令和4年度建設部門道路Ⅲ-1 A判定論文

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問題

道路は,交通ネットワークの要として,人の移動や物資の輸送に欠かすことのできない基本的な社会資本であり,また,公共空間としても重要な役割を果たしている。近年, 社会・経済情勢の変化,デジタル技術やモビリティ分野の進展等により,道路に対するニーズが多様化し,こうしたニーズへの対応が課題となっている。
このような状況を踏まえて,道路に携わる技術者として,以下の問いに答えよ。
( 1 )道路に対するニーズについて,技術者としての立場で多面的な観点から,近年の多様化している道路へのニーズを3つ抽出し,それぞれの観点を明記したうえで,そのニ ズの内容を示せ。
( 2 )前問( 1 )で抽出した道路へのニーズのうち,最も重要と考えるニーズを1っ選択し, そのニーズに対する複数の対応策を示せ。
( 3 )前問( 2 )で示したすべての対応策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について,専門技術を踏まえた考えを示せ。

参考:日本技術士会

解答

(1)課題の抽出と観点
以下に多面的な観点から課題を抽出する。
(a )誰もが自由に移動、交流できる道路へのニーズに対するサービスの確保
少子高齢化により、2040年には高齢者人口がピークを迎え、一人暮らし高齢者世帯が今後さらに増加すると見込まれている。高齢世代の外出率は増加しているが、高齢者の自動車免許保有の割合は減少する傾向にある。一方、若年世代は対照的に、働き方改革の取り組みや新型コロナウイルス感染症の影響もあり、外出率が大幅に低下し、自動車運転免許の取得率は減少傾向にある。持続可能な移動、交流手段の確保を促進する観点から、今後、高齢者および若年者等においても移動、交流できる道路へのニーズに対するサービスの確保が課題である。
(c)物流システムの維持
近年のeコマースの普及等により貨物の小口化が進んでいる。これよりドライバーが不足し、物流システムの持続可能性に不安が生じている。一方、国際海上コンテナ貨物量は増加している。公共交通網の強化の観点から、陸上システムも基幹航路の再編等の環境変化に対応した物流ネットワークの構築が課題である。
(b)自然災害とパンデミックの複合災害に対応した道路整備
近年、気候変動による豪雨の激甚化、広域化により、各地で甚大な被害が生じている。また南海トラフ地震や首都直下地震等の巨大地震の発生も懸念され、自然災害対策の重要性が高まっている。更に、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、事前防災の観点から、自然災害とパンデミックの複合災害に対応した道路整備対策を講じていくことが課題となる。

(2)最も重要な課題
前述の課題の中から、道路に対する多様化したニーズに対応し、持続可能な社会を目指す上で、国民の安全・安心な生活維持のために最も重要な課題として、「誰もが自由に移動、交流できる道路へのニーズに対するサービスの確保」を取り上げる。
(a)マイカーなしでも便利に移動できる道路
①接続・乗換拠点(モビリティ・ハブ)の整備 様々な交通モードの接続・乗換拠点(モビリティ・ハブ)が道路ネットワークに階層的に整備され、自動運転バス・タクシー、小型モビリティ、シェアサイクル等を利用してシームレスな実現を図る。
②中山間地の移動手段整備 道の駅等を拠点として、無人自動運転乗合サービスを整備し、中山間地域において高齢者等に移動手段を提供する。 ③移動サービスの情報提供 オンデマンド自動運転車の利用者に対し、到着時間や利用可能な乗降スペース等の情報を提供し、高齢者や障害者等にドアツードアの移動サービスを提供する。
(b)賑わいに溢れたコミュニティ空間の創設
①道の駅の多目的利用
道の駅が地域住民のための子育て応援施設等、あらゆる世代が利用する地域センターとしての機能を提供する。
②歩行者利便増進道路の整備
通過車両を環状道路等に誘導、迂回させ、まちの中心となる道路を人中心の空間として再生する。オープンカフェやイベントが催される楽しく、安全で、地域の誇りとなる道路空間を創設する。 ③グリーンインフラの整備 緑地帯や雨庭等のグリーンインフラを整備し、雨水の流出抑制、ヒートアイランド現象の緩和、憩いの場の提供等により、快適な道路空間を形成する。

(3)新たに生じうるリスクと対応策
(a)新たなリスク
モビリティの充実や公共交通機関の利便性が高まり、既存の交通ルールでは、その性能を十分に生かすことができない可能性がある。
(b)対応策
自動運転車等を安全かつ快適に通行可能にする新たな交通ルールの策定が必要である。 以上

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代表:横浜すばる
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)

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