技術士二次試験は、多くのエンジニアにとって最高峰の難関資格として知られています。しかし、毎年合格発表の時期になると、明暗がくっきりと分かれます。
「仕事もできて知識も豊富なベテラン技術者が、なぜか5年も6年も不合格を繰り返している」
その一方で、
「実務経験はそこそこだが、1回か2回の受験であっさりとストレート合格していく若手や他部門の技術者がいる」
この違いは、一体どこから生まれるのでしょうか?
結論から言いましょう。合否を分けているのは、あなたの「技術力の高さ」でも「勉強時間の長さ」でもありません。原因は、試験に臨む「考え方(マインドセット)」にあります。
今回は、技術士二次試験で不合格のループにハマってしまう人の共通点を浮き彫りにし、そこから抜け出すための最大の鍵である「結果の法則」と「素直の法則」について、詳しく解説します。
何年も不合格が続く受験生が共通して持っている「勘違い」
不合格を繰り返す受験生には、驚くほど共通した「3つの勘違い」があります。まずは、ご自身のこれまでの勉強法や試験時の思考に当てはまっていないか、胸に手を当てて確認してみてください。
「国土交通白書の内容を丸暗記すれば受かる」という妄想
多くの大手予備校や市販の参考書では、「国土交通白書(または各省庁の白書)を読み込み、専門施策を頭に叩き込め」と指導されます。確かに、最新の政策トレンドを把握することは重要です。
しかし、白書を熱心に丸暗記している人ほど、本番の論文で大失敗します。なぜなら、彼らは問題文の問いに対して答えるのではなく、「自分が必死に暗記してきた白書の知識」をどこかに詰め込もうとするからです。試験官が求めているのは、白書のコピペではありません。目の前の設問に対して、技術士としての視点で論理的に思考したプロセスなのです。
「論文の内容は技術的に高いことを書かなければならない」というプライド
「せっかくの技術士試験なのだから、自分が持つ最先端の工法や、誰も知らないような高度な専門技術をアピールして試験官を唸らせたい」
このように考えて論文を書いているとしたら、今すぐそのプライドを捨ててください。
技術士二次試験は、「優れた技術発表会」ではありません。
求められているのは、基礎的な専門知識と、それを実務に適用する際の上当な「考え方」です。誰もが理解できる普遍的かつ確実な技術論をベースに、設問に忠実に答えること。これだけで十分に合格点は超えられます。突飛な技術論やマニアックな自慢話は、むしろ「独りよがりな論文」として大幅な減点対象になります。
「自分の書きたいことを書く」という設問無視の姿勢
不合格者の論文を添削すると、最も多いのが「問題文を正しく読んでいない」というケースです。
問題文が「〜における課題を3つ挙げ、それぞれの解決策を述べよ」と要求しているにもかかわらず、自分の得意分野のテーマに話をすり替え、課題を2つしか書かなかったり、解決策ではなく「現状の技術紹介」に終始してしまったりする人が後を絶ちません。
どんなに素晴らしい日本語で、どれほど高尚な技術が書かれていても、「問われていることに答えていない」論文の評価は一発で最低ランク(B判定やC判定)になります。願望や妄想、過去の成功体験というフィルター(ヒューリスティック)で問題文を捻じ曲げて読んでしまうことこそが、最大の敵なのです。
結果を変えたければ行動を変えよ!「結果の法則」の真実
なぜ、上記のような勘違いを多くの受験生が続けてしまうのでしょうか。それは、物事の本質を決める「因果関係」を正しく理解していないからです。ここに、ひとつの普遍的な方程式があります。
考え方⇒行動⇒結果
これを「結果の法則」と呼びます。
技術士試験における「不合格」という結果は、偶然ではありません。不合格になるための「行動」を本番の試験用紙(または日々の勉強)で行ってしまったからであり、その行動を引き起こしたのは、あなたの「考え方(マインドセット)」なのです。
【図:結果の法則と合格へのアプローチ】

■不合格のルート: 偏った考え方(技術力誇示・白書至上主義) ⇒誤った行動(問を無視、自己流の論文)⇒ 不合格
■合格へのルート: 柔軟な考え方(試験は日本語の試験、素直さ) ⇒正しい行動(設問への直球回答、模範解答の模倣) ⇒ 合格
多くのリベンジ組は、不合格の通知を受け取ると「もっと知識を増やさなければ(行動の強化)」「もっとたくさん論文を書かなければ(量の拡大)」と、行動のレイヤーだけを修正しようとします。
しかし、根本にある「論文は高尚な技術を書くべきだ」「自分のスタイルは崩したくない」という「考え方」が変わっていないため、どれだけ勉強時間を増やしても、結局は同じような「不合格論文」を再生産し続けることになります。不合格のループを脱出するには、行動の前提にある「考え方」そのものをガラリと入れ替える必要があるのです。
合格者が実践している「素直の法則」とは何か
では、合格するために最優先で身につけるべき「考え方」とは何でしょうか。
一言で言えば、それは「素直で謙虚であること」です。これを私たちは「素直の法則」と呼んでいます。
「たかが資格試験で人間性や人格の話を持ち出すのか?」と思われるかもしれません。
しかし、本質的な意味での「勉強」とは、「分からないこと」を「分かる」ようにし、「できないこと」を「できる」ように改善していく行為そのものです。
講師の指摘を「自分の都合よく解釈」していませんか?
講座を受講したり、先輩技術士に論文を添削してもらったりしても、一向に論文が改善されない人がいます。彼らの特徴は、指摘されたアドバイスを素直に受け入れないことです。
■「この表現は主旨が伝わりにくいので削ってください」と指摘されても、「いや、この現場ではこの表現が重要だから」と意固地になって残す。
■「設問の問いとズレています」と言われても、「裏の意味を読めば通じるはずだ」と言い訳をする。
これは、指摘事項を「自分の都合の良いように誤解・勘違い」して、自己流の枠の中に閉じこもっている証拠です。自分の弱点や間違いを素直に認められないプライドが、学びの吸収を遮断してしまっています。
「頭が良い人」ほど、素直で謙虚である
本当の意味で要領が良く、スマートに合格していく人は、「自分がこの試験においては初心者である」という事実を素直に認めます。そのため、合格している人のアドバイスや、提示された模範解答を「まずはその通りに、徹底的に真似る(TTP)」ことから始めます。
自分のこだわりを捨て、教えられたルールを100%守る。この「素直さ」があるからこそ、学習のスピードが爆発的に上がり、短期間で合格論文が書けるようになるのです。能力が高いから受かるのではありません。素直で謙虚だから学びが深まり、結果として合格する能力が身につくのです。
まとめ:次回の試験で「合格者」に生まれ変わるためのファーストステップ
技術士二次試験は、あなたを落とすための意地の悪い試験ではありません。むしろ、「難しい試験に見せかけているだけで、本質は非常にシンプルな日本語のコミュニケーション試験」です。
もしあなたが、これまでの受験で悔しい思いをしてきたのであれば、それはあなたのエンジニアとしての能力が否定されたわけではありません。単に、試験が求めているルールに対して「考え方」が噛み合っていなかっただけです。
次回の試験で確実に「合格」という結果を手にするために、今日から以下のファーストステップを踏み出してください。
1.自己流のこだわりを一度すべて捨てる「自分の書き方」「過去の成功体験」を一度綺麗に忘れ、白紙の状態で試験に向き合う覚悟を決める。
2.「減点されないこと」だけに集中する加点を狙って高度な技術論を書くのをやめ、問題文の要求(問い)に対して、過不足なく、中学生でも理解できる平易な日本語で答える訓練をする。
3.優れた模範解答を素直に模倣するゼロから論文をひねり出すのをやめ、実証された合格論文の「型」を素直に受け入れ、それを自分の型としてインストールする。
不合格という結果をもたらす古い考え方を捨て、合格のための新しい考え方を取り入れる。この「素直の法則」を受け入れた瞬間から、あなたの合格へのカウントダウンは始まります。要領よく、スマートに、技術士の栄冠を勝ち取りましょう。


