令和4年度建設部門必須科目Ⅰー1 A判定の論文(その1)

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問題

我が国では,技術革新や「新たな日常」の実現など社会経済情勢の激しい変化に対応し,業務そのものや組織,プロセス,組織文化・風土を変革し,競争上の優位性を確立するデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進を図ることが焦眉の急を要する問題となっており,これはインフラ分野においても当てはまるものである。
加えて,インフラ分野ではテジタル社会到来以前に形成された既存の制度・運用が存在する中で,デジタル社会の新たなニーズに的確に対応した施策を一層進めていくことが求められている。
このような状況下,インフラへの国民理解を促進しつつ安全・安心で豊かな生活を実現するため,以下の問いに答えよ。
( 1 )社会資本の効率的な整備,維持管理及び利活用に向けてデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するに当たり,技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,課題の内容を示せ。
( 2 )前問( 1 )で抽出した課題のうち,最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
( 3 )前問( 2 )で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
( 4 )前問( 1 ) ( 3 )を業務として遂行するに当たり,技術者としての倫理,社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。
参考:日本技術士会

解答

(1)課題の抽出と観点
以下に多面的な観点から課題を抽出する。
(a)いかにDX 技術を活用し、効率的で安全・安心な国土・地域づくりができるか
少子高齢化により、2040年には高齢者人口がピークを迎え、人口減少が進行すると予測されている。更に、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、建設企業の経営を取り巻く環境は悪化し、技能労働者の減少、若手入職者の減少といった構造的な課題に直面している。技術面の観点から、これらの存続危機を脱し、いかにDX 技術を活用し、効率的で安心・安全な国土・地域づくりができるかが課題である。
(b)いかにDX 技術を活用し、効率的で効果的な維持管理ができるか
高度経済成長期等に集中的に整備された社会インフラは老朽化が進み、更新時期を迎えているものが多い。 インフラの点検・診断は、道路管理者が、近接目視による点検を5年毎に行うことが義務付けられた。しかし、点検・診断には時間、コスト、専門技術者の確保が必要であり、維持管理面の観点から、いかにDX技術を活用し、効率的で効果的な維持管理ができるかが課題である。
(c)いかにDX 技術を活用し、効率的で適切な国土の管理ができるか
人口減少により土地の需要が減少する中、持続可能な国土利用の観点から、DX 技術を活用し、管理が困難になった国土を適切に管理して、いかに荒廃を防ぎ、国土利用の質的向上を効率的に図るかが課題である。

(2)最も重要な課題
前述の課題の中から、最も重要な課題として、「いかにDX 技術を活用し、効率的で安全・安心な国土・地域づくりができるか」を選定し、以下に解決策を述べる。
(a)3次元測量を活用した自動施工の推進
インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。人材不足の地方でも3次元測量を活用した出来形管理やAI搭載建機の自動施工等の効率化によりインフラの適切なメンテナンスが可能となる。データとデジタル技術の活用を図ることにより、公共事業の円滑な実施による生産性向上や感染リスクの低減が期待できる。
(b)インフラの点検・診断の効率化
橋梁、擁壁等の道路構造物の点検・診断においては、近接目視による点検を基本として、高所ではハシゴや専用車両を使用して実施している。しかし、カメラを装着したドローン等のDXの技術を活用して点検することにより、高所での危険な作業や専用車両の使用が不要となり、効率的で効果的な点検・診断が可能となる。これにより、安全性が確保され、工期短縮やコスト縮減が図れる。
(c)コンパクト・プラス・ネットワーク化
人口減少・高齢化が進む中、「コンパクト・プラス ネットワーク」の推進により、コンパクトなまちづくりを進め、医療・福祉・商業等のサービス機能を集約する。それと併せて、各地域を交通や情報通信等のネットワークでつなげ、一定の圏域人口を確保し、生活に必要な機能を維持する。 そのために、地域における公共交通の維持と利便性の向上を図ることが重要である。

(3)波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策
(a)波及効果 上記で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果として挙げられることは、①生産性の向上、②維持管理の効率化によるコスト縮減、③大気汚染の抑制等の多岐にわたる効果が期待できる。
(b)専門技術を踏まえた懸念事項への対応策 既存の設計、施工条件では、利用できない場合があり、新たなマニュアル等を策定し、対策していく必要がある。

(4)技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点
技術者としては、機材や重機の使用方法だけでなく、その構造に対する利用効果の内容等を理解して進めることが重要である。 以上

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代表:横浜すばる
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)

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