【令和5年度】技術士二次試験「筆記試験」の雑感~土質及び基礎編~

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令和5年度土質及び基礎の動向

7月16日、17日に技術士二次試験が実施されました。
筆記試験の問題が日本技術士会から公表されました。
今回は土質及び基礎について考えていきたいと思います。
土質及び基礎は技術士二次試験の中では比較的簡単な選択科目です。
理由は問題が毎年同じようなものが出題されるからです。
では令和5年度の問題をみてみましょう。

選択科目Ⅱ-2-1

模式図に示すように約50年前に造成された工場用地のうち,谷部に施工された盛土(以下,谷部盛土)が,集中豪雨によって崩落した。盛土のり面には植生工が施されており,崩落跡からは湧水が確認されている。谷部盛土を含む工場用地は,工場を所有する民間企業が所有しており,崩落箇所へのシート養生等の応急対策はすでに完了している。谷部盛土上には建屋等はなく,谷部盛土全体を撤去することも可能である。
この谷部盛土を復旧するに当たり, BCPの観点から耐震性も向上させることとなった。今後,谷部盛土の復旧・補強計画を進めるに当たり,調査・設計・施工の複数の段階において,土質及び基礎を専門とする技術者の立場から下記の内容について記述せよ。
( 1 )調査・設計・施工の段階のうち, 2つ以上の段階において検討すべき事項をそれぞれ挙げて説明せよ。
( 2 )復旧・補強計画の業務を進める手順を列挙して,それぞれの項目ごとに留意すべき 占工夫を要する点を述べよ。
( 3 )本業務を効率的,効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
参考:日本技術士会

Ⅱー2-1

ある受験生の解答

1.検討すべき事項
 谷部盛土の復旧・補強計画を進める上で、検討すべき事項を調査・設計・施工の3段階で列挙する。
1)調査段階
谷部盛土の地質調査が必要である。地形図から流れ盤や集水地形となっていないか確認し、ボーリング調査ですべり面位置と透水層・不透水層の有無を把握する。オールコアではなく半コア半ペネを適用すれば、谷部盛土のN値を知ることができる。また、法尻部での湧水量と降雨量も記録しておく。
2)設計段階
ボーリング調査から得たN値で内部摩擦角、粘着力を推定し、円弧すべり計算を実施する。ボーリングコア試料で土質試験を実施できれば、密度や強度を正確に求められる。その結果、すべり面の位置、すべり円弧中心、地すべり抵抗力を定量的に計算できるため、対策方法を具体的に提案できる。あわせて、湧水処理の必要性も検討する。
3)施工段階
復旧にあたり、地すべり抑制工による湧水対策を進める。具体的には、地表水排除工と地下水排除工を導入し、地下水上昇に対する対策とする。また、耐震性を向上させる際に地すべり抵抗力を地山に期待できない場合、地すべり抑止工として、杭工あるいはグラウンドアンカー工を積極的に検討する。
2.復旧・補強計画を進める手順と留意点・工夫点
1)追加の応急対策
落箇所へのシート養生に加えて、敷地境界手前に矢板やH鋼を打ち込むか、あるいは大型土嚢を並べることで、二次災害防止に留意する。
2)原位置での調査
現地踏査で、湧水量と湧水位置を記録し、集水箇所を把握し、ボーリング調査を開始する。半コア半ペネの活用で、すべり面となった原地盤面位置の確認とボーリングコア試料採取を同時に行えるように工夫する。
また、崩落部に近づけずに盛土部を全撤去する場合、弾性波探査、電気探査、表面波探査が有効である。
3)耐震性向上を見据えた対策工法の検討
ボーリング調査から得た土質物性値で円弧すべり計算を行い、地すべり抑止工を検討する。すべり面が原地盤面であれば杭工、さらに深部にすべり面があるならグラウンドアンカー工を検討する。地下水位が高すぎる場合、横ボーリング工を補助工法で使用する。
3.関係者との調整方策
工程表と出来高管理表に基づいた詳細施工計画書を早急に作成する。着手後は工程会議で進捗状況を細かく把握し、変更点は議事録に残して意思疎通を円滑に進める。また、工程遅延や品質不良が発生しないよう、3Mの最適配分を常に考慮しておくことが有効である。
                     以上

ある受講生から解答を頂きました。
それが以下になります。
正直に話すと、この解答はA~B判定の論文です。
合格点をとれているか否かはわかりませんが、横浜すばる技術士事務所では合格は難しいと思います。
よく書けているのですが、問題の本質を分かっていません。
この本質を理解しないと高得点にはつながらないと考えています。

解説

この問題は崩落した谷部盛土の復旧と補強が目的です。
復旧した後に補強を行います。
どのように補強を行うかといえば、崩落のメカニズムを解明してその弱点を補う必要があるのです。
そのためにまず何をするのかを問われているのが設問(1)になります。
調査段階ではどのように崩落したのかのメカニズムを調査し、その原因を検討する必要があります。
設計段階では解明したメカニズムに対してどのように補強をするのかを検討します。
施工段階では二次災害を起こさないための施工計画を検討する必要があります。
どの段階を書くにしても、この流れを理解してから解答してください。
そうでないとA判定の論文は書けません。

次に設問(2)ですが、問題文の題意がよくわかりません。
「復旧・補強計画の業務」の題意が分からないと思います。
上述の流れを書くのが一番無難だと考えています。
①崩落メカニズムの解明⇒②補強工法の検討⇒③施工計画の立案
と考えるのが一般的な流れになると思います。
留意する点や工夫する点なども業務の効率化を考えればすぐにできると思います。
たとえば①崩落メカニズムの解明では、後工程が多いため迅速かつ正確な成果を出すように留意する。
そのためには調査はドローンやAIなどの新技術を活用するなどの工夫をする。
などのようにつなげて行けばいいと考えています。

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