「技術士」は、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価またはこれらに関する指導の業務を行う者に対して与えられる、国家資格の中でも最高峰の称号です。
この「技術士」になるための最初の大きな関門が「技術士第一次試験(一次試験)」です。
「一次試験の難易度はどのくらい?」「どんな科目が出題される?」「効率的な勉強法を知りたい」といった疑問を持つ方に向けて、本記事では技術士一次試験の概要から科目、合格率、さらには一発合格を狙うための具体的な対策までを、5,000文字以上の圧倒的ボリュームで分かりやすく徹底解説します!
Contents
技術士一次試験の概要と受験メリット
技術士第一次試験は、技術士法に基づいて公益社団法人日本技術士会が実施する国家試験です。
この試験に合格し、所定の登録を行うことで「技術士補」という資格を得ることができます。また、技術士補として、あるいは指導技術士の下で実務経験を積むことで、最終目的である「技術士第二次試験」の受験資格を手に入れることができます。
まずは、試験の基本情報を整理していきましょう。
受験資格:年齢・学歴・経歴の制限は一切なし!
技術士一次試験の最大の特長の一つが、受験資格に制限が一切ないという点です。
■年齢制限なし
■学歴制限なし
■実務経験・業務経歴による制限なし
実務経験が必要となる二次試験とは異なり、理系の大学生や高専生、さらには理系分野に関心のある中高生でも受験可能です。過去には、なんと「小学4年生(9歳)」で合格したという驚きの実績もあり、門戸は誰にでも等しく開かれています。
一次試験に合格するメリット
1.「修習技術者」となり、二次試験への道が開ける一次試験合格(またはJABEE認定課程の修了)により修習技術者の地位を得られ、将来的に技術士(二次試験)を目指す必須条件をクリアできます。
2.若手技術者としての基礎力の証明になる科学技術全般の基礎知識からエンジニアとしての倫理観(適性)までを体系的に網羅しているため、企業からの評価や就職・転職の際のアピール材料になります。
3.社内での評価や資格手当の対象になる場合も建設、機械、電気など多くの大手・中堅技術系企業では、一次試験合格を「若手の登竜門」として推奨しており、報奨金や手当を支給するケースも少なくありません。
【年間スケジュール】試験日程と申込手順
技術士一次試験は、例年年に1回、秋(11月下旬)に実施されます。
申込期間が初夏に設定されているため、受験を検討している方は「うっかり申し込みを忘れていた」ということのないよう、スケジュールを把握しておくことが重要です。
基本的な年間スケジュール(例年)
| ステップ | 時期 | 実施内容・注意点 |
| 1. 受験申込書等の配布 | 6月中旬~下旬 | 日本技術士会のホームページからダウンロード可能。 |
| 2. 受験申込受付期間 | 6月中旬~下旬 | 必要書類を日本技術士会宛てに書留郵便で提出。 |
| 3. 試験会場の告知 | 10月下旬頃 | 官報および日本技術士会HPにて試験会場が公告されます。 |
| 4. 筆記試験の実施 | 11月下旬(日曜日) | 全国12の試験地にて一斉にマークシート方式で実施。 |
| 5. 正答の公表 | 試験終了後すぐ | 日本技術士会HPにて各科目の正答が速報されます。 |
| 6. 合格発表 | 翌年2月上旬頃 | 官報への氏名掲載、本人への合格証送付、成績通知が行われます。 |
試験地(全国12都道府県)
試験は以下の都道府県で実施されます。受験申込時にあらかじめ希望の試験地を選択します。
試験地一覧:
北海道、宮城県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県
試験科目と出題範囲の徹底分析
技術士一次試験は、すべてマークシート方式(五肢択一式)の筆記試験です。 試験科目は、大きく分けて「基礎科目」「適性科目」「専門科目」の3つで構成されています。
それぞれの科目について、出題内容を詳しく見ていきましょう。
基礎科目(科学技術全般にわたる基礎知識)
すべての技術部門の共通科目として、科学技術全般に関する広範な基礎知識が問われます。
出題は次の5つの分野に分かれており、各分野から数問を選択して回答する形をとります。
1.設計・計画に関するもの:設計理論、システム設計、品質管理、生産管理など
2.情報・論理に関するもの:アルゴリズム、情報ネットワーク、論理回路、データ構造など
3.解析に関するもの:力学(構造力学、流体力学など)、電磁気学、数学など
4.材料・化学・バイオに関するもの:材料特性、無機・有機化学、バイオテクノロジーなど
5.環境・エネルギー・技術に関するもの:環境問題、エネルギー動向、技術史、安全工学など
適性科目(技術士法第4章の遵守に関する適性)
「技術士としての倫理観や法的な義務」を遵守できるかを問う科目です。
技術士法第4章に定められている「技術士等の義務」(信用失墜行為の禁止、秘密保持義務、公益確保の責務、資質向上の責務など)を中心に、技術者倫理、PL法(製造物責任法)、環境倫理、知的財産権などから出題されます。
点数が取りやすく、「絶対に落とせない科目」と言えます。
専門科目(選択した1技術部門の専門知識)
受験者があらかじめ選択した、総合技術監理部門を除く20の技術部門の中から、それぞれの専門知識・基礎知識が問われます。
自身の専攻や現在の実務に最も近い部門を選択するのが一般的です。
20の技術部門と専門科目の範囲一覧
| 部門コード・名称 | 専門科目の名称 | 主な専門科目の範囲(例) |
| 01. 機械部門 | 機械 | 材料力学/機械力学・制御/熱工学/流体工学 |
| 02. 船舶・海洋部門 | 船舶・海洋 | 材料・構造力学/浮体の力学/計測・制御/機械及びシステム |
| 03. 航空・宇宙部門 | 航空・宇宙 | 機体システム/航行援助施設/宇宙環境利用 |
| 04. 電気電子部門 | 電気電子 | 発送配変電/電気応用/電子応用/情報通信/電気設備 |
| 05. 化学部門 | 化学 | セラミックス及び無機化学製品/有機化学製品/燃料及び潤滑油/高分子製品/化学装置及び設備 |
| 06. 繊維部門 | 繊維 | 繊維製品の製造及び評価 |
| 07. 金属部門 | 金属 | 鉄鋼生産システム/非鉄生産システム/金属材料/表面技術/金属加工 |
| 08. 資源工学部門 | 資源工学 | 資源の開発及び生産/資源循環及び環境 |
| 09. 建設部門 | 建設 | 土質及び基礎/鋼構造及びコンクリート/都市及び地方計画/河川、砂防及び海岸・海洋/港湾及び空港/電力土木/道路/鉄道/トンネル/施工計画、施工設備及び積算/建設環境 |
| 10. 上下水道部門 | 上下水道 | 上水道及び工業用水道/下水道/水道環境 |
| 11. 衛生工学部門 | 衛生工学 | 大気管理/水質管理/環境衛生工学(廃棄物管理を含む。)/建築衛生工学(空気調和施設及び建築環境施設を含む。) |
| 12. 農業部門 | 農業 | 畜産/農芸化学/農業土木/農業及び蚕糸/農村地域計画/農村環境/植物保護 |
| 13. 森林部門 | 森林 | 林業/森林土木/林産/森林環境 |
| 14. 水産部門 | 水産 | 漁業及び増養殖/水産加工/水産土木/水産水域環境 |
| 15. 経営工学部門 | 経営工学 | 経営管理/数理・情報 |
| 16. 情報工学部門 | 情報工学 | コンピュータ科学/コンピュータ工学/ソフトウェア工学/情報システム・データ工学/情報ネットワーク |
| 17. 応用理学部門 | 応用理学 | 物理及び化学/地球物理及び地球化学/地質 |
| 18. 生物工学部門 | 生物工学 | 細胞遺伝子工学/生物化学工学/生物環境工学 |
| 19. 環境部門 | 環境 | 大気、水、土壌等の環境の保全/地球環境の保全/廃棄物等の物質循環の管理/環境の状況の測定分析及び監視/自然生態系及び風景の保全/自然環境の再生・修復及び自然とのふれあい推進 |
| 20. 原子力・放射線部門 | 原子力・放射線 | 原子力/放射線/エネルギー |
試験の一部免除規定(JABEE等)
技術士一次試験には、一定の資格や条件を満たすことで試験の一部(または全部)が免除される制度があります。自分が対象になっていないか必ず確認しましょう。
JABEE(日本技術者教育認定基準)認定コースの修了者
大学や高専などの「JABEE認定プログラム」を修了して卒業した人は、技術士一次試験のすべてが免除されます。
卒業と同時に、一次試験を合格した人と同じ「修習技術者」の資格(技術士補となる資格)を得ることができます。
他の国家資格保持者による免除
特定の専門資格を持っている場合、一次試験の「専門科目」が免除されることがあります。
- 情報処理技術者試験の一部の上位資格(高度情報処理技術者など)を保持している場合、情報工学部門の専門科目が免除されるケースなどがあります。
既に「他の技術部門」の一次試験を合格している場合
すでにいずれかの技術部門で一次試験を合格している(または技術士補登録をしている・二次試験合格者である)場合、別部門で一次試験を再受験する際には、「基礎科目」および「適性科目」が免除され、「専門科目」のみの受験となります。
合格基準と合格率・難易度の真実
技術士一次試験に臨む上で最も重要なポイントは、「この試験は競争試験ではなく、絶対評価の試験である」という点です。
明確な合否判定基準:全科目50%以上で合格!
合格のために必要な得点率は非常にシンプルです。すべての科目で5割以上の得点を獲得すること、これが唯一の基準です。
| 試験科目 | 問題数(解答数) | 合否決定基準(合格ライン) |
| 基礎科目 | 出題35問中、15問を選択解答 | 50%以上(7.5点以上 / 15点満点) |
| 適性科目 | 出題15問すべて解答 | 50%以上(7.5点以上 / 15点満点) |
| 専門科目 | 出題35問中、25問を選択解答 | 50%以上(25点以上 / 50点満点) |
どれだけ周囲の受験生のレベルが高かろうが、問題が難しかろうが、自分が半分以上の正解をマークすれば確実に合格できます。足切り(一つの科目でも50%未満だと不合格)がある点にだけ注意してください。
合格率の推移と難易度
技術士一次試験全体の平均合格率は、例年30%〜50%前後で推移しています。しかし、年度や選択する「技術部門」によって合格率が20%台に落ち込むこともあれば、60%を超えることもあります。
この変動の理由は、前述の通り「絶対評価」だからです。問題の難易度が少し上がると合格者がグッと減り、易化すると合格者が跳ね上がります。
受験への心構え:
「合格率が低い年があるから難しい」と怯える必要はありません。マークシート方式(5択)であるため、全く分からない問題でも確率的に20%は当たります。確実な知識を半分身につければ届く試験なので、最後まで諦めずに受験を継続することが最大の合格への第一歩となります。

一発合格を掴む!効率的な勉強法と対策アドバイス
「科学技術全般」「専門知識」「技術者倫理」と、出題範囲の広さに圧倒されてしまう受験生が多いですが、実は「最も対策がしやすい試験」の一つでもあります。なぜなら、過去問題の類似・焼き直し問題が非常に多く出題されるからです。
ここからは、具体的な科目別の対策方法と学習のコツを伝授します。
過去問演習が「すべて」の基本!
一次試験対策において、最も効果的なのは「過去問を最低でも5〜7年分、繰り返し解くこと」です。
最初は解けなくても構いません。「問題を解く ➔ 解説を読む ➔ 周辺知識を覚える」というサイクルを3周以上繰り返すことで、出題のパターンや頻出テーマが自然と頭に入ってきます。
科目別の攻略アプローチ
【基礎科目】広く浅く、得意な分野で得点を稼ぐ
基礎科目の特徴は「35問中15問を選んで解く」という選択制である点です。
5つの分野(設計、情報、解析、材料、環境)すべてを完璧にする必要はありません。自分の得意な分野(例:学生時代の専攻が機械なら「解析・材料」、IT系なら「情報」など)を2〜3つ作り、そこで確実に得点します。
また、「環境・エネルギー・技術史」の分野は時事問題や暗記で解ける問題が比較的多いため、文系出身の方や計算が苦手な方におすすめの得点源です。
【適性科目】過去問のパターンを覚えれば満点も狙える!
適性科目は最も得点しやすい科目です。なぜなら、技術倫理の根本的な考え方や技術士法の内容は毎年変わらないため、過去問とほぼ同じ選択肢が何度も登場するからです。
過去問を5年分も解けば、どのような行動が「技術士として不適切か」が直感的に判断できるようになります。ここは時間をかけすぎず、隙間時間を利用して過去問を繰り返し、8割以上の高得点(貯金)を目指しましょう。
【専門科目】大学の基礎教科書+過去問で深く対策
35問中25問を選択して解答します。専門科目に関しては、基礎科目よりも専門的な計算問題や用語の定義が問われます。
過去問をベースに勉強を進めますが、解説を読んでも理解できない計算式や定理があれば、大学で使うような専門書やWeb上の技術解説サイトに戻って根本を理解することが大切です。25問を選択できるため、過去問で見た記憶のある「見覚えのある問題」を確実に選択して50%をクリアしましょう。
おすすめの勉強スケジュール(目安:3〜4ヶ月)
■1ヶ月目:情報収集と適性科目のマスター
過去問を1年分サラッと解いてみて、現在の実力と敵の強さを知る。
まずは一番簡単な「適性科目」を終わらせ、自信をつける。
■2ヶ月目:基礎科目の選択分野の絞り込みと演習
基礎科目の5分野のうち、自分が勝負する3分野を決定。
徹底的にその分野の過去問を解き、出題パターンを暗記する。
■3ヶ月目:専門科目の本格的な対策
一番配点が高く(50点満点)、重要となる専門科目にじっくり時間を割く。
計算問題は手を動かして解法を覚える。
■直前期(残り2週間):総復習と時間配分の確認
本番と同じ制限時間で最新の過去問を解き、時間配分(マークシートの記入時間含む)を体感する。
まとめ:一刻も早くスタートを切り、技術士二次試験へ進もう!
技術士一次試験は、確かに広範な知識を求められる国家試験ですが、「絶対評価(5割で合格)」「選択解答制」「高い過去問の類似率」という3つの特徴から、正しい方向性で努力すれば、誰でも確実に合格できる試験です。
そして忘れてはならないのは、「一次試験は、最高峰の資格である技術士(二次試験)を受験するための『通過点』に過ぎない」ということです。
試験に合格したその瞬間から、あなたは「技術士」という大きな夢に向かって正式な一歩を踏み出すことができます。
効率的な学習を1日も早くスタートさせ、万全の準備で本番を迎えましょう!


