令和4年度技術士総合技術監理部門 A判定の論文(その4)

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問題

I-2次の問題について解答せよ。(指示された答案用紙の枚数にまとめること。)
急速に進展する各種テジタル技術の利用により、誰もが日々の業務や生活の中で多大な恩恵を享受している。また現在ではさらに進んで、DX (デジタルトランスフォーメーション)が注目されており、これは「デジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していく取組」とされている。デジタル技術の活用レベルは事業や組織の置かれた状況により異なるが、それぞれに適したデジタル技術を活用してビジネスやプロセスを変革することにより、やがては社会制度や組織文化の変革をもたらすことに繋がる。本論文では、 このビジネスやプロセスの変革について検討してみたい。
なお、デジタル技術の利用・活用とDXとの間に、明確な境界線がある訳ではないのも実情である。工場への自動制御技術の導入や設計における3D CADの出現を変革と捉えることも出来よう。しかしここでは、これまでの過去の変遷についてはデジタル技術の利用とし、最近若しくは未来のデジタル技術を活用してビジネスやプロセスを変革(大幅な効率化や省力化も含まれる。)していく取組をDXとして考えることとする。
そこであなたがこれまでに経験した、若しくはよく知っている事業(研究開発・製品製造・販売・アフターサービス等の業務機能の集合体としての事業、個々の建設プロジェクトの集合体としての事業等が代表例となる。)や組織(役所や法人の全体とすることも, 個々の部署や事業部等とすることもできる。)に関するデジタル技術の利用の変遷を振り返り、今後のDX推進に向けた現実的な計画について、総合技術監理の視点から以下の( 1 )~( 3 )の問いに答えよ。
解答に当たり、事業や組織について、関連するステークホルダーや他組織との連携を含めてもよい。また、ここでいう総合技術監理の視点とは,「業務全体を俯瞰し、経済性管理、安全管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理に関する総合的な分析、評価に基づいて、最適な企画、計画、実施、対応等を行う。」立場からの視点をいう。なお、書かれた論文を評価する際、考察における視点の広さ、記述の明確さと論理的なつながり、そして論文全体のまとまりを特に重視する。
( 1 )本論文においてあなたが取り上げる事業や組織の内容と、そこにおける過去から現在までのデジタル技術の利用状況について、以下の問いに答えよ。
(問い( 1 )については答安用紙2枚以内にまとめよ。)
①事業や組織の概要及び役割,あなたの立場を記せ。
②この事業や組織における経営資源(人財・設備・技術等) 、アウトブット(製品・構造物・サービス・技術・政策等,事業や組織が創出している成果) 、業務プロセス (経営資源によりアウトブットを創出する過程)を記せ。
③この事業や組織における,過去のデジタル技術の利用の変遷について、以下の項目をすべて含む形で記せ。なお、その変遷の期間については各自で設定してよい。
・設定した期間の初期段階でのデジタル技術の利用状況
・現在のデジタル技術の利用状況とこれまでの変遷
・変遷の過程で得られた効用と副作用
( 2 ) DXを単なるデジタル技術の利用ではなく、デジタル技術を活用したビジネスやプロセスの変革と捉えた場合、 ( 1 )で取り上げた事業や組織において、 DXとして既に実施している取組、若しくは直近に始まるであろう取組について、以下の問いに答えよ。
(問い( 2 )については答用紙を替えたうえで答案用紙1以内にまとめよ。)
①取組を1つ取り上げ、その概要、活用されるデジタル技術、ビジネスやプロセスに及ぼす変革の内容を記せ。
②その変革によってもたらされる利点と問題点のそれぞれについて、総合技術監理の5つの管理技術のうち2つ以上の視点から記せ。
( 3 ) ( 1 )で取り上げた事業や組織におけるDX推進の端緒とするため、来年度からスタートする5か年のDX推進計画を策定するタスクフォースが設置され、あなたはそのリーダーに指名された。タスクフォースの使命は13週(約3か月)でDX推進計画を策定することであり、その計画には、「実現目標」、「取組内容」、「推進体制」、「予算」などの項目が盛り込まれることになる。このDX推進計画及びタスクフォースに関して、以下の問いに答えよ。
(問い( 3 )については答案用紙を替えたうえで答用紙2枚以内にまとめよ。)
①このタスクフォースの中核となるメンバー数名について、その出身母体(又は部署等) 、スキル、経験等を記せ。なお、中核メンバーを組織内に閉じず、外部から参加させることも妨げない。
②DX推進計画策定に向けた13週のタスクフォースの大まかなスケジュールを考えたい。計画策定に必要な工程を設定し、その時期(第〇週等で表現)と期間、各工程の説明を簡潔に記せ。
③ ②で示した工程の中で、 DX推進計画を現実的で実現可能なものとするためにあなたが最も重要と考える工程について、その理由を記せ。
④現時点でのあなたの仮説として、成果物であるDX推進計画に盛り込まれる「実現目標」及びその実現に必要な「取組内容」を記せ。また、それらを実行するに当たり最も重大な障害とその克服策を総合技術監理の視点から記せ。
参考:日本技術士会

解答

事業概要
首都圏ネットワークや地域の足として活用されるバスの運行事業

立場
企画開発担当
経営資源人財:運転手、整備士、運行管理者、
技術開発者設備:バス、駐車場、給油施設、運行システム
技術:自動運転、AI、運行管理システム

アウトプット
自動運転バスの運行サービスにより公共交通不便地域の解消

業務プロセス
現行バスの運行→技術開発(DX技術)→実証実験(私有地から公道へ)→自動運転技術の確立→交通不便地域の停車場所確保→デマンド化
デジタル技術の変遷

初期段階
初期段階での自動運転(デジタル)技術は、自動で走る、曲がる、止まるであった。
↓↓↓↓↓
現在の技術と変換
現在では、走行ルート(位置の制御)、周辺環境(交通信号、他の自動車、歩行者等)に合わせた自動運転(デジタル)技術が実現し、公道での実証実験等を経て、一部のエリアにおいてはレベル3(遠隔監視・操作型)での自動運転を開始したところである。
変遷の過程で得られた効用
・省人化による人的コストの削減(運転手不足の解消)
・デジタル技術により安全性を確保(交通事故の防止)
変遷の過程で得られた副作用
・経費が莫大
・不具合発生時の予期せぬ事故
・事故発生時の責任の所在
取り組みにおける変革内容
これまで、自動運転(デジタル)技術として、レベル1(運転支援)→レベル2(部分的自動運転)→レベル3(条件付自動運転)と公道等での実証実験を積み重ねながら技術レベルを向上させてきた。今後もデジタル技術の更なる進展等により、レベル4(高度な自動運転)→レベル5(完全自動運転)と更なる技術レベルの向上を目指している。

利点
・自動運転技術による運行の安定・・・経済性管理
・省人化による人的コストの削減・・・経済性管理
・自動運転技術による安全性の確保・・・安全管理
・新技術の開発に伴う技術者の能力向上および技術継承・・・人的資源管理
・デジタル技術による運行情報の一元化・・・情報管理
・自動運転技術により燃費を向上させCO2を削減・・・社会環境管理問題点
・自動運転システムの技術開発・装備など経費が増大・・・経済性管理
・自動運転技術による運転手の技術低下・・・人的資源管理

メンバーおよびスキル
・企画開発・・・新規事業の提案力
・財政担当・・・予算確保の調整力
・運行管理者・・・運行管理技術
・運転手・・・自動車運転技術
・整備士・・・自動車整備技術
・システム会社・・・先進的デジタル技術の開発力
・自動車メーカー・・・自動車装備の開発
・連携自治体・・・公民連携によるまちづくり能力

経験等
メンバーの選定にあたっては、各パート毎にベテランから若手までを数名配置し、事業実施時において技術継承および人材育成を進める・・・人的資源管理

必要な期間とその概要
第1週~第3週:目標の設定第
4週~第7週:取り組み内容の決定
第8週~第9週:推進体制の整理
第10週~第11週:必要予算の算定
第12週~第13週:推進計画のとりまとめ

最も重要な工程
目標の設定
その理由
技術の高度化・複雑化、関係法令の整理、関係自治体との調整、ハードの選定、停車場所の選定など様々な課題が想定される中、どの水準を目指して取り組むのかを明確にする必要があるため。

実現目標
完全自動運転によるデマンド交通を実現・・・最重要課題は品質確保(経済性管理)
重大な障害
技術の向上(品質確保)させるためには、様々なコストが発生し、また納期も長くなる。これらはトレードオフの関係性にあるため部分最適化を図る。
克服策
最重要課題にリソースを集中させながら、人的資源や情報等の限られたリソースを最適配分しながら全体最適化を図る。

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この記事を書いた人

横浜すばる技術士事務所代表
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)
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