技術士二次試験は、数ある国家資格の中でも最難関の一つに数えられます。一次試験の合格率が約30%、そして二次試験の合格率が約10%。最終的なストレート合格率は「30% × 10% = わずか3%」という非常に狭き門です。
受験者数に対する合格者の割合を考えれば、実に33人に1人しか合格できない計算になります。これを偏差値に換算すると「70以上」に相当し、東京大学の入学試験に匹敵するほどの難易度と言っても過言ではありません。
これほど過酷な試験であるため、毎年多くの受験生が挑戦しては涙を呑んでいます。しかし、その中には「何年も受験しているのに、なぜか不合格を繰り返してしまう人」が一定数存在します。
なぜ、十分な実務経験や知識があるにもかかわらず、不合格のループから抜け出せないのでしょうか?その根本的な原因は、勉強量や知識の不足ではなく、実は「思考(マインドセット)」のあり方にあります。
今回は、不合格を繰り返す受験生が陥りがちな「B層理論」をベースに、合格する人と不合格になる人の決定的な違い、そして脳のメカニズムから紐解く「思考改革のステップ」を徹底解説します。
参考:日本技術士会
技術士受験生のパターンは3通り:あなたはどの「層」に属しているか?
当講座(Yokosuba技術士受験講座)には、毎年多くの受験生から切実な相談が寄せられます。これまでに500名以上の受験生を指導してきた中で、受験生のタイプは大きく「C層」「B層」「D層」の3つのパターンに分類できることが分かりました。
(※より上位の「A層」も存在しますが、ここでは割愛します)
まずは、自分がどのパターンに該当しているか、客観的にチェックしてみてください。
受験生の3つのパターン分類表
| 受験生のタイプ | 試験に対する認識と覚悟 | 主な質問の内容 | 特徴と合格への距離 |
| C層(合格予備軍) | 難易度を正しく理解し、合格のための強い覚悟を持っている。 | 「どうすれば合格できますか?」という方法論の質問。 | 将来から逆算して行動できるため、早い時期に合格する。 |
| B層(要注意ゾーン) | 難しいことは知っているが、意識や覚悟がどこか中途半端。 | 「なぜ私は合格しないのですか?」という不満や疑問の質問。 | 自分の考えに固執しがち。運良く筆記に通っても口頭で落ちるリスク大。 |
| D層(迷走ゾーン) | 試験の難易度や制度を把握せず、受ければ受かると思っている。 | 合否に直接関係のない、重箱の隅をつつくような質問。 | お金も時間もかけず、一人で悩み続けて結局行動を起こさない。 |
各層の質問に現れる「決定的な違い」
この3つの層の違いは、講師に対する「質問の質」に如実に現れます。
■C層の受験生は、時間とお金を投資する覚悟ができており、「合格という目標を達成するために、今何をすべきか」という前向きな質問をしてきます。
■B層の受験生も時間やお金を掛けはするものの、視点が常に「過去の不合格」に向いており、「なぜ自分が落ちたのか(自分は悪くないはずなのに)」という、自己正当化に近い質問をしがちです。
■D層の受験生は、学習への投資(時間・費用)を惜しみ、インターネット上の無料情報だけで何とかしようとします。その結果、本質から外れたどうでもよい疑問に1日中一人で悩み、答えが出ずに姿を消してしまいます。
不合格を繰り返す人の多くは、この中の「B層」に停滞しています。では、B層から抜け出すにはどうすればよいのでしょうか。
将来の目標から逆算して今を考える「逆算思考」の重要性
C層とB層を分ける最大の要因は、「逆算思考」ができているかどうかです。
C層:未来から今を考える「逆算型」
C層の受験生は、「技術士合格」という将来の明確な目標を起点にしています。
「合格するために、今の自分の論文には何が足りないのか?」「自分の考え方は試験の意図に合致しているか?」を常に確認します。もし進む方向が間違っていれば、素直に講師の指導を受け入れて修正し、正しければそのまま迷わず突き進みます。だからこそ、C層の人は短期間で確実に合格を掴み取ります。
B層:今から未来を漠然と見つめる「積み上げ型」
一方で、B層の受験生は「今これだけ頑張っているから、いつか将来合格できるだろう」という、根拠のない積み上げ型の思考をしています。
最大の問題は、「自分の現在の考え方やスタイルが正しい」と思い込んでいる点にあります。そのため、試験に落ちても「自分の論文のどこが論理的に悪かったのか」を深く反省し、考え方そのものを根本から変えようという発想に至りません。
もちろん、B層の受験生であっても、20~30回と受験を繰り返せば、問題の相性や運が良く「まぐれ合格」することはあります(合格者の10人に1人はこのタイプです)。
しかし、そうした「考え方が変わっていない状態」で運良く筆記試験を突破しても、その後の口頭試験の準備不足や、面接官との論理的対話の失敗によって、最終的に不合格になる事例が後を絶ちません。
「結果の法則」と人間の脳・動物の脳のメカニズム
不合格という「結果」を変えるためには、行動を変えるだけでは不十分です。物事が結果に至るまでには、以下のような絶対的なプロセスが存在します。
思考⇒考え方⇒行動⇒結果
これを【結果の法則】と呼びます。
多くの人は「不合格(結果)」を変えるために「勉強時間を増やす(行動)」というアプローチを取りがちですが、その根底にある「思考」と「考え方」が変わっていなければ、行動の質が変わらず、同じ結果を繰り返すことになります。
では、この「思考」を支配しているものは何でしょうか。それは、私たちの脳のメカニズムです。
人間の脳 vs 動物の脳
私たちの脳内では、常に2つの異なる思考がせめぎ合っています。
| 脳のタイプ | 司る思考 | 特徴と命令の方向 | 該当する受験生 |
| 人間の脳(理性) | 論理的思考 | 言語や論理を操る進化した脳。「将来の欲求や目標」を満たすために、長期的に正しい行動を体に命令する。 | C層(人間の脳が動物の脳を支配している) |
| 動物の脳(本能) | 直感的思考 | 進化の初期からある原始的な脳。「現在の目先の欲求」を満たすため、楽なこと、快楽を体に命令する。 | D層(人間の脳が動物の脳に完全支配されている) |
※B層の受験生は、この「人間の脳」と「動物の脳」が常に激しく衝突し、相反する命令に振り回されて中途半端になっている状態です。
合格したければ「動物の脳」を説得・支配せよ
技術士試験に合格するためには、膨大な時間を論文執筆や専門知識の整理に費やす必要があります。「勉強をしなければならない」と理解しているのは、あなたの「人間の脳」です。
しかし、本音では「勉強は面倒だし、疲れるからやりたくない、遊びたい」と感じるはずです。これが「動物の脳」による本能的な命令です。
動物の脳は非常に強力で、放置すれば簡単に「サボる」という行動を引き起こします。合格を掴み取るためには、人間の脳が主導権を握り、動物の脳を論理的に説得し続けるしかありません。
具体的には、毎日自分自身に対して以下のように語りかけ、動物の脳を教育していきます。
■「今は辛いかもしれないが、技術士に合格すれば生涯にわたる大きな武器になる」
■「資格を取得すれば、社内での評価が上がり、年収も大幅にアップ(あるいは好条件での転職)ができる」
■「勉強することは自分を危険にさらすことではない。むしろ人生を豊かにするための自己投資だ」
このように毎日自問自答し、目的意識を刷り込むことで、初めて「人間の脳」が「動物の脳」を支配できるようになります。これができている状態こそが、最短合格を果たす「C層の思考」なのです。
思考を変えてB層を脱出するための「表現の法則」
考え方(思考)をB層からC層へと切り替えることができたら、次はその思考を実際の論文試験でアウトプットするための【表現の法則】を実践していきましょう。
技術士二次試験の筆記試験は、単に知識を並べるだけの試験ではありません。あなたの「技術士としての論理的思考力」を論文という形で表現する試験です。具体的なステップは以下の通りです。
1.理解: 試験の採点基準や、合格する論文の共通ルールを正しく「理解」する。
2.暗記: 理解した論文の骨組みや、必須となるキーワード・専門知識を「暗記」する。
3.骨子作成: 過去問題を読み、いきなり書き始めるのではなく、まずは解答の「骨子(ストーリー)」を論理的に組み立てる。
4.論文執筆: 組み立てた骨子に基づき、試験官に伝わる表現で実際に論文を「執筆」する。
思考を論理的に変え、この「表現の法則」を正しくトレースすれば、技術士試験は決して突破できない壁ではありません。
まとめ:思考が変われば、結果は必ず変わる
技術士二次試験に合格するために最も必要なもの、それは単なる暗記量ではなく、「論理的に物事を捉え、表現する思考力」です。
もし、あなたがこれまでに不合格を繰り返し、「なぜ受からないのだろう」と悩んでいるとしたら、それはB層の思考にとどまっているサインかもしれません。
思考⇒考え方⇒行動⇒結果
この「結果の法則」を胸に刻み、常に「自分は今、人間の脳(論理)で行動しているか?動物の脳(目先の楽)に流されていないか?」を自問自答してください。
思考を変え、行動を変えれば、次回の試験結果は必ず「合格」へと変わります。私たちと一緒にB層を脱出し、技術士の栄冠を勝ち取りましょう!



