令和4年度機械部門材料強度・信頼性Ⅱー2-2 A判定論文

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問題

Ⅱー2ー2稼働中の回転機器において異常振動が生じる事象が発生した。あなたは,設備保全の責任者として原因調査及び対策案の策定を実施することとなった。このとき, 具体例を想定して下記の内容について記述せよ。
( 1 )異常振動の発生要因について調査すべき事項とその内容について説明せよ。あわせて,それぞれの発生要因への対策案について述べよ。
( 2 )発生要因の調査及び対策案の策定における業務を進めるうえで,それぞれの項目こ とに留意すべき点,工夫を要する点を述べよ。
( 3 )保全責任者として業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策を述へよ。
参考:日本技術士会

解答

1.異常振動要因の調査事項および対策案
 機器稼働中の異常振動について検討するにあたり,具体例として原動機のタービン軸を対象として論述する。
1.1疲労き裂の発生
 タービン軸のように高速で回転している部品は,多くの繰返し荷重が付与される。そのため,軸に疲労き裂が発生し,異常振動を発生させている可能性が考えられる。そこで,非破壊検査により疲労き裂の有無を調査する。疲労き裂は,局所的な応力集中部に発生する。そのため,対策は例えば段付き部の曲率半径を大きくする等,応力集中を緩和させることが有効である。これにより,疲労き裂発生を防止できる。
1.2共振振動の発生
 タービン軸は回転速度が速く,周波数帯が広いことから,加減速中に固有値と加振周波数が一致している可能性がある。そのため,共振振動が考えられる。そこで,FEMの固有値解析により実機の固有値を調査する。対策としては,タービン軸の軸径を大きくするなど,高剛性化させることが有効である。これにより,固有値が増加し,共振を回避できる。
1.3フレッチング疲労の発生
 軸支持部のような接触部近傍では,微小すべりが発生し,フレッチング疲労を起こしている可能性がある。そこで,特に支持部を分解して,き裂有無を調査する。対策は,フレッチング疲労試験を行い,寿命を予測することである。これにより,部品交換時期を明確化させ,支持部損傷を回避することができる。
2.留意点
2.1疲労き裂防止の留意点タービン軸のように高速で回転する場合,運用期間中に108回を超えるため,一般的な疲労限度107回の荷重以下でも,き裂が発生することに留意する。その場合,108回を超えるギガサイクル疲労で評価するため,疲労試験には,超音波疲労試験機を用いると良い。加振周波数を20kHzと非常に高速に試験することができ,109回の寿命取得する場合,汎用疲労試験機では通常1年近く掛かるが,超音波疲労試験機では約14時間で完了させることができる。
2.2共振防止の留意点固有値は連結している部分を含めたシステムで影響するため,軸の剛性を向上させただけでは効果が無い場合があることに留意する。そこで,軸径増加とともに,支持部の構造剛性を向上させたり,箇所を増やしたりするなど支持部の剛性も合わせて向上させる工夫が必要である。
2.3フレッチング疲労防止の留意点フレッチング疲労試験のデータ信頼性向上には,実機と合わせるべき条件が多いためノウハウが必要であることに留意する。そこで,フレッチング疲労試験の計画時には,有識者のレビューを受けるといった工夫が必要である。3.関係者との調整方策保全責任者として調査および対策工事を円滑に進めるために,原動機のオーナーと実機の停止期間を協議する。その際は,予め調査項目の優先順位を決めて置き,停止期間が必要最小限となるような工夫をする。以上

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