「専門技術の説明ならできる!」
「自分が担当した業務も説明できる!!」
「5つの管理技術も、一応覚えている!」
それなのに……
「では、その業務を総合技術監理の視点で説明してください」
と言われると、急に言葉が止まる。
(……何をどこまで話せばいいんだ?)
総合技術監理部門の口頭試験対策で、 多くの受験者が悩むところです。
専門技術について詳しく話せばよいのか。
5つの管理技術を全部説明すればよいのか。
筆記試験で書いた内容を、 そのまま話せばよいのか。
技術者倫理まで説明するのか。
全部を話そうとすると、 今度は回答が長くなります。
自分が担当した業務について、 何を管理上の課題と捉え、 どのようなリスクやトレードオフを考え、 5つの管理技術をどのように関連付け、 なぜその判断をしたのか を説明できる状態にします。
この記事では、 技術士第二次試験 総合技術監理部門の口頭試験対策として、 「総監として何を説明できればよいのか」 を5つのポイントに整理します。
1. 総監の口頭試験では何を説明できればよいか
総合技術監理部門の口頭試験対策を始めると、 まず自分の業務経歴を説明する練習をする方が多いと思います。
これは必要です。
しかし、 単に「どのような仕事をしたのか」を説明するだけでは、 総監としての説明にはなりません。
例えば、 次のような回答です。
私は○○設備の更新業務を担当しました。
現地調査を行い、 設計条件を整理し、 関係者と調整して工事を実施しました。
これで分かるのは、 何をしたか です。
一方、 総監として説明したいのは、 その先です。
なぜ、その業務が難しかったのか。
何と何を両立させる必要があったのか。
どのようなリスクを想定したのか。
なぜ、その対応を選択したのか。
つまり、 専門技術の説明から一段上がって、 業務全体をどう管理したか を説明する必要があります。
専門技術を説明してはいけない、 という意味ではありません。
専門技術は、 当然ながら業務の土台です。
しかし、 専門技術の説明だけで終わると、
「専門技術者として何をしたか」
までしか伝わりません。
2. 業務経歴と筆記答案を「自分の判断」でつなげる
口頭試験対策では、 業務経歴と筆記答案を 別々のものとして扱わないことが大切です。
まず、 業務経歴を見直してください。
ただし、
「最初に調査した」
「次に設計した」
「その後、関係者と調整した」
という時系列だけでは不十分です。
見るべきなのは、 その中で自分が何を判断したか です。
例えば、
「関係者会議を実施しました」
だけでは、 作業の説明です。
ここから、
なぜ会議が必要だったのか。
何が起きることを心配したのか。
誰と、どの情報を共有する必要があったのか。
まで掘り下げます。
設計変更が複数の関係者へ影響するため、 情報伝達の遅れによる手戻りや 安全確認漏れをリスクと考えました。
そのため、 変更内容、影響範囲、責任者、承認状況を整理し、 関係者間で共有する仕組みを設けました。
ここまで説明すると、
「会議を実施した」
から、
「情報リスクを踏まえて、 管理方法を判断した」
に変わります。
同じことを、 筆記答案についても行います。
筆記試験で、
「工程確保と安全確保を両立する」
と書いたのであれば、 口頭試験では、
なぜ両立が難しかったのか。
工程を優先すると、 どのようなリスクがあったのか。
安全を優先すると、 どのような影響があったのか。
何を基準として判断したのか。
まで説明できるようにします。
筆記答案で重要なのは、 「何を書いたか」を覚えることではありません。
「なぜ、それを書いたのか」 を説明できることです。
業務経歴と筆記答案をつなぐ共通点は、 自分の判断 です。
3. 5つの管理技術は「名前」ではなく「関係」で説明する
総合技術監理部門では、
経済性管理、 人的資源管理、 情報管理、 安全管理、 社会環境管理
という5つの管理技術を扱います。
しかし、口頭試験で、
経済性管理を行いました。
情報管理にも配慮しました。
安全管理も行いました。
と管理名を並べても、 何を判断したのかは伝わりません。
総監で重要なのは、 管理技術同士の関係を見ること です。
例えば、 工程を短縮したいとします。
工程短縮は、 経済性管理に関係します。
しかし、 作業を集中させれば、 担当者の負荷が増えるかもしれません。
これは人的資源管理です。
作業手順を変更すれば、 その情報を関係者へ正確に伝える必要があります。
これは情報管理です。
作業条件が変われば、 新たな安全上のリスクが生じる可能性があります。
これは安全管理です。
さらに、 工事時間や作業方法の変更によって 周辺環境への影響が変われば、 社会環境管理にも関係します。
つまり、
「5つの管理を全部やりました」
ではありません。
ここに、 総合技術監理部門で意識したい 全体最適 の考え方が表れます。
4. リスク、トレードオフ、技術者倫理まで判断理由を深掘りする
総監の口頭試験では、 「何をしたか」だけでなく、
なぜ、その判断をしたのか
を深掘りしておきます。
そのときに重要なのが、 リスク、 トレードオフ、 そして技術者倫理です。
これらを別々の暗記事項として考えるのではなく、 1つの判断の中でつなげる ことがポイントです。
まず、何をリスクとして捉えたのかを説明する
例えば、 工程が遅れている業務を考えます。
工程を短縮したい。
しかし、 確認作業まで削減すると、 安全上のリスクが増える。
一方で、 安全確認の方法によっては、 工程への影響が大きくなることもあります。
ここで最初に整理するのは、
「何が起きることをリスクと考えたのか」
です。
事故なのか。
品質低下なのか。
情報伝達漏れなのか。
周辺環境への影響なのか。
そのリスクが発生すると、 誰に、どのような影響があるのか。
ここまで説明できるようにします。
次に、トレードオフを説明する
総合技術監理では、 すべての条件を同時に最大化できるとは限りません。
工程を短縮したい。
しかし、 安全性は確保しなければならない。
コストを抑えたい。
しかし、 必要な品質は確保しなければならない。
情報共有を充実させたい。
しかし、 機密性にも配慮しなければならない。
このような両立しにくい関係を捉えたうえで、
何を優先し、 何を調整し、 どのような方法で両立を図ったのか
を説明します。
工程短縮だけを優先すると、 作業の同時並行化によって 安全上のリスクが高まると判断しました。
そのため、 安全上必要な確認工程は維持しました。
一方で、 事前準備と情報共有を前倒しすることで 確認待ちの時間を減らし、 工程への影響を抑えました。
この説明には、
工程遅延という課題、 安全リスク、 工程と安全のトレードオフ、 経済性管理、 情報管理、 安全管理、 そして自分の判断
がつながっています。
技術者倫理の口頭試験対策|「公益を優先します」だけでは弱い
口頭試験対策では、 技術者倫理についても整理しておきたいところです。
ここで注意したいのが、
公益を優先します。
安全第一で行動します。
法令を遵守します。
といった一般論だけで終わらせないことです。
もちろん、 これらの考え方は重要です。
しかし、 口頭試験対策としてもう一歩進めるなら、
技術者倫理は、 倫理に関する言葉を覚えるだけではありません。
自分の業務に置き換える必要があります。
例えば、 工程が遅れている。
関係者から早期完成を求められている。
しかし、 工程を短縮するために 必要な安全確認まで省略すると、 事故につながるリスクが高まる。
この場合、
「安全第一なので確認しました」
だけでは、 判断の中身が十分に見えません。
次のように整理します。
工程遅延を抑える必要がありましたが、 安全確認を省略した場合、 作業者だけでなく周辺へ影響する事故につながる 可能性があると考えました。
そのため、 安全上必要な確認工程は維持することを判断しました。
一方で、 工程への影響を抑えるため、 事前準備と情報共有を前倒しし、 確認待ちによる時間を短縮しました。
この判断では、 安全を優先したうえで、 工程への影響を可能な範囲で抑えることが 技術者として必要だと考えました。
この回答では、 単に、
「安全を優先した」
と言っているわけではありません。
工程と安全のトレードオフを認識し、 リスクを踏まえ、 何を優先するかを判断し、 別の方法で工程への影響を抑えた
ことまで説明しています。
ここに、 技術者倫理と総合技術監理の考え方がつながります。
技術者倫理は4つの視点で準備する
技術者倫理については、 自分の業務を次の4つの視点から見直すと 整理しやすくなります。
ここで大切なのは、
「法令を守ったから倫理的だった」 だけで終わらせないことです。
法令や基準を守ることは当然重要です。
しかし、 実際の業務では、 法令に具体的な答えが書かれていない状況でも 判断を求められます。
品質とコスト。
工程と安全。
情報共有と機密保持。
事業効果と環境負荷。
こうした複数の要求がぶつかったときに、
技術者として何を重視し、 なぜその判断をしたのか
を説明します。
「倫理的なジレンマ」を1つ準備しておく
技術者倫理の口頭試験対策として、 自分の業務から、
「どちらを選んでも、 何らかの不利益や影響が生じる場面」
を1つ探しておくと整理しやすくなります。
例えば、
工程を優先すれば、 安全上のリスクが増える。
情報を広く共有すれば、 情報漏えいのリスクが増える。
初期コストを抑えれば、 将来の維持管理負担が増える。
といった場面です。
そのうえで、 次の順番で整理します。
↓
誰に、どのような影響があるか
↓
どのような選択肢があったか
↓
何を優先したか
↓
なぜ、その判断をしたか
↓
判断理由をどのように説明したか
こうしておくと、
「技術者倫理についてどのように考えていますか」
「業務で倫理的な判断を必要とした場面はありますか」
「工程と安全が対立した場合、どのように判断しますか」
といった質問にも、 一般論ではなく、 自分の業務経験を軸に答えやすくなります。
技術者倫理は「正義感」ではなく「判断と行動」で示す
口頭試験で避けたいのは、
「私は常に安全第一です」
「絶対に不正はしません」
「公益を最優先します」
といった言葉だけで終わる回答です。
間違った内容ではありません。
しかし、 それだけでは、 実務でどのように判断し、 行動する技術者なのかが見えにくくなります。
技術者倫理は、 最後に付け足す言葉ではありません。
実務上の判断と行動に表れるものです。
リスク、 トレードオフ、 技術者倫理は、 別々に暗記するものではありません。
実務では、 複数の制約条件や利害がある中で、 リスクを把握し、 トレードオフを考え、 最終的に技術者として判断します。
5. まとめ|総監では「判断のプロセス」を一本につないで説明する
ここまで説明した内容は、 バラバラに覚える必要はありません。
総監の口頭試験では、 1つの業務について、 次のように一本につなげて整理します。
↓
管理上の課題
↓
5つの管理技術の関係
↓
リスク
↓
トレードオフ
↓
自分の判断
↓
技術者倫理
↓
結果・今後の改善
例えば、 次のような説明です。
私が担当した業務では、 供用を継続しながら設備を更新する必要があり、 工程確保と安全確保の両立が 管理上の課題でした。
特に、 経済性管理と安全管理に加えて、 工程変更を関係者へ確実に伝える 情報管理が重要でした。
工程を優先しすぎると、 確認不足による事故や手戻りの リスクが高まると考えました。
そこで、 安全上必要な確認工程は維持したうえで、 事前調整と情報共有を前倒しし、 待ち時間を短縮することで 全体工程への影響を抑えました。
この判断では、 安全を確保したうえで、 業務全体を最適化することを重視しました。
また、 判断理由と残るリスクを関係者へ説明し、 必要な合意を得ながら進めました。
今後は、 変更管理の方法を標準化し、 担当者が変わっても 同じ水準で管理できるよう改善します。
この回答では、 単に、
「設備を更新した」
「会議をした」
「安全に配慮した」
と説明しているわけではありません。
何を課題と考えたのか。
どの管理技術が関係したのか。
何をリスクと考えたのか。
何と何がトレードオフになったのか。
何を優先したのか。
なぜ、その判断をしたのか。
そして、 技術者としてその判断を どのように説明したのか。
まで一本につながっています。
口頭試験は、 専門知識をどれだけ長く説明できるかを 競う場として準備するものではありません。
また、 5つの管理技術の名前を 暗唱する場でもありません。
10月は、 自分の主要業務を1つ選んでください。
そして、
↓
5つの管理
↓
リスク
↓
トレードオフ
↓
自分の判断
↓
技術者倫理
を一本につないでみてください。
特に技術者倫理については、
「公益を優先します」
と覚えるだけではなく、
「自分は何を守るために、 何を比較して、 なぜその判断をしたのか」
を説明できるようにしてください。
ここまで整理できれば、 その後の想定問答や模擬口頭試験でも、 質問の角度が変わったときに 自分の判断へ戻りやすくなります。
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