技術士二次試験の論文を書いていると、「専門知識は間違っていないはずなのに評価されない」「添削を受けるたびに別の箇所を指摘される」と悩むことがあります。答案の評価を落とす原因は、知識不足だけではありません。設問への答え方、論理のつながり、具体性、読みやすさの小さな欠点が重なると、伝えたい内容が採点者へ届きにくくなります。
大切なのは、減点されそうな表現を暗記することではなく、答案のどこで評価を失いやすいかを順番に診断することです。この記事では、技術士二次試験の論文でよくある失敗を、悪い例と改善例を対比しながら解説します。書き終えた答案を自分で直す手順や、同じミスを繰り返さない練習方法も紹介します。
論文の見直しは、誤字脱字から始めるのではなく、「設問に答えたか」「結論と理由がつながったか」「具体策を実行できる形で書いたか」の順に行うと効果的です。
技術士二次試験の論文で減点される原因は知識不足だけではない
技術士二次試験の答案では、覚えた専門用語の数よりも、問われた条件の中で課題を捉え、実行可能な解決策を論理的に説明できるかが重要です。十分な知識があっても、設問要求から外れたり、原因と解決策が対応していなかったりすれば、知識を適切に使った答案として伝わりません。
「減点される書き方」を四つの層に分ける
答案の失敗は、四つの層に分けると診断しやすくなります。第一は設問要求のずれ、第二は論理構成のずれ、第三は具体性の不足、第四は文章表現の読みにくさです。上位の層ほど答案全体への影響が大きいため、文章を整える前に設問と構成を確認します。
- 設問要求:問われた対象、立場、条件、個数、動作に答えているか
- 論理構成:課題、原因、解決策、効果、リスクが対応しているか
- 具体性:主体、対象、手段、手順、確認方法が見えるか
- 文章表現:一文が長すぎず、主語と述語、指示語、段落の役割が明確か
採点者に推測させる答案は伝わりにくい
受験者は、自分の業務や学習内容を知っているため、説明を省略しても意味が通じるように感じます。しかし、採点者は受験者の頭の中を知りません。「適切に対応する」「関係者と連携する」だけでは、誰が、何を、どのように行うのかを推測しなければなりません。答案は、採点者が文脈を補わなくても筋道を追える形にします。
なお、ここでいう「減点」は、公式の採点表の点数配分を断定する意味ではありません。本記事では、設問への適合や論理の明確さを損ない、評価されにくくなる可能性がある書き方を指します。採点基準を推測するより、読み手に明確に伝わる答案を作ることへ集中しましょう。
設問要求を外して評価を落とす書き方と改善例
最初に確認したいのは、答案が設問に答えているかです。文章が流麗でも、問われていない内容を長く書けば、必要な内容に使える字数が減ります。問題文を読んだら、対象、立場、条件、求める動作、必要な個数を分解し、骨子の見出しと対応させます。
背景説明が長く、問われた内容が薄い
悪い例は、「近年、社会環境が大きく変化し、さまざまな問題が発生している」と背景を重ね、肝心の課題や解決策が後半に少ししか出てこない答案です。背景は論点を理解するために必要ですが、設問が課題を三つ求めるなら、三つの課題とその観点を明示する方が優先です。
改善例は、「担い手不足の観点から、限られた人員で維持管理の品質を確保することが課題である」と、観点と実現したい状態を一文で示す書き方です。その後に、なぜ課題なのかを必要な範囲で説明します。背景から課題へ進むのではなく、先に課題を示してから理由を補うと、設問への回答が見えやすくなります。
課題・原因・解決策を混同する
「人員が不足している」は問題や原因の説明になりやすく、「ICTを導入する」は解決策です。これらを課題として並べると、何を実現すべきかが曖昧になります。課題は「少人数でも点検精度を維持できる体制を構築する」のように、解決すべき方向を示します。
用語を厳密に使い分ける目的は、難しい表現にすることではありません。問題は現在起きている好ましくない状態、原因はその状態を生む要因、課題は解決に向けて取り組むべきこと、解決策は課題を実現する手段です。この順番で整理すれば、設問ごとの回答が混ざりにくくなります。
条件や立場を途中で忘れる
問題文に「技術者として」「限られた予算の中で」「複数の関係者が参加する事業で」などの条件がある場合、その条件は答案全体を方向づけます。一般論として望ましい施策を書くだけでは、指定された立場や制約の中で判断したことが伝わりません。
骨子の上部に条件を短く書き、各解決策を選ぶ時に条件へ戻ります。たとえば予算制約があるなら、すべてを一斉更新するのではなく、リスク評価で優先順位を決める、既存データを活用して調査範囲を絞るなど、制約に対応した判断を示します。
覚えてきた文章を先に置き、後から問題文へ合わせようとすると、条件や問われた個数を外しやすくなります。設問要求を見出しに変えてから、使える知識だけを選びましょう。
論理がつながらず減点につながりやすい失敗例
設問に沿った項目がそろっていても、項目同士の因果関係が弱いと説得力が下がります。論文は情報の一覧ではなく、なぜその課題を選び、その解決策で何が変わるのかを説明する文章です。各段落を単独で見るだけでなく、前後がつながっているかを確認します。

原因と解決策が対応していない
悪い例は、原因として「点検データが部署ごとに分散している」と書いた後、解決策で「新技術の導入を推進する」とだけ述べる答案です。新技術が何を解決するのか分からず、原因との間に飛躍があります。
改善するなら、「各部署の点検様式を統一し、共通データベースへ集約する。更新責任者と入力期限を定め、施設ごとの劣化傾向を横断的に比較できる状態にする」と書きます。原因が情報の分散なら、解決策は情報の標準化、集約、運用責任まで対応させます。
解決策を並べるだけで優先順位がない
複数の施策を列挙すると知識量は示せますが、どれを重視するかが見えないと技術者としての判断が弱くなります。「まず」「次に」「並行して」と順序を示し、その理由をリスク、効果、実現性、緊急性などの観点から説明します。
たとえば、「まず高リスク施設を抽出する。限られた人員を重大事故の影響が大きい施設へ優先配分できるためである。次に、定型点検へデジタル記録を導入し、継続的にデータを蓄積する」と書けば、施策の関係と判断基準が見えます。
効果を書いて終わり、リスクや留意点が浅い
解決策の効果を「効率化できる」「品質が向上する」で終えると、実務的な検討が伝わりにくくなります。何の時間が減るのか、誰の判断が早くなるのか、どの品質を確認できるのかまで一段具体化します。
さらに、施策を実施したことで生じる新たなリスクを考えます。データベース化なら、入力品質のばらつき、権限管理、障害時の業務継続などが考えられます。留意点は「注意する」ではなく、入力ルールの教育、定期監査、バックアップ、代替手順などの対応まで書きます。

抽象的で読みにくい技術士論文の直し方
構成が正しくても、抽象語が多く一文が長い答案は、読み手が内容を把握するまでに時間がかかります。文章力を飾る必要はありません。技術的な判断を誤解なく伝えるため、主体、対象、手段、目的を明確にします。
「適切に」「十分に」「連携する」で終わらせない
「関係者と十分に連携し、適切に対応する」は、一見もっともらしく見えますが、実施内容が分かりません。改善例は、「発注者、設計者、施工者による週次調整会議を設け、変更点、工程への影響、担当者、期限を共有台帳で管理する」です。
具体化する時は、すべての項目を細かく書く必要はありません。「誰が」「何を」「どの手段で」「どの基準により」「どう確認するか」から、重要な二つか三つを選びます。字数を抑えながら、実行場面を想像できる文章になります。
一文に複数の判断を詰め込まない
一文が長いと、主語と述語の対応が崩れ、どの施策がどの効果を生むのか分かりにくくなります。一文には原則として一つの中心的な判断を置きます。理由や補足が長くなる場合は文を分け、接続語で関係を示します。
たとえば、「点検を効率化するためデジタル技術を導入してデータを蓄積し、関係者が利用できるようにして予防保全を実施する」は多くの動作を含みます。「現場点検へ携帯端末を導入し、結果を共通形式で記録する。蓄積データから劣化傾向を分析し、補修時期を前倒しで判断する」と分けると流れが明確です。
指示語と主語の省略を見直す
「これにより」「そのため」が続く答案では、「これ」がどの施策を指すのか曖昧になることがあります。直前の名詞を繰り返してでも、「点検記録を標準化することで」のように対象を明記した方が安全です。
日本語では主語を省略できますが、発注者、管理者、施工者、住民など複数の主体が登場する段落では混乱が生じます。主体が切り替わる箇所では明示し、責任と役割が分かる文章にします。
抽象語を見つけたら削除するのではなく、「誰が何をするのか」という動作へ置き換えます。文章を短くするだけでなく、技術的な内容を一段具体化することが改善の目的です。
答案完成後に減点要因を見つける5段階のチェック手順
見直し時間が限られている時は、影響の大きい項目から確認します。誤字脱字を一つ直しても、設問を一項目外していれば答案全体の不足は残ります。次の五段階を固定し、過去問演習でも同じ順番で使いましょう。

1.設問の動詞と答案の結論を照合する
「述べよ」「説明せよ」「提案せよ」「論ぜよ」など、問題文の動詞に対応する回答があるかを確認します。課題を三つ求められたなら番号や見出しで三つを示し、最重要課題を選ぶなら選定結果と理由を明記します。答案の該当箇所へ線を引けない要求があれば不足です。
2.各段落の最初の一文だけを読む
段落の冒頭だけを追い、課題から解決策、効果、リスクへ流れているかを確認します。冒頭文だけで論旨が追えない場合、その段落の役割が曖昧かもしれません。結論を先に置き、理由や具体例を後へ配置します。
3.名詞ではなく動作を探す
DX、合意形成、人材育成、予防保全などの名詞を並べただけになっていないか確認します。重要語を丸で囲み、その直後に具体的な動作があるかを見ます。「予防保全を推進する」だけなら、「劣化予測に基づき補修優先度を毎年度更新する」などへ直します。
4.因果関係を逆向きにたどる
期待する効果から逆に、どの解決策で生じるか、その解決策はどの原因に対応するかをたどります。途中でつながらない箇所があれば、説明不足か施策の選択ミスです。順方向と逆方向の両方で読めると、論理の飛躍を見つけやすくなります。
5.最後に誤字・重複・字数を確認する
内容の確認を終えてから、誤字、脱字、同じ語尾の連続、不要な重複、番号のずれを見ます。書き直しで主語と述語が離れていないかも確認します。大幅な修正を最後に始めると新しいミスを作りやすいため、残り時間に応じて直す範囲を決めます。
同じ論文の失敗を繰り返さない改善練習
答案を一度直して終えると、次の問題で同じ失敗が起こりがちです。指摘を自分専用のルールへ変換し、次の骨子作成前と答案完成後に使うことで、改善が蓄積します。毎回すべてを直すのではなく、一回の練習で重点課題を一つか二つに絞ります。
添削コメントを五つの分類で記録する
コメントは、設問要求、論理構成、具体性、文章表現、知識不足に分類します。「具体性がない」とだけ記録せず、「解決策に主体と確認方法がなかった」のように、次回確認できる行動へ変えます。分類ごとの回数を数えると、自分の優先課題が見えてきます。
悪い例と改善例を一組で残す
模範的な文章だけを保存すると、なぜ直したかを忘れます。自分が書いた悪い例、その問題点、改善例を一組で残してください。たとえば「関係者と連携する」から「週次会議で変更内容と担当期限を共有台帳へ記録する」へ直した記録があれば、抽象語を具体化する方法を再利用できます。
一つの答案を三段階で書き直す
第一段階では設問要求と見出しだけを直し、第二段階では課題と解決策の対応を直し、第三段階で具体性と表現を整えます。一度に全文を書き換えるより、どの修正が答案を改善したかを理解しやすくなります。
時間がない日は、完成答案を最初から書き直す必要はありません。骨子だけを再構成する、一段落だけ具体化する、五分で設問照合をする練習でも構いません。短い練習を継続し、週末に一度だけ完成答案で総合確認すると、忙しい社会人でも改善の循環を作れます。
失敗の種類ごとに直す場所を変える
添削で指摘を受けると、全文を最初から書き直したくなるかもしれません。しかし、原因に合わない修正は時間がかかる割に再発を防げません。設問のずれなら問題文の読み方と骨子を直し、論理の飛躍なら段落間の対応を直し、抽象表現なら一文単位で動作を補います。失敗の種類と修正する場所を対応させることが重要です。
設問要求のミスは本文ではなく骨子から直す
課題を三つ求める問題で二つしか示していない、最重要課題の選定理由がない、指定された立場が反映されていないといった失敗は、文章表現を整えても解決しません。問題文へ戻り、要求ごとにチェック欄を作り、各要求に対応する見出しを骨子へ置き直します。
その後、既存の本文から使える材料を新しい見出しへ移します。使えない説明は削り、不足した回答だけを追加します。この方法なら、全文を感覚的に書き換えるよりも、どの要求を満たしたかを確認しながら修正できます。次回以降は、本文を書く前に同じ照合を行います。
論理のミスは「対応表」で可視化する
課題、原因、解決策、効果、リスクを横一列に並べた簡単な対応表を作ります。一つの課題に対して、原因と解決策を一本の線で結べるかを確認してください。解決策がどの原因にも結びつかないなら、知っている施策を付け足しただけになっている可能性があります。
たとえば、課題が「熟練者の減少下でも点検品質を確保する」、原因が「判断基準が暗黙知になっている」なら、解決策は「損傷判定例を画像付きで標準化し、研修後に判定一致率を確認する」と対応します。効果は判定ばらつきの縮小、リスクは標準外の損傷を見落とすこと、留意点は熟練者による例外事例の定期更新という流れです。
具体性のミスは5W1Hを全部書こうとしない
具体的に書こうとして、日時、場所、担当者、手順を細かく詰め込みすぎると、かえって中心論点がぼやけます。答案で必要なのは業務マニュアルの再現ではなく、施策が実行可能であると伝わる粒度です。主体、対象、手段、判断基準、確認方法の中から、その施策の有効性を支える要素を選びます。
たとえば、人材育成策なら「研修する」だけでなく、誰を対象に、何を習得させ、どのように習得を確認するかが重要です。一方、データ活用策なら、収集するデータ、分析方法、判断への反映が重要です。施策ごとに必要な具体性は異なるため、同じ型を機械的に当てはめないようにします。
文章表現のミスは音読と要約で直す
一文が長い、主語が途中で変わる、同じ説明が繰り返される場合は、段落を一文で要約してから読み直します。要約できない段落には、複数の論点が混在している可能性があります。段落を分けるか、中心論点と関係の薄い文を削ります。
音読すると、接続が不自然な箇所や息継ぎできない長文を見つけやすくなります。ただし、本番で音読する必要はありません。練習段階で音読し、自分が長くしやすい文型を把握します。「〜するとともに」「〜であり、さらに」が連続するなら、句点で分けるという自分用の修正ルールを作りましょう。
設問のミスは骨子、論理のミスは対応表、具体性のミスは施策に必要な要素、文章表現のミスは一文と段落を直します。原因と修正範囲を合わせると、復習時間を使いやすくなります。
技術士二次試験の論文でよくある質問
誤字脱字があると大きく評価を落としますか?
個別の採点への影響は断定できませんが、誤字脱字が多いと意味が取りにくくなり、見直し不足という印象につながる可能性があります。ただし、練習では誤字だけに集中せず、設問への回答、論理、具体性を先に確認してください。内容を整えた後で表記を直す順番が効率的です。
専門用語を多く使った方が評価されますか?
専門用語は、課題の分析や解決策を正確に説明するために使います。用語を並べるだけでは、技術者としての判断は伝わりません。用語を使った後に、それを誰がどのように実施し、何を確認するのかまで説明できるかを基準にしてください。
答案の型を覚えると設問から外れませんか?
課題、解決策、効果、リスクなどを整理する型は役立ちますが、毎回同じ文章を当てはめると設問の条件を外す危険があります。型は情報を並べる器として使い、見出しと中身は問題文に合わせて作り直します。
自分の答案の減点要因を見つけられません
答案を書いた直後は、自分の意図を覚えているため省略や飛躍に気づきにくいものです。時間を置いて段落冒頭だけを読む、設問要求と該当文を線で結ぶ、音読する方法を試してください。それでも同じ指摘が続く場合は、第三者の添削で弱点を特定する方法があります。
添削は何回受ければよいですか?
必要な回数は、現在の答案力や改善速度によって異なります。回数だけを目標にせず、前回の指摘を次の答案で直せたかを確認してください。設問要求、構成、具体性など重点項目を決め、修正前後を比較できる状態で受けると効果を高めやすくなります。
まとめ|減点要因は設問・論理・具体性・表現の順に直す
技術士二次試験の論文で評価を落としやすい書き方は、設問要求のずれ、論理の飛躍、抽象的な解決策、読みにくい文章に整理できます。誤字や言い回しだけを直すのではなく、設問に答えたか、課題と解決策が対応したか、実施場面が分かるかの順に確認してください。
改善では、悪い例と直した例を一組で残し、指摘を次回使えるチェック項目へ変えることが大切です。一つの答案を段階的に書き直せば、知識不足と書き方の問題を分けて理解できます。自力で弱点を判断しにくい場合は、論文添削や個別指導を利用し、優先して直すべき点を明確にする方法も検討しましょう。

