Q.この業務では高度な調査・解析手法を採用していますが、採用にあたって技術的に最も工夫したハード面のポイントを教えてください。
ハード面を質問されているので、ハード面の回答が必要です。ハード面に触れたうえで、総監の話に引き戻します。
A.ハード面では、孔内傾斜計と地下水位の連続観測を組み合わせてすべり面の深度と地下水の分布を絞り込み、抑止杭の根入れ長と集水井の配置を決定した点です。ただ、総監技術士として最も注力したのは、この調査計画を現場に適用する際の管理間の調整です。調査精度を上げれば対策工の合理化と品質確保につながる一方で、ボーリングの増工はコスト増と工期の圧迫を招き(経済性管理)、不安定斜面上での機械設置は墜落や崩土に巻き込まれるリスク(安全管理)を生みました。私はこの相反に対し、既往の地形判読と地表踏査で調査位置を絞り込んで本数そのものを抑え、足場の仮設計画と作業前教育を専門メーカーの技術者を交えて徹底し、安全確保と手戻り防止を図りました(人的資源管理)。あわせて観測データを自動計測化し、変位の警戒基準値を発注者や地元と事前に共有して、避難判断まで含めた情報伝達の流れを整えました(情報管理)。調査技術の高度化を一技術の解決にとどめず、5つの管理を見渡した総合的判断で安全と品質とコストのバランスを調整した監理プロセスこそが、最大の工夫点です。
この二つに共通するのは、試験官が口にしなかった管理間の相反を、回答者が自分から言葉にしている点です。質問の単語を文字どおりに受け取って技術論に終始せず、自分でトレードオフの解消プロセスへ話をリードする。この能動性が、短い試験時間の中で効いてきます。
459点で不合格、300点で合格
もう一つの落とし穴が、自分の功績を過大に見せようとすることです。「会社の利益をこれだけ伸ばしました」「工期を劇的に縮めました」。どちらも突出した成果のアピールです。コストと工期の管理を完璧に行った。総監では、これがそのまま不合格の引き金になります。
入学試験に置き換えてみます。5教科、各100点満点、合格は各教科60点以上かつ合計300点以上とします。
表3 二つのプロジェクトの成績
| 管理分野(教科) | プロジェクトA | プロジェクトB |
|---|---|---|
| 経済性管理(国語) | 100点 | 60点 |
| 人的資源管理(算数) | 100点 | 60点 |
| 情報管理(英語) | 100点 | 60点 |
| 安全管理(理科) | 100点 | 60点 |
| 社会環境管理(社会) | 59点 | 60点 |
| 合計 | 459点 | 300点 |
| 判定 | 不合格 | 合格 |
プロジェクトAは、莫大な利益を上げ、最新のシステムも導入した、外から見れば大成功のプロジェクトです。ただ社会環境管理で法定の基準値を割り、有害物質の流出や騒音問題を起こしてしまった。他が100点でも、社会に負の遺産を残したことになり、総監としては失敗です。
総監の技術体系が理想とする全体最適化は、一方のプロジェクトBのほうです。派手な手柄は一つもなく、利益も適正範囲にとどまる地味なプロジェクトですが、5つの管理のすべてで赤点を出していません。
口頭試験で語るべき成果は、特別な手柄ではありません。5つの管理すべてを無難に適合させ、社会に恩恵をもたらしつつ、無事故無災害かつ環境基準を満たしてやり遂げた、という事実です。すべての管理を破綻なく調和させた無難さを、堂々とアピールしてください。
まとめ
詳細業務を総監の背景で整理し直す。科学技術の活用、そこから得られる社会的恩恵(大義名分)、失敗した場合の負の影響。この3点を1分から2分で説明できるようにします。
管理間のトレードオフを3パターン以上用意する。対立と、それを人的資源や情報の活用でどう最適化したかを、文章や表で整理します。
脳内変換のシミュレーションを繰り返す。「苦労した点は」「工夫した点は」といった普通の質問を、全部トレードオフ解消のストーリーに引き込む型を、声に出して練習します。私の場合はスマホに録音しておき、通勤中や業務移動中に繰り返し聞きました。より良い回答を思いついたときは、車を止めて録音をやり直しました。
最後の一言も準備しておきます。キーワード集の「総合技術監理に要求される技術力向上」には、5つの管理技術と自分の分野の新技術はもちろん、他分野や社会動向にも関心を持ち自己研鑽を重ねる必要がある、と書かれています。「最後に一言ありますか」と振られたときの対策に効果的です。
総合技術監理の5つの管理は日々進歩しており、社会動向や法令の変化にも常に適応し続ける必要があります。今後も自組織の利益を追求するだけでなく、高い技術者倫理を持って国民経済の発展と持続可能な社会の形成に貢献できるよう、生涯にわたって継続研さんに努めていきます。
総監の口頭試験は、落とすための試験ではないと思います。あなたが総監の本質を理解し、全体最適化を体現している技術士かどうかを確認する場です。トレードオフの話を自分から持ち出せるように総監脳を育て、落ち着いて試験室のドアを叩いてください。
「総合技術監理が必要とされる背景」を正しく理解し、対策を行えば、一般部門をすでに取得している人にとっては、思ったより壁は高くないと思います。
総監の横浜すばる先生もブログで書かれています。「総監は簡単だ、難しく考えた人の負けだ」と。


