総監筆記試験の評価基準が国語的なのはなぜか?

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総監問題についての違和感

総監の問題には、ずっと違和感がありました。

問題文がやたら長くて抽象的で、全体的に分かりにくい。

一般部門の問題とは雰囲気が違います。

近年の社会課題に関する長い背景説明が延々と続いたあと、「あなたがこれまでに経験した、若しくはよく知っている事業またはプロジェクトを1つ取り上げ……」という書き出しで再度始まり、そこから具体的な設問に入ります。

さらには、自分が経験していなくても、よく知っている事業なら書いていい、とまで書いてある。これがなぜ技術士の試験問題になるのか。技術分野で最高峰とされる技術士の、さらに上位資格(本当は上位ではなく、資格上の分野の一つですが)である総監の問題になるのか。

「実務経験がなくてもよい」??? 意味不明です。

初めて総監の過去問を読んだとき、率直に、これが試験問題でよいのかって感じました。難関大学の入試で、自分で問題を作ってそれに解答するという様式の問題があったと記憶しているのですが、あんな感じではないでしょうか。

そこで改めて問題を眺めると、専門知識を確認しているのではない、ということがうかがえます。他の部門なら、専門的な技術知識を問う設問(特に問題ⅡとⅢ)で構成され、技術力の有無が問われます。知っているか知らないかが、はっきりしています。総監はそうなっていません。

問題文に毎年書いてある、あの文章

違和感の手がかりは、問題文の中にありました。

平成28年度から令和7年度まで、10年分の問題文を並べて読むと、毎年ほぼ同じ文章が出てくることに気づきます。

論文の評価基準を示した文章です。

「書かれた論文を評価する際、考察における視点の広さ、記述の明確さと論理的なつながり、そして論文全体のまとまりを特に重視する」

10年間、毎年書いてあります。年度によって「視野の広さ」と「視点の広さ」の表記が揺れるなど細かい差はあるものの、言っていることは同じです。

最初に読んだときは、正直あまり気にしませんでした。そういうものかと読み飛ばしていました。

ところが、これこそが総監という試験の本質を示す文章なのです。

技術士の試験なのに、なぜ国語的なのか

改めてこの評価基準を見てください。「視点の広さ」「記述の明確さ」「論理的なつながり」「論文全体のまとまり」。技術的な正確さでも専門知識の深さでもなく、しかも「特に重視する」とまで書いてある。

まるで国語の作文を採点するときの評価基準です。

技術分野の専門家を対象にした国家試験の評価基準が、これでいいのか。私の違和感はここにありました。技術の話を書かせるのに、なぜ「まとまり」や「論理的なつながり」が見られるのか。もちろん「まとまり」や「論理的なつながり」は、どの論文でも必要ですが、わざわざ「特に重視する」まで書くのは何故?と感じていました。技術力を見るつもりがないなら、いったい何を見ているのか。

この疑問に答えが出たのは、横浜すばる先生の動画を見てからです。「総監は毎年同じ問題しか出ない」「難しく書かないと毎年同じ問題であることがバレてしまうから、わざと難しく長く書かれている」「日本語が正しく読めれば合格できる」。刺激的な言葉が並びますが、どれも理由を含めて説明されていて、聞くほどに納得がいきました。

あの「国語的」な評価基準に対する違和感の答えがやっと分かりました。

総監を受験する人は、すでに技術士

なぜ専門的な技術力を問わない試験なのか?

ここで、改めて、総監の受験資格を確認しておきます。

総合技術監理部門を受験するには、原則として他の技術士部門をすでに持っているか、一次試験合格後に規定の実務経験(7年または10年)を積んでいることが必要です。現実には、総監を受けに来る人の多くは、何らかの技術分野ですでに技術士資格を取得しています。技術士資格を持たない場合は選択科目が免除されず、選択科目=技術士一般部門の試験ですから、総監に合格するには一般部門の試験にも合格できる技術者である必要があります。整理するとこうなります。

受験者の区分選択科目意味するところ
他部門の技術士資格を持っている免除技術力はすでに国家試験で認定済み
技術士資格を持っていない(一次試験合格+実務経験7年または10年)免除されない一般部門相当の試験にも合格する必要がある

応用理学、建設、機械、電気電子、農業。専門分野はさまざまですが、それぞれの分野で技術的な能力を国家試験で認定された人たちが受けに来る。

つまり、技術力はすでに担保されているわけです。

一般部門で技術力を問うのは、その人が専門分野の技術者として通用するかどうかを判定する必要があるからです。とすれば、総監の受験者に改めて技術力を問う必要はない、と解釈できます。

建設部門(土質および基礎)の技術士に、総監の試験で改めて土質試験の専門知識を確認する必要があるでしょうか。

ないと思います。

総監が問いたいのは技術力ではない

では、総監が問いたいのは何か。

総合技術監理部門の定義にはこうあります。「業務全体を俯瞰し、経済性管理、安全管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理に関する総合的な分析、評価に基づいて、最適な企画、計画、実施、対応等を行う」立場の技術者のことです。

5つの管理分野を横断的に把握し、そのトレードオフを踏まえて最適な判断を下す。特定の技術分野を深く掘り下げる能力ではなく、業務全体を高いところから見渡してバランスをとる能力です。建設の専門家であれ機械の専門家であれ、この管理的な判断力を持っているかどうかが問われる。それが総監という試験の本質です。

だとすれば、論文の評価基準が「技術的な正確さ」ではなく「視点の広さ」や「論理的なつながり」になるのは自然なことです。管理的な判断力を見るには、どれだけ広い視点で物事を捉えているか、その論理が一貫しているかを見るのが、いちばん直接的な方法だからです。

意図してそうなっている

ここまで来ると、あの「国語的」な評価基準は、意図してそうなっているのだとわかります。技術力のハードルを、あえて下げているのです。

受験者は技術士ですから、技術力は前提として持っています。その上で管理的視点を持つ人だけを通すには、評価軸を技術力ではなく管理的判断力に置くしかありません。「視点の広さ」「記述の明確さ」「論理的なつながり」「まとまり」は、どれも管理的な思考ができているかを測る指標です。だから、どれだけ高度な技術的内容を書いても、視点が狭く論理のつながりが乏しければ評価されない。

逆に、技術的な内容は平凡でも、5つの管理分野を意識した俯瞰的な論述ができていれば評価されると考えて良さそうです。

「国語の問題みたいだ」という違和感は正しかった。ただしそれは試験問題の欠陥ではなく、総監が何を選抜しようとしているかを、評価基準が正直に示しているだけだったのです。

ここに気づけるかどうかが、総監の試験対策では非常に重要です。私はずっと違和感を持っていながら、本講座の資料を読んでようやく気づくことができました。

「視点の広さ」は5つの管理分野で読み替える

「視点の広さ」という言葉は抽象的に聞こえますが、5つの管理分野を意識して論述できているかどうか、と読み替えることができると思っています。

経済性管理だけを考えた答案も、安全管理だけに偏った答案も、視点が狭い。5つの管理分野を横断的に考慮し、その間に生じるトレードオフを認識した上で判断を示している答案が、「視点の広い」答案です。

たとえば令和7年度のテーマは少子高齢化でした。人口減少による労働力不足への対応を、人的資源管理の視点だけで書いていては視点が狭い。経済性管理(コスト増加)、情報管理(デジタル化による省力化)、社会環境管理(地域社会への影響)と、複数の管理分野を絡めて論じて初めて「視点の広さ」が生まれます。

管理分野論述の視点の例(令和7年度:少子高齢化)
人的資源管理労働力不足への直接の対応
経済性管理コスト増加への対処
情報管理デジタル化による省力化
社会環境管理地域社会への影響

「記述の明確さと論理的なつながり」も同じです。結論だけ書いても評価されません。どの管理分野を優先し、何をトレードオフとして受け入れたのか、その論理の流れが明確に示されている必要があります。

総監試験における「視点の広さ」は、5つの管理分野とセットで理解しておく必要があります。

技術レベルが低くても合格できる、ということの意味

実際の試験のときにも感じていましたが、合格した年の再現答案を作っていて改めて思いました。技術的なレベルは、とても高いとは言えない。建設部門の専門家として書いた論文なのに、技術的な深みという点では胸を張れるものではなく、恥ずかしいような内容です。それでも合格できました。

合格できた最大の理由は、5つの管理分野を意識した俯瞰的な論述と、論理的なつながりを最後まで保てたことだと思っています。技術の深さではなく、管理的な視点の広さと論理の一貫性で評価してもらえたわけです。技術的にはレベルの低い論文だと自分でも分かっていましたが、事前に本講座の資料で総監の本質を理解していたので、正直なところ、試験が終わった時点で合格ラインを超えている可能性が大きいのではと思っていました。

他の人の合格体験記を読むと、同じようなことを書いている方が少なくありません。技術的な内容は大したことがないのに合格した、専門知識よりトレードオフの記述を意識したら通った。謙遜ではなく、試験が意図してそうなっている結果だと思います。

逆に、技術的に高度な内容を書こうと頑張りすぎて、視点が狭くなったり論理の流れが乱れたりして落ちる、というパターンもあると聞きます。

課題を、技術士として当然持っている高度な専門知識で解決しようとすること自体が、この試験の趣旨から外れているのです。

観点合格しやすい答案落ちやすい答案
技術的な内容平凡でも構わない高度さを追求しすぎる
視点5つの管理分野を横断している専門分野に偏って狭い
論理トレードオフを明示し、最後まで一貫している途中で流れが乱れる

前回の記事にも書いたとおり、総監は一般部門の上位資格ではなく、あくまで21番目の技術部門の一つとして制度設計されている。この点も併せて理解しておく必要があります。

この評価基準を知って、答案設計はどう変わるか

評価基準の意味を理解すると、答案の組み立て方が変わります。

「何を書くか」より先に「どう組み立てるか」を考えるようになります。

技術的に正確な内容を積み上げることより、5つの管理分野の視点から課題を整理し、トレードオフを明示しながら論理を展開することが優先事項になります。「論文全体のまとまり」が評価基準に入っている以上、書きながら考えるスタイルでは対応が難しいので、問い(1)から問い(3)まで全体を通じた論理の流れを最初に決めてから、各設問を埋めていく順番になります。

それから、「特に重視する」という言葉を額面通りに受け取るようになります。試験委員がわざわざ毎年書き続けているのは、これを守れていない答案が多いからではないでしょうか。技術的な内容の充実に力を注ぐあまり、視点の広さと論理的なつながりが疎かになっている答案が、毎年相当数あるのだと想像します。

知る前と後で、答案づくりはこう変わります。

 項目知らないまま書く知った上で書く
最初に考えること何を書くかどう組み立てるか
書き方書きながら考える全体の論理の流れを決めてから各設問を埋める
優先すること技術的に正確な内容の積み上げ管理分野からの整理とトレードオフの明示

評価基準を知ることは、採点者が何を見ているかを知ることです。知った上で答案を作るのと、知らないまま書くのとでは、合格する確率は雲泥の差になると思います。

「採点者が何を見ているか」。この点についても、本講座の資料で詳しく説明されています。

技術士二次試験総合技術監理部門受験対策

技術士二次試験総合技術監理部門受験対策資料

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■総合技術監理部門受験対策資料
pdf資料
1.総監入門編
2.業務経歴票編
3.記述式試験編
4.択一試験編

技術士二次試験総合技術監理部門個別指導講座

■総合技術監理部門個別指導講座
総合技術監理部門完全講座
総合技術監理部門選択科目講座(記述式)

まとめ

総監の評価基準は国語的に見えますし、技術士の試験としては異質に映ります。ですがそれは、技術力がすでに担保された受験者の中から、管理的な判断力と俯瞰的な視点を持つ人を選抜するために、意図して設計されたものです。技術レベルのハードルをあえて下げ、視点の広さと論理的なつながりを評価の前面に置いている。この意図を理解することが、総監の試験対策の第一歩です。

評価基準の言葉は、それぞれこう読み替えられます。

評価基準の言葉総監的な読み替え
視点の広さ5つの管理分野を横断して考慮できているか
記述の明確さと論理的なつながりどの管理分野を優先し、何をトレードオフとして受け入れたか、判断の筋が追えるか
論文全体のまとまり問い(1)から(3)までを通した構成を最初に設計できているか

何を書くかより、どう組み立てるか。評価基準の言葉をそのまま読めば書いてあることなのですが、私はぼんやりした違和感のまま長く立ち止まっていて、明確に理解できたのは本講座の資料のおかげでした。

問題文に毎年書いてある、あの文章。読み飛ばしていたとしたら、もう一度読み直してみてください

この記事を書いた人

遠野 博史
技術士(建設部門-土質及び基礎、応用理学部門-地質)(総合技術監理部門)
建設部門と応用理学部門は、普段の業務の視点から受験対策を行うことで合格できました。しかし総監部門だけは勝手が違い、6回受験しても合格できず、手応えすらまったくつかめませんでした。青本の解説本を買ってはみたものの、最初の数ページで挫折。とりあえず受験するだけ、という状態が数年続いていました。
転機になったのが、このHPの講座です。講座の資料を活用したところ、あれほど苦労していた総監に、あっさり合格できました。こうした経緯から、同じように悩む方の役に立てればと、このブログ記事を書かせていただいています。

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