技術士二次試験模範解答|必須科目Ⅰの書き方と合格論文の作成法を徹底解説

北

技術士第二次試験の筆記試験において、合否を大きく左右するのが「必須科目Ⅰ(記述式・3枚)」です。

「模範解答を読んでも、自分の言葉でどう書けばいいのかわからない」

「設問の要求事項が多く、いつも時間内に論文がまとまらない」

「合格基準を満たす課題設定やリスクの書き方が掴めない」

このような悩みを抱えている受験生は非常に多くいらっしゃいます。必須科目Ⅰは、専門分野の知識量だけでなく、「技術士としての総合的な問題解決能力」「課題遂行能力」「論理的思考力(コンピテンシー)」が厳しく問われる科目です。

本記事では、技術士二次試験の必須科目Ⅰにおける模範解答の正しい分析方法から、高得点を獲得するための答案構成、設問ごとの記述テクニック、部門別の具体例までを徹底的に解説します。

目次

技術士二次試験の必須科目Ⅰで問われる本質と模範解答の活用法

令和7年度・近年の出題傾向と必須科目Ⅰで求められる視点

技術士第二次試験の必須科目Ⅰは、受験部門全体に関わる「現代社会の重要課題」をテーマに出題されます。近年の出題傾向を分析すると、以下のような社会的背景を軸にした出題が主流となっています。

■ 頻出する大テーマの例
● デジタルトランスフォーメーション(DX)と新技術(AI・IoT・ICT)の現場実装
● カーボンニュートラル(GX)・気候変動適応策・脱炭素社会の実現
● インフラ老朽化対策・維持管理の高度化・予防保全への転換
● 大規模自然災害に対する強靱化(防災・減災)とBCP(事業継続計画)
● 人口減少・少子高齢化に伴う担い手不足と生産性向上

これらのテーマに対し、単に現場レベルの工法や要素技術を羅列するのではなく、国や社会全体の視点から俯瞰し、技術的課題を抽出・解決する能力が求められます。

模範解答を読む前に知るべき試験採点基準(コンピテンシー評価)

日本技術士会が公表している試験要綱において、必須科目Ⅰで評価される資質能力(コンピテンシー)は主に以下の4項目です。

評価項目(コンピテンシー)必須科目Ⅰにおける具体的な確認ポイント
専門的学識受験部門全般にわたる専門知識と社会的背景を正しく理解しているか
問題解決多面的な課題を抽出し、複合的な要因を考慮した実効性ある解決策を提示できるか
課題遂行新たに生じるリスクや制約要因を予見し、工程・コスト・安全面から適切な対策を打てるか
技術者倫理公衆の安全・健康・福祉を最優先にし、法令遵守や社会の持続可能性を配慮しているか

模範解答を読む際は、文章の上手さを見るのではなく、「どの段落でどのコンピテンシーをアピールしているのか」という採点官の目線で読み解くことが合格への第一歩です。

模範解答を単なる丸暗記ではなく「合格の型」として活用するコツ

市販の模範解答集や合格論文集を手にしたとき、絶対にやってはいけないのが「丸暗記」です。本番で全く同じ問題が出ることはまずありません。

模範解答から学ぶべきは、「論理の展開パターン(型)」です。

■ 模範解答から抽出・学習すべき3つの要素
● 文章の黄金比率: 設問(1)〜(4)の配分バランス
● ロジックの接続: 課題→解決策→リスク→倫理への自然なつなぎ方
● 専門用語と客観的根拠: 白書や国土交通省・経済産業省等の公的施策用語の使い方

必須科目Ⅰの問題文を攻略する骨子(プロット)作成技術

論文をいきなり原稿用紙に書き始めてはいけません。試験開始直後の20〜30分間を使って、問題用紙の余白に強固な「骨子(プロット)」を作成することが、A判定論文を書く絶対条件です。

問題文から背景・技術的課題・制約条件のキーワードを抽出する

問題文には、出題者が書いてほしい「意図」と「制約」が散りばめられています。

■ 問題文読み解きの手順
● 背景の特定: なぜ今、このテーマが問題になっているのか(例:気候変動の激甚化、熟練技術者の大量退職)
● 前提条件の確認: 対象範囲、地域特性、法制度、期間などの指定を見落とさない
● キーワードのマーク: 問題文中の主要キーワードに下線を引き、論文内の見出しや本文にそのまま反映させる

設問(1)〜(4)の要求事項を整理し答案の全体配分を決定する

必須科目Ⅰは原稿用紙3枚(600字×3枚=1,800字)で記述します。配分バランスが崩れると減点対象となるため、以下の配分を目安に骨子を組みます。

■ 必須科目Ⅰの文字数・配分目安
● 設問(1) 多面的な課題抽出: 約500〜550字(原稿用紙1枚弱)
● 設問(2) 最重要課題と解決策: 約650〜700字(原稿用紙1枚強)
● 設問(3) 新たなリスクと対策: 約350〜400字(原稿用紙半枚強)
● 設問(4) 技術者倫理・持続可能性: 約200〜250字(原稿用紙半枚弱)

受験部門の特性と社会課題を両立させる留意点

必須科目Ⅰは「部門全般」の知識を問うものですが、机上の空論や一般論に終始してはいけません。

例えば建設部門であれば「社会資本整備・インフラ運用」、電気電子部門であれば「電力系統・情報通信基盤」といった、自身の受験部門ならではの技術的解決策を必ず組み込む必要があります。

合格する必須科目Ⅰの基本4段構成と模範記述パターン

文部科学省・日本技術士会の試験形式に沿った、必須科目Ⅰの標準的な構成パターンを解説します。

【設問(1)】多面的な視点からの課題抽出と分析

ここでは、異なる複数の切り口(技術面・運用面・人材面・制度面など)から3つの課題を抽出します。

■ 設問(1)の記述パターン
● 切り口1(ハード・技術面): 〇〇技術の導入と標準化における課題
● 切り口2(ソフト・運用面): データの利活用と組織間連携における課題
● 切り口3(人材・制度面): デジタル人材の育成と維持管理体制の構築における課題

各課題は「現状の問題点」→「技術的に克服すべき目標(〜が課題である)」の順で論理的に記述します。

【設問(2)】最重要課題の選定と複数の具体的解決策

抽出した3つの課題の中から最重要課題を1つ選定し、その選定理由を明記した上で、複数の解決策を提示します。

■ 記述のポイント
● 選定理由: なぜ他の2つではなく、これを最優先とすべきなのか(緊急性、影響度、費用対効果、波及性などの観点)
● 複数の解決策: 解決策は必ず2〜3項目提示し、最新技術(DX、新素材、新工法等)を具体的に盛り込む

【設問(3)】新たに生じるリスクとその防止策・軽減策

解決策を実行した場合に、副次的に発生する「新たなリスク」を予見し、その対応策を述べます。

■ 記述のポイント
● 単なる「予算不足」「人材不足」など解決策の未達成をリスクにしてはならない
● 「DX推進に伴うサイバーセキュリティリスクや通信途絶」「新工法導入に伴う初期コスト増と未知の劣化挙動」など、解決策を実行したからこそ新たに生まれるリスクを挙げる

【設問(4)】技術者倫理・社会の持続可能性への配慮

業務遂行にあたり、技術士として遵守すべき倫理規程や持続可能性の視点を述べます。

■ 記述のポイント
● 技術者倫理: 公衆の安全・健康・福祉の最優先、情報漏洩防止、説明責任(アカウンタビリティ)
● 持続可能性: SDGs、脱炭素、ライフサイクルコスト(LCC)の最小化、将来世代への影響配慮

高評価を獲得する必須科目Ⅰの答案作成4ステップ

【ステップ1】出題分析
・背景・社会要請の把握
・制約条件の抽出
▼
【ステップ2】多面的課題・解決策の整理
・3つの切り口で課題抽出
・技術的根拠のある解決策
▼
【ステップ3】リスク・倫理の肉付け
・副次的リスクと予防策
・公衆安全・持続可能性
▼
【ステップ4】原稿執筆・時間管理
・見出し構造の統一
・文字数90%以上の達成

ステップ1:出題意図を読み解き技術的課題を具体化する

問題文が求めているテーマを抽出し、関連する国の白書やガイドラインの基本方針と合致しているか確認します。独りよがりな意見ではなく、技術士としての公的・客観的な視点で課題を言語化します。

ステップ2:技術的視点と社会的要請の両軸から解決策を整理する

解決策には、要素技術の名称だけでなく、「何を」「どのように適用し」「どう効果を出すか」を具体的に書きます。抽象的なスローガン(例:「関係者で意識を共有する」)は減点対象です。

ステップ3:リスクマネジメントと倫理的観点で記述を盤石にする

技術士法第45条の2(信用失墜行為の禁止)や第45条の3(技術士等の秘密保持義務)、第45条の4(技術士等の公益確保の責務)を念頭に置き、公益確保の姿勢をアピールします。

ステップ4:文字数・時間・答案形式を管理して最後まで書き切る

必須科目Ⅰ(3枚・1,800字)の解答時間は2時間(120分)です。

■ 推奨タイムスケジュール
● 0〜25分(25分): 骨子作成(設問要求チェック、構成決定)
● 25〜110分(85分): 論文清書(原稿用紙3枚を丁寧に記述)
● 110〜120分(10分): 見直し・誤字脱字修正・論理チェック

必ず各ページ90%以上(合計1,650〜1,750字程度)を埋めるように訓練しましょう。

近年の過去問比較から導く「出題傾向と共通フレームワーク」

令和6年・令和7年度の出題傾向に見る重要キーワード

近年出題された各部門の必須科目Ⅰを比較すると、部門を超えて共通するキーワードが存在します。

共通テーマ主要キーワード例
レジリエンス強化国土強靱化、気候変動適応、流域治水、BCP、サプライチェーン強靱化
生産性革命DX、生成AI、BIM/CIM、ロボティクス、自動化・遠隔施工、省力化
脱炭素・循環型社会カーボンニュートラル、再生可能エネルギー、サーキュラーエコノミー、LCA
インフラマネジメント予防保全、アセットマネジメント、長寿命化、モニタリング技術、点検ドローン

過去問比較から浮き彫りになる必須科目Ⅰの普遍的テーマ

技術士試験の問題文は毎年変わりますが、問われている本質は「社会の急激な変化に対し、技術を活用していかに持続可能なインフラ・産業基盤を維持・発展させるか」に集約されます。

テーマが変わってもブレずに対応できる「万能フレームワーク」

どのような出題であっても、以下のフレームワークを頭に入れておけば、破綻のない骨子を即座に組み立てることができます。

■ 課題抽出の3軸フレーム
1.技術開発・実装の視点(ハード面の整備・デジタル化)
2.制度・マネジメントの視点(ガイドライン策定、データ共有、官民連携)
3.人材育成・環境整備の視点(リスキリング、労働環境改善、体制確保)

部門別事例分析:必須科目Ⅰの模範解答展開例

主要部門における必須科目Ⅰの課題設定と解決策の展開例を紹介します。

建設部門:インフラ老朽化・防災減災・DX(i-Construction等)

● テーマ例: インフラの老朽化対策と維持管理の効率化

● 多面的課題:

  1. 膨大な既存ストックに対する効率的・高精度な点検体制の構築
  2. 地方自治体等における維持管理予算および専門技術者不足への対応
  3. 得られた点検・補修データのデジタル化と一元管理プラットフォームの構築● 最重要課題と解決策:
  • 最重要課題:点検体制の効率化・高度化
  • 解決策:ドローンやAI画像診断による点検の省力化、光ファイバーセンサー等を用いた常時モニタリング体制の導入

上下水道・環境部門:施設更新・気候変動適応・地域共生

● テーマ例: 人口減少下における上下水道システムの持続性確保

● 多面的課題:

  1. 収益減少に伴う老朽施設の計画的更新とダウンサイジング
  2. 局地的大雨(ゲリラ豪雨)に対する浸水対策と雨水管理
  3. 官民連携(PPP/PFI、コンセッション方式)による広域化・事業継続● 最重要課題と解決策:
  • 最重要課題:官民連携による事業基盤の強化と広域化
  • 解決策:広域的なブロック化による施設統廃合、包括的民間委託による維持管理業務の効率化

農業部門・森林部門:スマート農業・持続可能な農林水産業の推進

● テーマ例: 農業分野における生産性向上と温室効果ガス削減

● 多面的課題:

  1. スマート農業技術(自動操舵トラクター等)の導入コスト低減とデータ連携
  2. 農業農村インフラの強靱化と長寿命化
  3. 有機農業の拡大と環境負荷低減技術の確立● 最重要課題と解決策:
  • 最重要課題:スマート農業技術の実装と地域営農体制の強化
  • 解決策:農業機械のシェアリングシステムの構築、営農管理アプリによる栽培データの可視化

電気電子・機械部門:脱炭素・GX・次世代デジタルインフラの構築

● テーマ例: 電力系統の安定化と再生可能エネルギーの主力電源化

● 多面的課題:

  1. 再エネ大量導入に伴う系統連系制約と周波数変動への対策
  2. 大容量蓄電池システムや系統用インバータのコスト低減と安全性確保
  3. 電力需給バランスを調整する分散型エネルギーリソース(DER)の高度制御● 最重要課題と解決策:
  • 最重要課題:分散型エネルギーリソースの統合制御システムの確立
  • 解決策:VPP(バーチャルパワープラント)技術の実装、AIを用いた高精度な発電・需要予測技術の導入

模範解答を写すだけでは落ちる!実力を伸ばす正しい学習法

多くの受験生が「模範解答をたくさん読んだのに本番で書けない」という壁にぶつかります。その原因は「インプット偏重」にあります。

模範解答・解説・過去問を組み合わせた3段階の学習サイクル

【第1段階:トレース・構造分析】
模範解答を骨子レベル(箇条書き)に分解し、論文の構造を理解する。
▼
【第2段階:自力骨子作成+部分執筆】
別の過去問を使い、30分で骨子を作成。模範解答の骨子と比較検証する。
▼
【第3段階:完全模擬試験(時間測定)】
本番と同じ解答用紙を使い、2時間計って1,800字を書き切る。

自身の業務経験・専門知見を技術士視点へ昇華させる方法

自分の日常業務で得た知見は、論文に説得力を持たせる強力な武器になります。

ただし、個別の現場のローカルルールや社内用語をそのまま書いてはいけません。「国土交通省の技術基準」「JIS規格」「国の長期戦略」などの公的枠組みに置き換えて表現することが大切です。

選択科目の専門知識を必須科目Ⅰへ活用する方法

選択科目(科目Ⅱ・科目Ⅲ)の学習で蓄積した工法や技術的知見は、必須科目Ⅰの設問(2)「解決策」における具体例として非常に有効です。

必須科目Ⅰの大きな枠組みの中に、選択科目の具体的な要素技術をアクセントとして組み込むことで、「技術的厚みのある質の高い論文」に仕上がります。

論文完成後に必須のセルフチェックシート

論文を書き終えたら、必ず以下のチェックリストに沿って推敲を行ってください。

課題・解決策・リスクの論理的一貫性を確認するチェック項目

[ ] 設問(1)で挙げた3つの課題は、それぞれ異なる視点(多面的)になっているか?
[ ] 設問(2)で選んだ最重要課題は、設問(1)で抽出した課題の中から選ばれているか?
[ ] 設問(2)の解決策は、選定した最重要課題を直接解決するものになっているか?
[ ] 設問(3)のリスクは、解決策を実行したことによって新たに発生する事象か?
[ ] 設問(4)は、単なる一般論ではなく技術者としての具体的行動規範に言及しているか?

技術者倫理・公衆の安全・経済性・持続可能性の記載漏れ防止

[ ] 「公衆の安全、健康及び福利の最優先」が明確に意識されているか?
[ ] ライフサイクルコスト(LCC)や費用対効果への配慮があるか?
[ ] 将来世代に負の遺産を残さない持続可能性(SDGs、環境配慮等)に触れているか?

専門用語の使い方と文章表現・推敲の基準

[ ] 主語と述語のねじれ、一文が長すぎる(3行以上続く)箇所はないか?
[ ] 「〜と思う」「〜と考えられる」等の曖昧な表現を避け、「〜である」「〜とする」と言い切っているか?
[ ] 略語(アルファベット頭字語など)を初出時に正式名称付きで記載しているか?

技術士二次試験の合格を確実にするロードマップと講座活用法

独学の限界を見極めて個別指導・論文添削を活用すべき基準

技術士試験は減点方式ではなく、「コンピテンシーが伝わっているか」を総合評価する試験です。そのため、独学では「自分の文章のどこが論理破綻しているのか」「なぜ不合格になったのか」を客観的に把握することが極めて困難です。

■ 第三者の指導・添削を受けるべきタイミング
● 初めて二次試験を受験し、論文の正しい書き方が定まっていない方
● 過去にB判定・C判定で涙を呑み、何が減点要因か分からない方
● 論文を書くのに時間がかかり、制限時間内に3枚をまとめきれない方

合格者の多くは、早い段階で専門の指導者による論文添削を受け、「自分の癖」を修正して合格水準の思考パターンを体得しています。

受験部門別に解答練習を継続する学習計画

二次試験合格に向けた年間スケジュールの目安は以下の通りです。

■ 合格に向けた学習ロードマップ
● 秋〜冬(10月〜12月): 出題傾向の把握、骨子作成の基礎習得、専門用語・公的施策のインプット
● 冬〜春(1月〜3月): 過去問5〜10年分の骨子作成、必須科目Ⅰの模範論文ストック作成
● 春〜直前(4月〜6月): 添削指導による論文のブラッシュアップ、選択科目(Ⅱ・Ⅲ)の並行対策
● 直前期(7月): 本番形式(時間測定)での模擬演習、想定問題への適応力強化

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この記事を書いた人

横浜すばる技術士事務所
代表:横浜すばる
技術士(建設部門ー施工計画、施工設備及び積算) (総合技術監理部門)

技術士一次試験、技術士二次試験、技術士総合技術監理部門とすべて1回で合格しました。
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